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異世界でマーモットの王となりました  作者: バッド
2章 人間たちは

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71マモ マーモット王国

 結果から言うとだ。


 寝ました。


 すよすよ寝ている間に、アミが頑張りました。


 なにせ10万人の人間である。もうマ族になったから大丈夫かと思っていたら━━。


『新米マ族:スキルは無く、ステータスもほとんど人間と変わらない。思考も人間のものである』


 下級マ族よりも、もっと下がいることが理解できたのだ! 適当すぎるだろ、ちくせう。


 なので、人の良いマーモットには手に負えないのでアミに任せたのである。


「各小島は直径十キロ程度。ラグーンとして、数多くの小島があり、一つにつき一万人は住めるのであります。なので、10万人は余裕なのですが土地だけで、資材は全くありません。足りませんではなく、ありません。枯渇しているという表現が正しいかと思います」


「だろうね。倉庫で手に入れた物資もこれでパーか。おかしいな、稼いでも稼いでも、次のイベントで空になるよ?」


 アミにしてはちょっと言葉がキツイ気がするのは俺が全てを任せたからじゃないよね? 俺、マーモット、管理運営は無理だよ。トゲだらけの言葉をマーモットは齧っちゃうから意味はないよ?


「住民は電車ではこはこはこ」


「大変、鍵音ちゃんが酸欠になってるよ。ここって高地だっけ?」


 アミを前にしてるから、自慢することもできないコミュ障を心配するラン。


「電車で運ぼうと思ったのですが海辺は危険で、家もないため、拒否する人たちが大勢いるのであります」


 前言撤回、全然解決してなかった。人間の悪いところが出てしまっていたらしい。


「あんな小島に俺たちを隔離してどうするつもりだ? 俺たちは危険人物扱いされる謂れはない! 人としての扱いを希望する!」


「そうだ、そうだ。ここは一体全体どこなんだ? 我々を拉致したのか? 今の日本は黙ってはいないぞ!」


「あのショッピングモールには入れないの? 私たちは弱ってるのよ。温かい食べ物と、綺麗な服を貰えないかしら」


 善人ラインスレスレの人たちと謎のメイドさんが言っていた意味がわかった。今回の人々は悪い意味で結託して騒いでいる。数も多く、統制をとる人もいないため、混乱の限りを尽くしていた。


「失敗だったか。召喚はもう少し待てば良かったよ」


 とはいえ、一方的に責めることも難しい。諸悪の根源はマ王が考えなしに皆を召喚したことであり、その根底はマ王の言う通りに動くだろうとの目論見もあったからだ。しかし、その前提が崩れてしまった。新しい人たちは自分たちがマ族になった事実にすら気づいていない。


「いやはや、新しく救出された方々はなんというか、押しが強いですな」


 最近の厳しすぎるコンプライアンスで、部下を下手に怒れない中間管理職のようにヴェア男爵は汗を拭きながら、怒れる群衆を眺めている。日本語が分からなくても、この状況だから推測しているのだろう。無理もない、アホでもわかる光景だからね。

 

 人々はヴェア男爵の古めかしい服装を見て不思議そうだ。どうも異世界にて蘇生したとの意識はゼロらしい。


 ということは、彼らは平和な日本人として、ここにいきなり連れられてきたとの認識なのだ。これはどう考えてもよくない。


「海は危険なんだろ? サメが泳いでるぞ、サメが! 見ろ、あれを!」


「なんか泳ぐの楽しくなってきたな。特に俺が動かないで進むのが楽しいぞ」

 

 抗議する男性の指差す先は、サメの口に座りながら、ザッパンザッパンと波を蹴散らし泳ぐマーモットの姿があった。サメはどうにかして潜ろうとしているようだが、デフォルトで自動抵抗成功の値を出すガブを引き込むことができない模様。


 なぜか指差した男性が気まずそうにするけど、あのマーモットは特殊だから気にしないで?


