66マモ 超電動砲
ガブに掴まり空へと再び舞い上がる。目の前ではナイアガラ瀑布のように崩れ落ちてゆく高層ビル。砂煙が視界を埋めて、瓦礫が轟音と共に落ちてゆく。
瓦礫に潰されても気にもしない総武大蛇は崩れ落ちる高層ビルの中を通り過ぎていくが、俺たちはそうはいかないので、崩壊する瓦礫の横をすれすれで飛んでいく。
「ウォォォォ、あぶねー。あんなのに巻き込まれたら、一巻の終わりだぜ」
「ぺっちゃんこになって、そのままロロたちの墓場になるうさね」
「え!?」
「え!?」
「なにか変なこと言ったうさ?」
「いや、そうだな、俺様もさすがに耐えられないかもしれないな」
「ウンウン、マーモットのハンバーグになっちゃうよね」
ガブの言葉にロロがブルリと震えるけど、俺たちは顔を見合わせて、何を言ってるんだろうと考えたが、たしかに普通ならその通りだとコクコクと頷き返すのであった。まさか、瓦礫に押し潰されても抜け出せるよとは言いにくいしね!
空を飛び、総武大蛇を追いかける俺たち。崩壊する高層ビルを通り過ぎたら、総武大蛇に飛び移ろうと考えていたが、敵もさるもの、高層ビルを通過したら今度は他のビルに突撃して、俺たちが飛び乗れないようにしていた。
しかも━━。
「あの車掌ゾンビ追いかけてくるうさよ!?」
「へ? ほんとだ、瓦礫を足場に追いかけてくるぞ! 見た目と違って、なんつー体捌きだよ!」
崩れ落ちる高層ビルの瓦礫を器用に踏み台にして宙を飛びながらスーパーゾンビたちは追いかけてきていた。
「ペットノゴジョウシャハベットキップヲオカイアゲクダサイィィィ」
追いかけてくるスーパーゾンビは、宙を飛びながら手のひらを俺たちに向けてくると、魔力を収束させてくる。
なにかとっても嫌な予感がするなと、俺が見ていると青く光る矢を生み出す。
『マジックミサイル』
驚くことにスーパーゾンビは魔法を使うらしい。魔法の矢が俺たちへと飛んでくる。
「うひょー! 旋回するぞ!」
「ひょえ~! 怖いうさ!」
ガフが慌てて回避のために旋回する。外れたマジックミサイルは瓦礫へと落ちると、ミサイルの名前の通りに爆発し、爆風が空を飛ぶ俺たちを衝撃波で揺らす。
「魔法の矢って、初級魔法でしょぼい威力じゃないの? ヤバい、ガブ回避してーっ!」
「言われなくても!」
ミサイルの威力に顔をひきつらせて叫び、ガブも慌てて旋回して狙われない様に飛ぶ。
他のスーパーゾンビたちもマジックミサイルを撃ち始めて、空を飛ぶ俺たちは一気にピンチである。爆発音が連続で響き、そのたびに爆風が俺たちを襲う。
「あぶねー、うさっ! うきゃっー、当たる当たる!」
「耳元で怒鳴るなよ。たしかにこれだとジリ貧だな。どうする、マーリン?」
ロロが毛を逆立てて絶叫し、ガブは顔を顰めてマジックミサイルを躱していくが、時間の問題で撃墜される可能性が大きい。
「仕事熱心なゾンビたちだなぁ。仕方ない、あのスーパーゾンビたちは俺が惹きつけておくから、ガブたちは隙を狙って総武大蛇に飛び乗ってくれ!」
ロロにガブの足を掴ませると、俺はガブを掴んでいた手を離すと空中へと飛ぶ。
「オーケーだ。なら、1体は倒していくから、あとは任せたぞ!」
ガブは腰を深く落として、拳を溜めると切り札を使う。
『サイキックブロー』
サイキックにて黄金の毛皮となるガブが拳を突き出す。空間が震えて蜃気楼のように歪むと、突風のように吹き荒れる一撃がスーパーゾンビに命中する。空間を崩壊させて、あれだけ硬かったスーパーゾンビは砂のように崩れると、吹き荒れる風に吹かれて消えるのであった。
「あとは飛ぶくらいしかできないから任せたぞ!」
「オーケー。二匹ならなんとかなる。こっちも本気でいくよ! ピギー! マーモットモード!」
真希の姿はおしまいだ。そろそろ本来のマーモットとなって戦う時。
「スーパーゾンビにできる程度の技は俺にもあるのさ」
瓦礫へとマーモットの姿に戻った俺はちょこんと乗る。スーパーゾンビみたいに、瓦礫を踏み台に、空中にて戦闘開始!
