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異世界でマーモットの王となりました  作者: バッド
2章 人間たちは

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69マモ 記憶

 かなり広いダンジョンとなったらしい。ダンジョンというか海だ。


「ねぇ、この場合、俺たちの拠点は小さな小島にならない? 半径100キロは広すぎないかな! もしかしてS・S・Sランクのダンジョンになった?」


 こんなスキルってある? チートすぎて、俺のスキルの存在が霞むよ?


 草原から浜辺へと続き、海面に近づいて、そっと覗くとかなり透明度の高いブルーオーシャンというやつであった。波が足元をさらっていき、少し冷たい。


「あれ? これ草原と浜辺で吹く風は違いませんか? ほら、草原側に来ると潮風ではなく、草の匂いのするそよ風です」


「ダンジョンだから、境界毎に環境が定められてるのよ。見えない壁が存在するようなものなの。潮風は毛皮も痛むし、ちょうど良いわ」


 結構細かい所に気づく鍵音だが、たしかに不思議なものだ。でもダンジョンはそーゆー物なのだろう。灼熱の階層があれば極寒の階層もあるように、ダンジョンというものは普通の自然環境ではなく、作られた環境だからだ。


「なぁなぁ、これが海ってやつだよな。不思議なんだけど、俺様たちはどうやって泳げば良いんだ? これ、俺様は泳いでる?」


 好奇心が猫並みのガブが波に攫われて、さらにはサメに咥えられて、上手に泳いで沖に移動しながら気楽に手を振っていた。これもマーモット流の泳ぎの一種でいいかな? まぁ、ガブは空を飛べるからあっさりと帰ってくるだろう。


「100キロ圏なら絶対に電車は必要ですよ! 本屋鍵音鉄道会社を作りますね。私は成り上がりの社長として、頑張ります!」


 どうあっても電車を設置したい鍵音の強いアピールです。ガブがバイクに乗っているかのように沖へと離れていくのに誰も心配していない。


「でもラグーンだよ? こんな小島ばかりなのに、どこに線路を敷くわけ?」


「私の電車は地面を走ってないんです。総武大蛇と戦っている時に、大蛇は地面から数センチ浮いて移動しているのに気づきませんでしたか?」


「あ~、そーゆーやつか。それならいけるね。後は海辺に近づく時は気をつけるように周知すればいいだけかな。移民する人たちも電車なら移動も危険ではないもんね」


 海辺は危険だ。ガブだから笑い話になってるけど、他の人ならリアルジョーズである。


「みてみて! ニニーはでっかいお魚しゃん捕まえまちた。ほら、ピチピチしてりゅの! このお魚しゃん、自分からニニーに近づいてきたの。きっとニニーのことをだいしゅきだからだと思うの」


 ぴったんぴったん暴れるサメ型モンスターの尻尾を掴んで、幼女はキャッキャと喜んでいた。うん、幼女も大丈夫だろうけど、幼女は特殊な訓練をしているから例外ということにしてね?


「それじゃまずは海のダンジョンのマップ作り。あと、電車の移動経路。それと住民の召喚かな」


 住民の召喚……。何万人召喚されるかは正直分からない。本来ならばもっと準備ができてから召喚するべきだろう。しかし、俺の心が叫ぶのだ。早く皆を救済しろと。


 それこそが飯屋の店長がやることだと。背中の毛皮がゾワゾワして、尻尾がフリフリと揺れるのだ。


「召喚するのよ。人々を救済してマーモットたちがのんびりとできる世界にするの」


「そうだよぉ。一応善人の人たちを助けて、マーモットはお昼寝するのぉ」


 心に囁く善なる声。耳にふ~っと息を吹きかけるリリーとミカが囁いているような気もするけど、善なる心を持つ俺の囁き声だ。


「なので、『飯屋』起動!」


 俺が手を掲げると、カッと閃光が奔る。天へと光は昇っていき、幾条もの光線となり空を飛んでいき、視界内に入り切らない巨大な魔法陣を描いていった。


「う、嫌な予感。少し、ちょっと、僅かに魔法陣が大きくない?」


 ちょっとどころではないし、レベル3と同じく3回目が同じような意味を持つと思うと、ヤバいかも。


「やっぱりキャンセル! キャンセル料払ってもいいから! ちょっとシステムさん、聞いてますか!」


 慌ててぶんぶん手を振って、ちょっときつめの目つきで天へとお願いをする。悪マの囁きを聞くんじゃなかった。


 もちろん可愛いマーモットの願いを天は聞き入れてくれて、キャンセルとなるのであった。


 マーリンの脳内の話だ。


 現実ではしっかりと飯屋は発動し、お腹のすかせた人々が召喚されたのである。


 その人数は10万人。草原を埋め尽くして、現れた。10万人である。その時は何人召喚されたのか分からなかった。でも、視界内を埋め尽くした人数は明らかに数万人レベルではないと、マーリンは分かったのである。


 そして、なによりも問題が発生していた。


「ぎゃあ〜、噛みつくな、噛みつくなぁ〜!」


「助けて、誰か助けて!」


「ママァ〜、ママを虐めないで〜」


「わたわたわた」


 なぜか召喚された人たちは悲鳴を上げて、のた打ち回っていたのである。ある者は首を押さえて絶叫し、またある者は、恐怖の形相で四肢を振り回し、子供は悲しいことがあったのか泣いている。