「その、だな、他にも大きな魚がいてだな」


「きゃ~、いれぐいってゆーんだよね。見てみて、ニニーはいれぐいでしゅ。こんなにたくさんのお魚さんを釣ったの」


 釣ったというか、群がってきたという表現が正しい気がするのは幼女の姿からである。今日はお魚さんの料理で賑わうのは確定だ。鮪に続いて、鰯や秋刀魚、鰤に鰹、鱸に鯛と旬に関係なく様々な魚が噛み付いていた。このエリアのモンスターは殺意高すぎじゃないかな? まぁ、幼女に魚如きの攻撃が通じるはずないんだけどさ。


 小さなお手々で噛み付かれる寸前でひれを掴むとポイポイ浜辺に投げていき、お魚さんは大漁だ。他の人は真似しないように。殺意高めなだけで牙とか生えてないので、致命傷は受けないようだけだど、噛まれたら痛いからね。


 いや、幼女を基準にしたらダメかも。結構危険なモンスターの可能性があるな。そうなると小島に住むように勧めるのはたしかに少し罪悪感がわく。


「ゴクリ……なんだ見かけだけで、ただの魚なのか? それならば、釣りバカと呼ばれた俺ならばァァァァッ!」


 幼女によって積み重なる魚モンスターたちを見て、抗議していた男性が拍子抜けだったかと、草原に転がる鮪に手を伸ばし齧られていた。


「助けてくれ、助けてください! 死ぬ、食われて死ぬっ、トラウマが、ゾンビに食われたトラウマを思い出すぞ〜」


 鮪に腕を食いつかれて、涙を流し、鼻水を垂らし、泣き叫ぶ男性。その姿からは先ほどの圧力は完全に消えていた。


「ニニーが助けましゅね! え~い!」


 とてちたとニニーが近寄ると鮪の尻尾を掴んで、軽く放り投げる。もちろん鮪はそれくらいで離すわけがなく男性も一緒に放り投げられて、草原をボールのように跳ねながら転がっていった。

 

「おいおい、なんだあの幼女は? 力強すぎじゃないか?」


「じょ、状況を確認した方が良いかも……」


「もしかして、この人たちはあれくらいの怪力を持ってるのか? お、おとなしくするか?」


 ようやく人々は黙り込んで、幼女の怪力から大人たちの力はどれくらいかと推測して口を噤む。きっと自分たちを片手で軽く殺せる力を持っていると思ったのである。


「すいません……発言をよろしいでしょうか? あの人たちはここの魚に襲われても大丈夫でしょうが、わ、我々は無理なのです。大人ならなんとか逃げられるかもしれませんが、子供は死にます。ゾンビに襲われていたはずなのに、助かったのですから、ここで死んでしまうわけにはいきません」


 小さな子供を抱えた女性が、子供を見ながら悲しそうに手を挙げる。そのそばには優しく背中を撫でる旦那さん。子供と共に両親も召喚されたということは、彼らは当時……。うん、考えない方が良いかも。


 一瞬、悲惨な光景が思い浮かび、ピピピと鳴く。たしかに小島にこのまま住むのは危険かも。禁止されても、それをしちゃうのが子供だからだ。


「ウ~ン、リリー、なんとかならない?」


「人を食べた魚を食べるのは嫌だものね。でも私にもどうしようもないわ。事故はいつでも起こるもの、気をつけてもらうしかないわね」


 リリーは簡易隅っこを作りながら肩を竦める。その冷たい反応は悪魔みたいだ。少なくても天使には見えないのは気のせいかな。マーモットという時点で天使か。


「なぁ、ルー、なにか方法はないか?」


 この人たちは悲惨な死に方をした人たちだ。それを無責任に復活させた俺には責任がある。


「僕はもう『ルシフェルの野望』システムにしてしまいましたからね。なにもできることはありませんよ。ガブも同様でしょう。ですが、思い出してください、これまでまったく経験値を使っていない人が一人いませんか?」