「マーモットォォォ。ペットノゴジョウシャハオヤメクダサイィィィ」
「特別料金を支払っても許してくれない?」
瓦礫を踏み砕き、スーパーゾンビが岩のような拳を繰り出すのに合わせて半身となって躱すと同時に胴体へ爪の一撃。ガリリと岩を削るような手応えが返ってくるが、想定通りなので体を回転させて、もう一撃。
さすがにスーパーゾンビは耐えられないのか後ろに下がる。空中でそんなことをすればどうなるかというと簡単な話で重力に引かれて落ちようとする。
だが、死への恐れを知らず、心は死んで焦ることはないスーパーゾンビは冷静に他の瓦礫に蹴りをいれると反動で戻ってくるので、その頭に突撃して迎撃。くるりと回転して、頭にもう一撃蹴りを入れる。
ちっこいマーモットはどんな人間よりも器用で素早く、敵の攻撃は当たりづらく、懐にさえ入れば、こっちの攻撃は当て放題だ。スーパーゾンビの繰り出す拳を躱し、その腕に引っ付くと、テテテと走り、もう一撃、また一撃、さらに一撃。
スーパーゾンビの体の上を走りながらの連続攻撃。人間では絶対に不可能な戦法だ。
「テイコウスルナァ」
不利とみた2体目のスーパーゾンビが引き離そうと、腕を振り捕まえようとするが、素早く1体目のスーパーゾンビの背中に隠れて、反対にその攻撃は一体目の頭をぶん殴ってしまう。
「ヌゥ」
「オォ」
スーパーゾンビたちは、瓦礫を踏み空中に跳びながら、攻撃をしてくる。なんとかして引き剥がそうと頑張っていたが、自分の体を叩くだけで、マーリンはちょろちょろ逃げちゃう。
『プレイヤー、なんか身体を這い回るネズミのようで気持ち悪いです。もう少しカトゥーン的な戦闘くらいにおさめませんか? マモとジェリー的なコミカルな戦いで』
なんか味方からクレームが入った。たしかに本来の戦闘シーンは、2体のスーパーゾンビと瓦礫が落ち、空中の脆い足場を利用して、激しく打ち合い、戦闘を繰り広げるかっこいいシーンなのだろう。
でもマーモットは体格的に不可能なんだよ。それにトムとマェリーのアニメって、コミカルに書いてるけど、ハンマーでぺっちゃんこにしたり、火事で丸焼きにしたりと意外と酷いぞ。
それにセコい戦闘に見えるけど……。
『こいつ、マジに硬い! ビクともしないぞ、このゾンビ。あり得なくない? これでも俺はマ王なんだけど!?』
さっきからペチペチ爪を突き立てているのに、皮一枚しか傷つけることができないのだ。今までたくさんの敵と戦ってきたけど、こいつは強すぎる。しかもボスではなくて、敵の中ボス的な存在なのだ。
『それなんですけど原因はわかりました。こいつらは総武大蛇と直接繋がっていてダイレクトに魔力を送られてるんです。例えて言うと、発電所の電力をたった1台の車のエンジンにぶち込んでいるようなものですね』
『敵が切り札としてとっておいただけの性能はあるってことか』
高層ビルを小石かなにかの障害物として、その巨体で簡単に破壊していく化け物だ。送られてくる膨大な魔力はスーパーゾンビを無敵に変えるだろう。
「マァモット!」
「くっ! 捕まったか!」
スーパーゾンビが俺を遂に捕まえる。グローブのような手で俺の首元を掴み、引き剥がそうとする。むにーんと毛皮を引っ張っられて壮絶な争いとなる。
「むぉぉぉ、ぐわっ!」
おヒゲまで引っ張ってくるので、痛くて引き剥がされちゃう。高空にて引き剥がされた俺を無視して、スーパーゾンビたちは総武大蛇に顔を向ける。その視線の先にはちょうどガブたちが屋根に降り立つ姿があった。
俺が陽動と気づき追いかけようと腰を屈めて跳躍しようとするが、そうはいかない。
「いくら硬くても、空中に来たお前たちのミスだよ。本気で行くぜ、『反射走法』!」
テレキネシスにて小さな瓦礫を空中に押し留めると、俺は全力で跳躍する。ピンボールのように高速で飛び回ると、跳躍するスーパーゾンビを追いかけて、攻撃を開始する。
「しっ!」
高速で接近しての爪の一撃。皮膚を削ることしかできないが、その衝撃は次の瓦礫を目指して跳躍したスーパーゾンビの体勢を崩す。
「ムンッ!」
体勢を崩したスーパーゾンビの裏拳が俺を狙うが、その時には離脱しており、他の瓦礫に移動しており、再度跳ねると2人目のスーパーゾンビの背中を蹴る。
「ベツリョウキンヲーッ!」
大柄な体躯であるのに、器用に体を回転させてスーパーゾンビはそばの瓦礫を蹴ると再び跳躍する。そのスーパーゾンビの顔へと蹴りを入れて踏み台にすると、前方にいるスーパーゾンビの足を掴んで、ふんぬと力を込めて投げる。
どうにかしてガブたちへと近づこうとするスーパーゾンビたちへ、確実に体勢を崩すために攻撃を入れていく。素早さでは俺の方が上で、スーパーゾンビたちは攻撃についてはこれていない。
俺が高速での攻撃で妨害を続けて、スーパーゾンビはようやく俺を倒さないとガブたちへと近づけないと判断したのだろう。拳を突き出し、蹴りを放ち、俺を倒そうとしてくるが、拳はスウェーで回避して、蹴りは両手で蹴り足を掴み、鉄棒を持つように前転で躱す。
どちらも決め手のない戦闘。だが時間だけはジリジリと過ぎていき━━。
「やったうさー!」
最後の車両が切り離されて横転していく。その様子を見て怒りに燃える総武大蛇は叫ぶが、もう遅かった。
総武大蛇の前方に移動を終えていたマモベースの超電導砲が太陽のように眩しく光ると、次の瞬間、全てを光で埋め尽くす光線が放たれた。
総武大蛇はその光線にあっさりと呑み込まれると、悲鳴を上げる間もなく、一瞬で溶けて消えていく。
そして総武大蛇という送電線を喪ったスーパーゾンビたちは力を無くしてよろめき落下し始める。
「おし! これで終わりだぁっ!」
『マーモットブレス』
俺は大きく口を開けると、トドメの一撃を放つ。必殺のブレスは落下していくスーパーゾンビたちを消滅させて、最後の敵も駆逐するのであった。
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