63マモ 総武大蛇
「全員急いでマモベースに入れ! マモベース緊急発進だ、アミ!」
「了解であります、マモベース緊急発進!」
「ここからは私が指揮を執るから安心して座っていたまえ、マーリン。戦艦を指揮するのは、テテの夢の一つだったのだうさ」
提督席に座る真希の頬をむにむにと押し退けて、テテはおっさんの渋い表情を決め顔にして、手を振り上げる。戦艦を指揮したくて仕方ないテセウスだ。
「全員回収する前に発進だ。兎たちの走る速度なら、発進中にハッチに飛び込める! 次いで、超電動砲を発射せよ!」
チラリと俺を見てくるアミにテテの指示を聞くようにコクリと頷く。テテの指揮能力を確認するのに良い状況だし、俺は外で戦闘をする必要があるかもしれないからね。
「マモベース緊急発進。各員は走行中のマモベースに飛び込んで乗車するように!」
「鬼うさ! むぉぉぉぉ!」
ロロたちは自分たちが乗っていないのに発進しちゃうマモベースに驚き、ハッチに必死の様子で飛び込んで来ていた。たしかに兎たちは『脱兎』の能力のおかげか、加速し始めるマモベースに余裕で乗り込んで来ていた。ルーはもちろんのことガブも乗って、遅い兎たちの手をつかんで引き入れている。
「どうやら問題はないようだ。ならばターゲットロック。目標総武大蛇、超電動砲スタンバイ!」
「総武大蛇?」
「あの大蛇の様子をよく見給え、マーリン」
変な名前だねとコテンと小首を傾げる俺に、テセウスはモニターを見るように言う。モニターに映る巨大な大蛇は、8車線を埋め尽くす横幅の大きさだ。縦長の爬虫類の瞳は金色に爛々と光り、開けている口の中から伸びる真っ赤な舌と、鋭い牙が目立つが、よくよく見ると表皮が変だ。
黄色い表皮なのだが、蛇の模様ではなく、金属製のようで、しかもその胴体は四角く、窓もあるぞ?
ていうか、下部に車輪が並んでる!
「あれ電車じゃん! もしかして総武線の電車?」
大蛇の頭はあるけど胴体は電車だよ!
「そうだ。あの大蛇はここ周辺を徘徊し、生物なら人間も魔物も関係なく呑み込む悪食な化け物なのだよ。なので大蛇を倒すべく私は方法を探していたのだ。そして私の戦艦を見つけた訳だな」
「しれっと言うけど、そういう重要な情報は早く教えてほしかったよ。あんなのに前情報なく出会ったら、マーモットなんて一口でペロリだからね? それどころか小さすぎて食い足りないと文句まで言われるパターンだから」
食べておきながら文句を言う奴は嫌いだよと口を尖らせる俺に、テテは肩を竦める。
「仕方あるまい。それにここで撃退できるチャンスだ。超電動砲発射せよ!」
「アイアイ、超電動砲ロック。砲撃します!」
走行するマモベースの主砲である超電動砲が稼働して、後方から這って迫りくる総武大蛇をロックすると、その砲口に青い光が放電しながら収束されていく。
俺たちが固唾をのんで、その様子を見ている中で超電動砲は発射され、おっさんはヒャッホーと踊り狂う。
収束された超電動エネルギーが光線となって発射されると道路を溶かし、放置車両を吹き飛ばし、総武大蛇の頭に命中した。
総武大蛇は魔法障壁を展開させるが、数瞬耐えただけで貫かれ、その頭は大きく抉られて、溶け落ちると勢いよく地面に横転する。
アスファルトの道路が砕け散り、雪煙が噴火したかのように舞い上がる。
「なんだ、あっさりと倒せちゃったね。逃げる必要なかったか」
緊急発進していたマモベースが加速をやめてゆっくりと止まる。敵は完全に動きを止めており、プスプスと煙が昇っていた。
「やったか! これがテテの艦砲射撃の威力だうさ! ふふふ、この戦艦はもうテテの物に決定うさ。ここにマジックで名前書いとくうさね」
「せめておっさんモードを解除してから、素を出してくれないかな? かなり気持ち悪いんだけど」
兎なら可愛いけど、良い歳をしたおっさんがはしゃぐ姿は見ていて笑えないんだよ。
跳び上がって喜ぶおっさんテテをジト目で見つつ、モニターに視線を戻すが━━。
頭の部分が電車の連結が外れるように、後方の胴体から外れると、外れた部分から頭が再生を始めていた!
