56マモ デビルサマナー鍵音
魔本化するには精神力や魔力が満タンでないとだめらしい。なので、残念ながら、遠藤と見野の神様は後回しとすることとした。
それならば次の行動は決まっている。冬の間に戦力強化だ。というわけで作戦会議だ!
「あははは! 不労所得ゲットです。皆がスロットに使った1割が私の手元に来るなんて、なりなりなり成り上がり、本屋鍵音の成り上がり人生が開幕しました! 魔本変身を覚えて良かったです」
なんか俺たちのお家でコインをばら撒きながら高笑いをする少女がいるんだけど、作戦会議続けて良いかな?
チラッチラッと俺を見てくるので、どうやら聞いて欲しい模様。なぜに友人にやらないかと聞きたいけど、自慢しぃの性格は嫌がられるからだろうと読んでいる。だからマーモットに聞いてほしいのだろう。あとコミュ障はペットなら気後れせずに話せる可能性が大。
まぁ、これからこき使う予定だし聞いてやるか。
「鍵音はそのコインでスロットをするの?」
「いえ、これはスロットには使えないタイプです。どうやら魔女の館で通貨代わりに使えるようなんです。ふふふ、そこで売られている各種のチートアイテム。私は平然とした顔でエリクサーをかすり傷に使って、え、これ貴重なの? 簡単に手に入りますよとか、皆を驚かすんですよ」
うひゃーと驚く大衆のフリをして、すぐにケロリとした顔になり、一人二役をやる無駄に演技のうまい娘である。
でも、なるほど、それは美味しい話だ。で、魔女の館はどこにあるのかな?
「さぁ、マーリンさん、一緒に魔女の館を探しませんか? お礼にキャベツをあげてもいいです。私の考えるところでは、露店のおじいさんか、古物商あたりが怪しいと思うんです」
やはりマーモット相手ならコミュ障を発揮することなく話せる鍵音は、ワクワクとした顔で俺を見てくるが、どこの女神な転生なんだろうね?
「……俺は鍵音のログを見れないんだけどさ、本当に魔女の館? よーく見てみて?」
なんかオチが見えるんだよ。俺の気の所為だといいんだけど。
「え? しっかりと魔女の館と書いてありますよ? え~と、マ女の館って、書いてありますけど大した変わりはないですよね?」
コテンと小首を傾げる鍵音だけど、やっぱり予想通りだったか。
俺はそっと部屋の隅っこを指差して、ポチポチ空中を押下するリリーを見る。
『経験値10000を消費し、リリーはダンジョン施設『マ女の館』を取得したようですよ、プレイヤー。マ女の館はダンジョン内にあるお店屋さんの効果ですね』
『教えてくれてありがと』
マ女の館がどのようなものかは分からないけど、だいたい予想できる。正しくはマーモット女の館なんだろうね。
「え? 指差してどうしたんですか? リリーさんがなにか……ええっ!?」
不思議そうにリリーを見る鍵音だが、隅っこに座るリリーが妖しく笑い(マーモット目線で妖しい)、テチテチとマーモットハンドを床に叩くと、驚くことが起きた。
床から縦型カプセルが置いてあるカウンターがウィーンとせり出してきて、壁がひっくり返るとずらりと銃や剣などの武器が並ぶ壁となる。
「ふふふ、ようこそ、マ女の館に。欲しいものがあるなら、マモッカと交換してあげるわよ。石鹸からマモタイトまで全てを用意できるわ」
「ニニーもお店手伝ってあげりゅ! あたちのお膝の上に乗せてあげるね。いらっしゃい、いらったーい」
もちろんそんな面白そうなことを幼女が見逃すわけもなく、瞬時にリリーを抱っこするとカウンターの後ろにちょこんと座って、ウキウキと鍵音へと手を振るのであった。
マーモットと幼女が経営するなんとも可愛いお店屋さんだ。コインの通貨名はマモッカか……マモタイトという名前は気になるな……。
俺は品物のラインナップを気にするが、鍵音はまったく気にしないようで小躍りしていた。
