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異世界でマーモットの王となりました  作者: バッド
2章 人間たちは

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72マモ なにもないからこそ

「では、このテセウスに任せてもらおう」


 軍人テセウスはその外見からして威圧的だ。顔立ちは厳しく、体格も大きい。皺のないパリッとした軍服に軍帽、背筋を伸ばし、眼光鋭く相手を見るその姿は隙がない。

 

 そして後ろにてサブマシンガンなどの重火器を装備して、整列する兎たち。兎たちが迫力を失わせているが、可愛らしい兎たちが武装をして立っている時点で、不気味さと恐怖を呼び起こす。


 どこからもう見ても、独裁者を守る近衛兵な感じだ。


 人々が固唾を呑んで、テセウスを注視するなかで、テセウスはカリスマを感じさせる重い声で指示を出す。


「マーモットブレス発射!」


 手を挙げる、というかマーリンを抱えて持ち上げていた。マーリンこと俺は大きく息を吸うと、大きくお口を開けて吠える。


「ピギーーーー!」


 狙うは敵ではない。小島の一つだ。全てを分解する超音波のブレスは海を割り、泳いでいたガブを吹き飛ばし、小島へと到達すると林も土地も全てを破壊する。

 

 そう、ダンジョンの小島をだ。そんなことをするとどうなるかというと━━。


「なんか小さなブロックが降ってきたぞ!」


「これを集めてジオラマを作れば良いんだっけ?」


「ジオラマじゃないよ、本物の家とかになるんだって」


 爆発した小島から、小さなサイコロ状のブロックが降ってきて、人々は大騒ぎでブロックを受け止める。


 そう、ダンジョン内でダンジョンマスターが破壊活動をするとダンジョンクラフトとしての素材に変わるのだ。それを利用して、俺はマーモットブレスで一気に素材を作ることとした。地雷クラフトで爆弾で土地を破壊していく方法と一緒である。


 そして、ブロックで小さな家を作ったりすると完成後に巨大化し本物の家となる。そのシステムを利用した。


 テセウスは強力な一撃を放ててご機嫌だ。口元を笑みにするとロロへと向き直る。


「ロロ、小島に向かい、ブロックを全て回収し、人々に配布し給え」


「了解うさ! 全員、電車に搭乗し小島に移動。到着後、ブロックを集めていくうさよ!」


 テセウスの指示に敬礼するとロロは部下へと告げて、テテテと走り出す。


 人々の下へと。


「ねぇねぇ、ロロの下請けやらないかうさ? 拾い集めたブロックの一割をあげるうさよ」


 人の足へと頬ずりをして、早くもずるい行動をとっていた。下請けという名の日雇いを雇い、自分はのんびりと仕事が終わるのを待つつもりだ。


 兎なのに資本主義の権化のような行動で甘い汁だけを吸おうとするロロ。人々に用意した家はさすがに竪穴住居だと不満爆発、暴動確定なので次点で自分たちで家を建てて貰うこととした。


 もちろんロロの行動を見て、他の兎たちは憤る。


「そんなナイスな手があったうさね!」


「ずるいうさ。うさもやろうっと」


「電車のチケットあるよ〜。人参3本からだうさよ〜」


 自分たちも日雇いを雇おうと、人々を勧誘し始める兎たち。中にはライブチケットの転売ヤーみたいなことをする兎もいる始末だ。


 人々は兎たちが日本語を操ることに戸惑いつつも、マーモットブレスの威力を見て、この世界はもしかして日本ではないのかと考え始める。


 ヴェア男爵たちのファンタジーな服装。日本において禁忌とも言われる旧日本軍のような軍服を着た男性。なによりも兎たちは銃を持ち、マーモットがサメに齧られても傷一つついていない。


「俺様を一緒に吹き飛ばすなよ、マーリン! これはギュイーンで決闘だ!」


「俺に勝ったら、謝ってあげるよ!」


「ギュイーン」


「ギュイーン」


 そして、マーモットカフェに予約して訪問しないと見れないマーモットの希少なギュイーン。


 この全てが日本ではあり得ない光景であった。


 なので、異世界転移したかもと、なろう系読者は早速ブロックを家を見立てて組み立てる。


 皆もその様子を見て、どうなるかと期待半分、不信半分でいたが、パアッと光ると小さな豆腐型家が現れて仰天する。


「お、おい! 本当に家になったぞ!?」


「魔法だ! この世界は異世界なのか?」


「それなら良いブロックで家を建てないと! 砂の家とか嫌よ」


 一部地雷クラフトのプレイヤーがいたようで、砂のブロックは嫌よと、電車に飛び乗る。あとは言わずもがなの展開となった。


 人間あるある。店に行列ができていたら、何の店かも分からないのに並んだり、誰かが買い占めをすると、その品物が尽きると思って自分たちも同じように買い占めを始める。いわゆる群衆心理というやつだ。


「まひまままばび」


 車掌の鍵音は押し合いへし合いと電車に乗ろうとする人たちを前に震え始めて、傍観するだけとなっているが、日本人は満員電車に慣れていて、満員ラッシュの時でも、僅かな隙間に入り込む。核シェルターで子供たちで一杯であと2人しか入れませんと言われても、あと10人は軽く入るスキルを持っている。


 元総武大蛇の電車は、2万人は乗せられる仕様なのに、綺麗に10万人乗って出発するのであった。なぜか乗れなかったのは鍵音1人だけです。車掌は満員電車に耐えられなかったらしい。