 皆、等しく血だらけの服を着て。


「へ? なにこれ? なんでこんなことになってるの???」


 阿鼻叫喚という光景が相応しい地獄の世界にいるようだった。誰も彼も必死になって悲鳴を上げて暴れている。まるでなにかに襲われているかのようだ。


「わたわたわた」


 予想外の光景に呆然とする俺と、わたわたわた星人鍵音。でも、こんな状況じゃ、慌てる鍵音の気持ちもわかる。


 分かるけど、そろそろこの状況を抑えないといけない。


 スゥと息を吸うと、胸を張って天へと頭を上げると口を大きく開く。


「ピギーーーーーー!」


 周囲の悲鳴をかき消す大きさの警告音を轟かせて、人々はその鳴き声に顔を顰めて叫ぶのをやめて、ようやく自身の状況に気づいたのか、不思議そうに辺りを見渡すのであった。


「さて、アミを呼んできてくれないかな? 俺のかわりに誰かに状況を聞かないとね」


 血塗れの服を着る人々。その服装は現代の地球の服装であり、予想するに危険な状況から召喚されたようにしか見えない。異世界転移あるあるの死んだから転移したというパターンだとは思うけど━━。


「地震で死んだ理由じゃないよね? あの地震は転移の結果だから、死ぬとしたらこの異世界でだ。これってどうゆうこと?」


 アミをわたわたわた星人が呼んでくるのを待ちながら、俺はコテンと首を傾げちゃうのだった。


            ◇


『ゾンビに襲われてた? この世界で?』


『いえ、そうではないようであります。地球でゾンビたちに襲われていたと皆は言っております。推測するに、『襲われている』ではなく『襲われて死んだ』という可能性が高いでありますよ』


『マジか。地球で? 地球でゾンビ? 荒唐無稽の話だけど、もしかして彼らは記憶を持ってるの?』


『それが……その通りのようです。聞く限り、皆は記憶を完全に維持してます』


 ようやく静かになって、アミが聞き取り調査を行った結果である。


「え~とですね。俺たち、秋葉原にいたんすけど、倒れた人を助けに来た救急隊員が噛みつかれてたんです。その時は、ドッキリでも撮影してるのかと思ってたんですけど、首を噛み千切られる様子が本物にしか見えなくて逃げたんですよ」


 聞き取りをしていた若い男性が、アミの美貌に見惚れながら、ちょっと得意げに話す。まるで武勇伝のように話すのは、自分が死にかけただからだろう。活躍しなくても死にそうな状況から逃げるだけでも一般人にとっては武勇伝となるものだ。


「前を歩くおっさんも映画かよと呟いて、本当はゾンビなのではと考えたんでしょうね、足早に離れてたんすけど、俺も同じように考えて離れたんすよ。でも、それって映画だと早く走って逃げろと観客が馬鹿にする行動だったんす。細道からゾンビが現れておっさんを襲って、おっさんはヘロヘロなパンチで対抗したんすけど、あっさりと噛みつかれて死にました。そんで俺も同様に他のゾンビが走ってきて、襲われて……死んだはずだったんですけどね?」

 

 ほーん、ゾンビに襲われてたと。表情を見るに嘘では無さそうだ。何よりも着ている上着が血でびっしょりで、真実味を増していた。


「ねぇねぇ、おねーさん、ここはどこか教えてくれない? 連絡先も教えてくれないかな? あ、俺はこれでも早稲田大学の学生でさ、一人暮らしなんだけどタワマンの最上階に住んでるんだ。見下ろしサイコーなんだけど一度見に来ない?」


 アミの美貌に誘われてナンパする若者だが、もう聞きたいことはありませんと、使い捨てるティッシュペーパーのように無視をするのを横目におれは考える。予想するに、ゾンビに襲われて死んだ直後に転移したらしい。


「ゾンビ? あ、頭が、頭が痛いよ……」


 アミについてきたランが頭を抱えて苦しみ始めて、同じくついてきた遠藤も見野も同様に蹲ってしまう。


 何が起こったのかと、オロオロと焦って、俺はとりあえず頬ずりをしてあげる。マーモットの頬ずりは全てを癒す力があると思うんだ。


「ゾンビ……。お、思い出したよ! あたしも死んだんだった! ねぇねぇ、思い出した! あたしもゾンビに襲われてたよ! そんで多分死んでたんだ……」


 顔を暗くして落ち込むラン。それに遠藤も暗い顔で同意する。


「あぁ、僕も思い出したよ。地震に巻き込まれたんじゃない。僕は休日の学校にいたんだ。それで、ゾンビたちが入り込んできて、殺された……」


「偽りの記憶だったわけかよ。気持ちわりー、誰だ、こんなふざけた記憶に変えたやつは! 転移した時に学生が全然いなかった理由がわかったぜ。あの時、学校にいた奴らが死んでこの世界に召喚されたんじゃねぇか? だからほとんどの学生は転移していなかったんだよ。そりゃそうだよな、俺たちは死んで、転移していない奴らは生き残ってたんだから。はは、俺たち馬鹿みたいじゃね? 転移していない奴らは大丈夫かと心配してたけど、本当は正反対で俺たちが死んだだけだったんだからな」


 苛立ちを見せながら吐くように言う遠藤。


 ランも遠藤も見野も記憶を取り戻し始めていた。ということは鍵音も?


「えへへ、わたわたわた、私は最初から覚えてました。でもでも空気を読んで黙ってたんです」


 口籠りながら告白する鍵音だけど、早くそれは皆に教えたほうが良かったんじゃないかな?

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― 新着の感想 ―
久しぶりに学生組が登場して気付いたけど、鍵音が完全にマーモット組に入ってても違和感無かったw
クロスオーバー再び? 幼女がサメに無敵だということがわかって良かったです。世のサメ映画は登場人物全員幼女ならほのぼの系になっていたのか。
 コンハザ世界の騒動に巻き込まれた人達の救済だったーーー!!? のかな?
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