「なぬっ! やばい、アミ、再発進だ!」
「ラジャー!」
慌ててアミがマモベースを発進させて、その反動でブリッジが大きく揺れるのを席にしがみついて耐えながら、モニターを見ると、総武大蛇は再び動き始めていた。
『総武線は都内の大動脈だと、鮨詰めとなっても乗り込む人間への怒りから発生した魔物。名前は総武大蛇と名付けました! これは私が最初から決めてたネーミングなのでパクリではないことを告げておきます!』
『倒せたか確認してから、報告してきたでしょ! 何にせよヒュドラのような能力持ちなら厄介だな』
タイミングよく連絡をしてくるレイへと呆れながら返し、総武大蛇を見つめると、車輪が激しく回転し始めて、加速を始めていた。再生した爬虫類の瞳に憎しみを込め、大きく口を開けると猛然と追いかけてくる。
「超電動砲再装填。もう一度発射うさ! ぶっ壊れるまで連射するうさ!」
「アイアイサー、超電動砲発射!」
さっきも一撃で頭を吹き飛ばした超電動砲だ。その威力は証明されており、今度も頭を吹き飛ばすかと思っていたが━━。
今度は可視化できるほどの強力な魔法障壁が総武大蛇の前面に展開されて、エネルギー砲は粒子を弾けさせながら、貫通することなく消えてしまった。
「なぬ!?」
「総武大蛇の魔力分布が瞬間的に前面に収束されたことを確認。どうやら超電動砲を脅威と認識して、全力防御をした模様です」
驚く俺に、端末を操作しながら鍵音が報告してくる。どうやら爬虫類でも、馬鹿ではなく、防御するくらいはできる模様。
「小癪な蛇だな。アミ大尉、超電動砲を連射せよ! テテの艦砲射撃を見せてやれ!」
「残念ながら、超電動砲は単発式であります。どうにかしないと、あの防御障壁は貫けないと報告するであります」
「まずいですよ、敵もこちらの超電動砲を破壊するつもりで突進してきます!」
横付けした並走する総武大蛇が体当たりをしてくる。瞬間、超電動シールドが展開され、攻撃を防ぐが、その衝撃で僅かに蛇行するマモベース。
「うわわっ、皆、怪我しないように席にしがみつくんだ。ニニーは大丈夫?」
「ニニーヴはもふもふ毛皮に覆われて大丈夫のようです」
娯楽室を映し出すと、ニニーは兎たちに覆われて白い毛玉となり、ポヨンポヨンと跳ねて楽しんでいた。うん、あれなら大丈夫だな。
何回か体当たりをしてくる総武大蛇。マモベースはそのたびに揺れるがそれでも耐えていて、総武大蛇が超電動砲を破壊しようとするのを防ぐ。
「超電動シールドがあれば大丈夫ですよね? 大丈夫ですよね?」
「体当たり程度なら大丈夫でありますが……そう簡単にはいかないようでありますよ」
廃ビルや家屋を気にすることなく破壊しながら追いかけてくる総武大蛇。その巨体による質量攻撃は厳しいが、それでも耐えている。
そして、その様子を見て、戦法を変えたのか、総武大蛇は頭を持ち上げて、マモベースの上空を通り過ぎてゆく。
電車のドアを開けながら。
「なっ、なにか落ちてきます! え、これゾンビ?」
総武大蛇の胴体はぎゅうぎゅう詰めでゾンビが乗っており、扉が開くとバラバラとマモベースの甲板に落ちてくる。
超電動シールドは落下してくるゾンビを防ぐが、ゾンビが超電動シールドの上に乗ると、少しずつシールド内へと入り込まれてゆく。
「まずいでありますよ、超電動シールドはエネルギーや高速で飛来する攻撃には反応しますが、ゆっくりと近づく攻撃には反応しないであります。このままでは、超電動砲が破壊される可能性が高いでありますよ! 超電動機関砲で迎撃を━━」
「待ち給え、それではジリ貧になるだけだ。……仕方あるまい、テテの超電動砲を破壊されるわけにはいかないうさ。『弱者の懐中時計』をマモベースと連結させるから、一撃で倒せるだけのエネルギーが溜まるまで、人力で迎撃するのだ!」
苦渋の表情でテテが懐中時計をデスクに置くと、溶けるようにデスクに沈んでゆく。
「何分耐えれば良い?」
「……10分間だ。それだけのエネルギーが溜まれば、跡形なく全てを破壊できるだろう!」
「了解。なら、俺の出番だね」
やっぱりそう簡単にはいかないかと、俺はハッチへと向かうのであった。
◇
ハッチを開けると、風圧が肌を撫でて、髪を靡かせる。放置車両や瓦礫を気にせずに走行しているので、時折車体が揺れる。
「ゲーム的な展開だけど嫌いじゃないぜ。さて、ゾンビを退治しにいきますかっ!」
ハッチの縁を掴むと、軽やかな動きで甲板へと登る。
「おっと、このガブ様を忘れちゃ困るぜ」
「天才たる僕も手伝いますよ」
翼を生やしたガブが飛んできて、ルーが出っ張りに足をつけて、追いかけてくる。
「ロロたち特兎部隊たちもお手伝いするうさ! 莫邪と干将の力もお披露目してないうさしね」
さっき倒した兎部隊と共にロロも縁を掴んで、よじよじと登ってくると、銃を構える。
甲板は既に多くのゾンビたちがいて、超電動砲へとうめき声を上げながら近づいている。放置しておくと破壊される可能性が高い。
「それじゃゾンビたちを倒していきますか!」
腰を屈めると、俺は這うように走り、ゾンビへと向かう。
「ウゥゥ」
向かってくるツインテール娘に、ゾンビたちが気づくと、何人かが向かってくるが、その動きはあまりにも遅い。
すれ違い様に魔力を込めた手刀にてゾンビたちを一瞬で切り裂き、超電動砲へと向かう。
「負けてられねーな! この俺様の力も見せてやるから、冥土の土産にしな!」
「天才たる僕はマモキューシーで倒していきますよ」
翼を広げて、ガブは体当たりで豪快に倒していき、ルーはゾンビの足元をちょろちょろと走りながら、正確に脚だけを切っていく。
「全員突撃! 超電動砲まで一気に行くうさ!」
ロロたちも銃を撃ちながら、ゾンビを排除していき、皆で超電動砲に辿り着く。
「うぉぉぉ」
「脳味噌をくれぇ」
「兎オイシそう」
だが、まだまだゾンビたちは嫌になるほどたくさんいる。
「今日の甲板掃除は大変そうだ」
じわじわと迫る大勢のゾンビを前に、マーリンはにやりと笑うのだった。
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