60マモ ロロの陰謀
倉庫は少し進むと見つけることができた。案内通りに進むと、雪が積もり一見丘に見えるような場所が実は雪が積もって隠された倉庫という話であった。教えられなければ、絶対に気づかない自然さだ。
「よく考えた拠点だね。あの倉庫なら誰にも気づかれない」
「閣下はロロたちを助けてくれたあとに、安全に過ごせる場所を探して、あの倉庫を見つけたうさ。なんか物資を守っていた化け物を倒して、大量の物資を手に入れたから、冬の間は倉庫で過ごす予定だったうさよ」
「えと、寒くて凍死してしまうんではないですか? エアコンとか動きませんよね?」
明らかに電力など通電していなさそうで、生存には不適格だろうと、鍵音が疑問を呈するが、その答えは知っている。
「人間基準で考えたら駄目だよ。俺たちマーモットや兎たちは冬をエアコン無しでも生き残れる力を持っているからね。いわゆる冬眠ってやつ」
「その通りうさ。食べ物があればロロたちは生きていけるけど、人間は脆弱うさね」
人間ならこんな冬の世界では火はもちろんのこと、衣服も暮らすために広い敷地も必要となる。兎は雪のなかでも凍死することなく生きていけるし、家マーモットはエアコンとフカフカのお布団が必要だけど我慢すれば、雪のなかでも巣穴を掘って冬眠できるから大違いなのだ。
「そういえばそうでした。サバイバル能力は人間よりも遥かに動物の方が高いんでした。こう見ると、兎やマーモットも良いなって思ってしまいます」
世界が崩壊したら、生き残るのはマーモット。このことを理解し、鍵音が羨ましそうにするが今頃知ったのか、遅いぜ。
「でも、それならなんでこのマモベースを欲しがるんですか? 兎には必要ないと思うんですけど」
「閣下の趣味うさ。この戦艦を見た時、閣下は跳び上がって喜んでいたうさよ。うさー、あの戦艦はテテの物と決まった! 絶対に欲しいぞって。こーゆー、でっかい戦艦とか大好きな上司で、昨日までデンドロビウ◯のプラモ作って喜んでたうさ」
「趣味ですか……う、兎が趣味……。デンドロビウ◯はガンプラの中でも巨大ですもんね。納得です」
鍵音の脳内では、完成したデンドロビウ◯の上に兎が乗って、こーうらーき、デンドロビウ◯出ます! とか遊ぶ可愛い兎を思い浮かべてほっこりとしていた。
たしかに巨大な軍兵器が好きなら、このマモベースに目をつけてもおかしくない。というか、絶対に欲しがるだろう。
「でも、本当に趣味なだけなのでありますか? 兵を率いる将としては、危険に晒すのですから失格だと思うのでありますが」
「え~と、他にもなにか演説してたけど、ロロ眠くなって聞いてなかったうさよ。演説長いうさもん」
アミの質問に、テヘヘと舌を出して恥ずかしがるロロ。まぁ、兎ならそうだろう。長口上の演説なんか聞いているはずがないし、それはマーモットも同じだ。
でも、趣味以外にも理由はあったのか……。兎将がどのような存在かは分からないが、気になるな。
「まぁ、会ってみればわかるか。それじゃニニー、倉庫に入れてください」
真希の脚を組んで、ふふふと微笑むゴスロリツインテールだった。
その陰で、ロロが口元をふふふと押さえて含み笑いをしていたが、どうせアホなので大丈夫だろうとスルーした。
◇
雪の丘に偽装された蒲鉾型倉庫はマモベースを引き入れるために、ゲートが開いていた。マモベースが入れるほどの巨大な倉庫に、ゆっくりとマモベースは入っていく。まるでベテランの運転手のように上手に車庫入れするニニーに少し嫉妬したのは内緒だ。
「ふむ……ここはもしかして埠頭にあった倉庫か? 陸上輸送にしては、コンテナの数が多すぎる」
「でもかなりの物資があるというのは本当のようでありますね」
「うん。ショッピングモールよりも物資は多そうだね。一万人も増えてから、ショッピングモールの物資は枯渇していたし、全部手に入れば助かるけどさ……」
マモベースのライトで照らされる倉庫内には、ずらりと並ぶコンテナの姿があった。貨物船に乗せるための大型コンテナだ。すべてのコンテナに物資が入っているのならば、ショッピングモールの物資などよりも比べ物にならないほどの量が手に入る。
でも、そう簡単にはいかないこともわかる。なぜならば段ボール箱が置かれている金属棚も並んでいるのだが、その影に小さな存在がそこかしこにいるのが見えるからだ。
「探知レーダーを小動物まで探知できるように設定を切り替え。輝点を確認。その数は100匹近いでありますよ」
「兎は羽ね。空を飛ぶ鳥のように羽が単位なんだ。ちなみにマーモットは人ね。人みたいに行動するから」
「了解であります。マーモットは人単位、覚えたでありますよ」
素早く端末をタッチし、その結果を見てアミが顔を顰める。たしかに予想外の数の多さだ。それだけの数の兎たちを保護した兎将には頭が下がる。
プシューとブレーキがかかり、マモベースが停車する。その様子を見た輝点が包囲するために、動き始めるがその動きは訓練された素早く慣れた動きだ。
「兎にしては、軍隊のようでありますね」
「あぁ、でも、俺たちも負けてはいない。3人でも100羽に勝てることを教えてあげないとね」
