第十一章 深海探訪☆滝壺の下に見えるもの
それから。
今日はどうかな?
あたしは毎日天気をチェックするようになった。
曇り?
雨?
雪?
暴風雨?
礼拝堂で朝の日課である女神様へのお祈りをささげた後、校内で一番高い場所、礼拝堂の鐘楼に登り、滝の注ぎこむ、滝つぼを見つめる。
「うーん。見えるのはコイだけだねー。」
マリアと二人、湖の底をのぞき込むが、見えるのは蓮の花とコイたちだけ。
このコイたちの下に変な生き物たちがいるのだろうか。
いつもと変わらない光景。
その次の日、そしてまた次の日。
雨の日、風の日、嵐の日。
そしてその時は突然訪れた。
とある日の雲一つないよく晴れた朝。
課外実習用の探検服を着こみ、重たいリュックを背中にしょい、滝をのぞき込むあたしたち。
中に入っているのはちょっとした食料と、フライパン、お鍋、擦りむいたりしたとき用の小瓶に入ったエリクサーも忘れない。
空の上は晴れているけど、雲の下はいまいちな雰囲気…。
水面の下は薄雲がかかっていて、地上のちの字も見えない。
双眼鏡も持ってきたけど…。
見えるのは水面を動くアメンボだけ。
その下は雲のようなものは見えるけど…。
「コンディションはあまりよろしくない…。」
というかこの湖どうなってるの。
普通に泳いでたりしたらおっこちゃうよ。
「でも…今日いいじゃんと思って全部用意してきちゃったんだよね。」
背中にしょった重たいリュックをみるあたし。
羽に触るから。ほんとはあんまり背負いたくないんだけど。
むしろ、前に抱えて持ちたいタイプなんだけど…。
「でも、天気予報だと、曇りのち晴れって書いてあるわね。」
カミホの画面を確認して言うマリア。
「このあと、晴れるんじゃない?待ってればさ。」
「その間、釣りでもしてる?モササウルスぐらいなら、釣れるかもよ?アリアドネの釣り糸と釣り針持ってきたし。アノマロカリスの泳がせ釣りなんてどうかな?」
「あの、それ?あたしごと頂かれちゃうやつなんだけど…。あたし、食べてもおいしくないよ?」
☆☆☆
「そろそろかな。」
水面の下で徐々に切れ始める薄雲。
その先にかすかに見える緑の大地。
「本当にあった。あれが地上⁉」
かすかに緑の大地が見えるだけだけれど…。
一見、藻のようにも見えるけど…。
多分あれが地上。
ラジエルの話によれば、ずっと見えるわけではないみたいだから、急いで出発しないと…。
目的地を見失って、違うところに不時着しかねない。
地上にはドロドロの岩石や、立ち入り禁止のエリアもあるって言うし…。
戸惑っている暇はない。
「次この機会がいつ来るかはわからないし…。行っちゃうか。」
「先生にはあとでお小言言われるかもだけど…。」
リュックからラジエルにもらった、虹色の羽衣を取り出すあたしたち。
「準備はいい?マリア。」
「ええ、もちろん。」
「じゃ、せーのっでっ。いくよっ。」
『せーのっ。』
二人で水の中へと飛び込む。
息を止め、水泡を口から出しながら。
滝つぼの底を目指して進む。
そこに何があるのか。
あるいは何もないのか。
変わった生き物もたくさんいる。
やたら頭の丈夫そうな魚に、変な虫みたいな魚、黒い鉄みたいなちっちゃいカタツムリ。
「あれ?名前なんて言ったけ?」
口元からブクブク泡を出しながらマリアに問いかける。
「Chrysomallon squamiferum」
「???」
ナンテ?水中でもあるのも相まってよく聞こえない…。
「鱗を帯び、金羊毛をまとうものだって。」
「変な名前だね。」
「アリア…あそこに光が見える…。」
マリアの指し示す先。
底なのに光あふれる場所がある。
「たぶん、あそこだ。」
底に向かって手を伸ばすあたしたちなのだった。