「日本人って、ああいう点が神秘だよな。どうやって乗ってるんだろ?」


「私、車掌なのに。あの電車のオーナーなのに〜」


 感心する俺と、涙目になる鍵音をあとに電車は出発し、人々は素材をたくさん手に入れると、各小島で家を建てるのであった。


 あれだけ文句を言っていたが、それでもここで文句を言い続けて、素材を取れない場合、竪穴住居に住むことになりそうだと勘づいたので、竪穴住居はマーモットと兎の別荘に使われることになりました。


           ◇


 ━━次の日。


「まぁ、保って冬の間までですか。春になったら彼らはこの地から移動をするはずです」


「その前に反乱が起きるかもしれないよ? なにせ、俺らは電気水道ガスと好き放題に使えるショッピング城に住んでるからね」


 アミへと肩を竦めて答える。俺なら確実に反乱を起こすレベルだもんね。


「マ王の居城がショッピングモールなんて、どの話でも見たことありません。もう少しかっこいい城の名前にしませんか? 鍵音城とか良いと思いますよ?」


「鍵音を退治しに来る人がいるかもしれないけど、それで良いなら」


「ショッピング城って、ハイセンスで時代を先取りしてる素敵な名前です」


 鍵音とのコントをしてると、アミは鼻で笑う。


「日本人は絶対に反乱を起こしませんよ。たとえ8割税金に持っていかれても、残りの2割で暮らそうと懸命に考えて、反乱を起こそうと考えることはしないと思います」


「そんなことはないよと、否定できないな……彼らはデモはともかくとして、暴動を起こさない人種だからね」


 アミのキツイ言葉に苦笑しつつ、小島を見る。離れていてもマ王の強化された視力なら、ある程度は見れる。


 いくつもの家屋が既に建設を終えており、住んでる人もいる。細かい細工がうまい器用な人は、木のブロックや石や土を上手く使い、やけに立派な屋敷も建てていた。


 でも、あれは見掛けだけだ。電気も水道もない。水は小島に湧いている泉から流れる小川から取水しないといけないし、電気はないから夜には真っ暗だ。もちろんガスもないので、火を使うには竈を使わなくてはいけない。


 正直言うと、現代人には住むのに適してない。というか、今頃はげんなりしているに違いない。


 民忠は限りなくゼロに近いことは、推測するまでもないのだ。


 だが、こちらは強力な武器を持っているため文句は言えない。そして、抜け出そうと考えた者もいたが━━。


「将軍に報告するうさ。ダンジョンから逃げようとした人間が103名いたけど、雪に呆然として、それでも進もうとしてスノーウルフに襲われてたので、急遽助けたうさよ」


 おうちで、これからのことを考えていたら、テセウスへと兎が敬礼して嫌なことを報告してくる。


「たった1日で抜け出そうとか、状況判断のできない人たちだなぁ」


 予想はしていたけど早すぎる。居住環境は最悪レベルだけど、ご飯はあるのだ。野菜中心だけど、お魚もあるし塩もある。食べ物には困らないし、ここは常に常春の気温なので生きるには問題ない。


「普通はせめて食料を貯めてから旅に出るものですが、考えなしに行動する者もいるのでありますね」


「蘇生してもらったとは思ってないからだよ。きっと拉致されたとか考えてるんじゃないかな? マーモットブレスとかはトリックだと現実逃避して、外に行けばなんとかなると思ってる頑固な脳味噌の人たち」


 この考えはあながち間違っていないと思う。現実を直視したくない人たちはある程度いるだろう。今の生活に比べると日本の生活は富貴でも無理な天国のような暮らしだったのだ。


「放置すれば良いんじゃないかしら? せっかく蘇生させたのに無駄に死ぬ人たちは救済する必要はないわ」


「そうですね。天才たる僕もリリーの意見に同意します。今のうちに危険人物は排除した方が良いですよ。精神的に不安定な人もですね」


 4大天使の内の2人の意見である。リリスもルシフェルも正体がバレてから言動が……いつもと変わらないや。

 

 わざわざ群れから抜ける奴を世話をするマーモットはいないのである。


「でも、そんな簡単には切り捨てられないのがマ王のマ王たるところなんだよ。仕方ない、ダンジョンと外の境目に壁を設置しよう。草原や海タイプはどこからも出入り可能だからね」


 ショッピング城は入り口は一つしかないが、草原や海タイプはその仕様が違い、どこからでも出入りできる。それがネックとなって、脱走者は増えるだろう。


「早いうちに、君が蘇生させたと告げるべきだ。そして、彼らに日本と同様の暮らしは不可能なこと、そして、外には敵が多いため、マ王軍に参加する必要があることもな」


「生粋の日本人で、突然軍に入れと言われて頷く人いるかなぁ。それに役に立つかなぁ?」


「生産的な行動はとるように導かないといけないんじゃないかな? たとえ戦力にならなくても、銃後を守るだけでも国は助かりますよ?」


 テセウスと鍵音の提案に頭を抱えたくなるよ。戦力は無理だ。最低限、最初の千人か、次の一万人なら俺の言うことを聞いてくれるしステータスも高いので、あいつらを使うつもりだ。


 ということは、10万人は生産的な生活を送ってもらうことになるんだけど……。


 嫌な予感しかしないなぁ。

 

モブな主人公。マンガボックスにて連載してます!

コンハザがシーモアにて発売中!

3月10日ルックスYの2巻発売してまーす!

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― 新着の感想 ―
 どうにもお荷物集団になりそうな後出し10万の人々(・Д・)本来「命令を聞く」だけの単純な手駒ユニットなアミが彼らよりずーっと使いやすいので便利に使ってたらそれにウンザリしたのかだんだんマ王さまへの言…
「マーモットブレスの威力を見て、この世界はもしかして日本ではないかとの考え始める。」いや、マーモットがブレス吐いてる段階で気づけよ、と思ったら、「マーモットブレスとかはトリックだと現実逃避して、外に行…
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