「……そういや、一人いたね、ね、ミカ?」


 唯一経験値を消費していない仲間をじ~っと見つめる。ミカは欠伸をして寝そべっていたが、俺たちの視線に気づき、お鼻をスンスンさせる。


「ミカのお手伝いが必要なのぉ? このモンスターをどうにかする必要かぁ。んーとね、ミカが『奇跡』を使えば良いのぉ?」


「『奇跡』!? かっこよさそうな名前だね! うん、その『奇跡』を使ってみて!」


 さすがは元大天使。ワクワクしちゃうスキルをお持ちの模様。他の3人と違い、何もしてこなかったからこそ期待できるな。必中ひらめき魂がかかるとかじゃないよね?


「わかったよぉ。それじゃ、経験値を消費していくよぉ」


 手を翳すと、ミカはのんびりとした口調で告げる。


「いくよぉ、『奇跡』」


 ミカが呟くと光り輝き……光り輝くと思ったけどなにも起きず、ミカはそのままてくてくとリリーのそばに行くと、リリーのステータスボードをポチポチ押す。


『アクティブ→ノンアクティブ』


『15歳以下の子供にはアクティブ時、逃げること』


 モンスターの設定を終えると、ミカはふぅと息を吐く。


「奇跡しゅーりょー」


「モンスターの設定を変えただけじゃん! こんな設定をできるならリリー、やっておいてよ!」


「私も初めて知ったわ。こんな設定あったのね」


 ピギーと怒る俺に、しれっとした顔のリリー。説明書を読まない人の典型的なタイプだ。ゲームあるある、細かい仕様を知らなくて、ゲームの難易度を上げるパターンである。武器を強化できて魔法付与もできるのに、仕様を知らないでデフォルトの装備でゲームを遊ぶようなものだ。


「襲われなくなったのは良いことですけど、それじゃ解決にはなっていませんよ。皆さんの家も用意しないと」


「え~と、うん、そ~だねぇ、それもミカに任せて。ミカの能力は経験値を消費して、奇跡を起こすことだからねぇ」


『奇跡』


 鍵音のツッコミに、少し躊躇ったミカだけど、また手を上げるとスキルを使用する。ペカリと豆電球のような光が灯る。そして、細い糸のような光条が空へと駆けていき、小島群に向かうのだった。


「ふぅ、経験値を100も使ってお家を作ったよぉ。10万人分」


「おぉ、それはチートだけど……100で10万人分の家を建てられるの?」


 少し嫌な予感にミカを見ると、無邪気にコクリと頷く。


「うん、藁のお家だよぉ。地面は剥き出しだから、そこは好みで藁を敷くのぉ」


 なるほど、なるほど? 


 縄文時代の竪穴住居かな?


 ミカを見つめるけど、寝そべってウトウトし始めている。悪意はなく、本当にその家で良いと思ってるのだ。俺もマーモットだから、問題ないとは思うけど……。


「テテたちを呼んで、皆を強制移住させよっか」


 独裁者マーリンになろうかな。


 それとミカって実はドケチ、いや倹約家である可能性が出てきたよ。

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― 新着の感想 ―
藁のおうち。もうこーなったら、新米マ族はクーリングオフして、ブーフーウーを召喚すれば一匹分は解決するんじゃないですかね。ブヒー。
10万人の世話、めんどくせ~ よくマーリンはキャベツ齧って昼寝しないですね。って、すでに一回アミに丸投げして寝た後でした。 しかし、一応彼らはマ族だからマ王としてほっとくわけにもいかないので、早いとこ…
 10万人の一般的な令和日本人の群れ(・Д・)たしかに権利意識や自分は守られて当然な感覚が強いから持て余し気味にもなるよねぇ、何より文明に頼りすぎてサバイバル技術もからっきしだろうしメキシコシティやヨ…
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