問題はガブもルーも隅っこですよすよ寝ててお手伝いをしてくれるか不明なところだけどさ。
さて、まずは敵の動きを確認して━━。
俺たちがレーダーを確認しながら、作戦を練ろうとした時だった。
「動くなうさ! 動くと、この天使の服が穴だらけになるうさよ! いや、天使は可哀想だから、そこのオドオドした少女を穴だらけにするうさ」
「ええっ! 私も稀に見る美少女なのに、美少女差別ですよ!」
ロロがいつの間にか手にしていた二丁拳銃を構えて、デスクの上に立つのであった。そして、ニニーに向けていた銃を鍵音に向け直す。
黄金銃と白銀の銃。意匠も彫られて装飾された現代にはあり得ない趣味的な銃を手にしたロロは、ブリッジの俺たちに銃を見せつける。
「いつの間に銃なんて!? てか、どうやってその銃を用意したんだ?」
ロロは古ぼけた服を着ているだけで、とてもではないが、銃を二丁も隠し持つことはできないのに、なぜか持っている。
俺たちが驚く中で、ロロは銃をフリフリと振って、お鼻をスンスンさせて得意げに口元を歪める。
「くくく、油断したうさね。ロロは神器『莫邪』と『干将』という双銃をこのお手々からいつでも取り出せるうさよ」
双銃が放電すると、一瞬で消えて、ロロがお手々を振ると、再びその手に現れる。神器とは本当のことらしく、双銃には莫大な魔力が宿っているのが見える。
『出入り自由とか神器とかあるわけ!? ロロはそんな固有スキルを持ってたわけ?』
『いえ、ロロに神器系統の固有スキルの気配はしませんでした。なのに神器を手に入れることができるということは……』
『ということは?』
『どこかで手に入れたのでしょう』
『役に立つ情報ありがとう』
レイの知識の多さに感謝の舌打ちをしつつ、ロロを観察する。兎のお手々なのに、双銃は吸い付くように張り付いており、ロロの構えは堂に入ったもので隙がない。
「双銃のロロとはこのロロのことうさ! この莫邪と干将は特殊能力もあるけど、普通に敵を撃ち殺すこともできるうさよ。さぁ、大人しくブリッジを明け渡すうさ!」
「ちっ、アホそうに見えたから油断したか。でも、鍵音は銃弾くらいじゃ倒せないぜ? なにせ不壊属性を持つからね」
「それは魔本の時だけです! 今の私はか弱い美少女、銃弾で死んじゃいますからね? 駄目ですよ? いざとなったら私を守ってください!」
「ハッタリを破ってくれてありがとう」
ロロが動揺するかと思ったのに、鍵音が台無しにしてくれました。酷いですと、泣き叫ぶ鍵音をスルーして、ロロと睨み合う。お互いの視線がぶつかり合い、隙を探さんと緊張の空気が醸し出される。
そして、最初に動いたのは━━。
「ニニーも! ニニーもやりゅ! ソーセージのニニーとはあたちのことでしゅ! このばくやとかんしょーは特別なんでしゅよ!」
幼女が俺たちを見て楽しそうだと、ぶんぶんお手々を振って、空気をほんわかに変えちゃうのであった。
ロロは幼女を見る。
幼女は双銃代わりに人参スティックの束を持って、ごっこ遊びだよと楽しげだ。
「んと、その双銃とロロの双銃交換するうさ? 少しの間なら貸してあげるうさよ? セーフティかけるから、暴発もないうさ」
幼女が持つ双銃代わりの人参スティックの束を前におずおずと自分の双銃を差し出しちゃうのであった。神器よりも人参スティックの束を優先する兎である。
「ロロちゃん、ありあと〜! わ~い、ニニー、かっくいい? 似合う、似合う? バ~ン、バ~ン」
ニニーは大喜びで、デスクの上に登ると、双銃を振り回してご機嫌スマイルだ。
そしてロロはというと、嬉しそうに人参スティックの束を抱えて、自身の後ろにそろりと立つ二人に気づき、猛ダッシュする。
「この人参スティックはロロのうさよ! 絶対に奪われないうさからね!」
「待てよ〜! その人参スティックを奪い合うぜ!」
「天才たる僕と戦いましょう!」
後ろに立つのは、ご飯の匂いを感じて眠りから覚めたガブとルーだ。お手々を突き出して、逃げるロロを追いかける。
「ロロの固有スキル『脱兎』は逃げる時は素早さが十倍になるうさ! 追いつけるものなら追いついてみやがれうさよ!」
ロロの脚が光ると、風のような速さでブリッジから飛び出ていく。
「それぐらいで俺様が諦めると思ってるのかよ。うぉー、『天マ』発動!」
天使の羽を生やすと、ガブも空を飛んでいく。
「天才たる僕の作り上げた限界を超える走法『回し車エンジン』にて追いかけますよ!」
ルーの身体にフラフープのようなリング状のオーラが現れると、高速で走ってゆく。
あっという間にブリッジ占拠の危機は文字通り走り去り、後には幼女が大はしゃぎで双銃をぶんぶんと振り回すだけになったのであった。
「大変であります。あのアホトリオはハッチを開けて、外に行きました。開いたハッチから、兎たちが侵入し始めています!」
というわけにはいかなかった模様。
ロロの作戦は上手くいかなかったが、どうやら結果は成功したらしいね。
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