「やりました、やりましたよ。遂に私の成り上がり伝説開幕。今は3528マモッカあるので、何を買えるか……傷薬800マモッカで、ヒットポイントを1から3回復させる。なんか渋い効果ですね。38口径ハンドガン80万マモッカ!? 弾も一発8000マモッカとか高すぎないですか?」
「裏で買うならこれが適正価格なの。これ以下で貴方が仕入れるルートを知っているなら話は変わるけど」
魔力障壁を使えば無効化できる武器にしては高額だけど、ゴブリンたちなどの下級モンスターを危なげなく倒せるとなれば適正価格かもね。
「むむむ、となると銃はスルーして」
「チョコ買ってあげまちた! あい、チョコ400マモッカでーしゅ」
「頼んでないのに勝手に買われました!?」
悩む鍵音に親切なニニーヴがチョコを選んてあげる。どーぞと手渡すと、鍵音が持つチョコをキラキラと眺めるサービスもつく太っ腹ぶりだ。口元からよだれも垂らしちゃう。
「うう、このチョコはニニーヴさんにあげますね。でもマーモットには毒なのであげちゃだめですよ?」
「ありあと〜! まぐまぐ、あみゃーい! おいちーね、チョコレート」
大喜びでチョコを頬張り満面の笑顔となるニニーに、エヘヘと力なく笑い返す鍵音。
「はは……良かったです。え~と、どれにしようかしら……」
急いで買わないと、幼女が次はなにが良いかなとお菓子のラインナップを探し始めるので焦る鍵音。
「あ!? これ、これをお願いします! この紙切れ!」
「あら良いのを選んだわね。これは魔本を強化する『模造悪魔召喚の頁』ね。封印した悪魔のコピーをマモッカを支払って召喚できるの。今ならたったの1000マモッカよ」
「チュートリアルというわけですね。もちろん買います!」
マーモットが紙切れをポテンと渡すと大喜びで受け取る鍵音。受け取ると頁は鍵音に吸い込まれて消えてしまう。
「ふふ、異世界転移した時はどうなることかと思ってましたけど、ゲームみたいに私は徐々に成長していくんですね。なら、早速1000マモッカを消費しサモン『ヴォラク』です!」
「あ、まだ止めた方が……」
俺はある種の予感から鍵音を止めようとするが遅かった。鍵音は悪魔を使役してデビルサマナーとなりますと大喜びでヴォラクを召喚してしまう。
床に魔法陣が描かれると、昨日倒したヴォラクが姿を現す。骨の翼を生やす老婆という不気味な悪魔だ。
「私は大悪魔ヴォラク。私をお前は上手く使えるかのぅ、ふぇっふぇっふぇっふぇっ」
「フフン、そんなお決まりのセリフに怯む私ではないんです。では、私がデビルサマナーとなったことを皆にお披露目に行くとしましょう!」
鍵音がウキウキと歩き始め、ヴォラクが踏み出して━━。
フッと消えた。
「??? あれ、なんで消えたんですか? ステルス能力とか?」
キョロキョロと探す鍵音だけど、俺には理由がわかっていた。多分鍵音世代だと知らないんだろう。
「悪魔を顕現させておくにはマモタイトが必要なんだと思うよ」
「? 顕現させておくには維持費が必要なんですか!?」
「うん、昔の女神な転生では必要だったんだ。でも、それだと維持費が大変だから、ボス戦のみにフル召喚させて、通常は1、2体を召喚するだけで探索するプレイヤーが多かったから、その仕様はなくなったんだよね」
昔の仕様なんだよと、腕を合わせて懐かしげに語るマーモットだ。あの仕様もコストパフォーマンスを考えたりして面白かったのになぁ。
「えぇぇぇぇっ!! そんなクソゲー仕様なのがあったんですか? 常に召喚できないじゃないですか! ヴォラクの維持費は……1分でマモタイト30……。て、ててててん店長さんっ、マモタイトは幾らですか?」
「現在のレートは158マモッカで1マモタイトよ」
「価値の低くなった日本円並みにマモッカ安いですっ! えぇっ! 一分維持するのに5000マモッカ近く消費するんですか? あばばば、わたわたわたの成り上がり伝説が」
レートを聞いて気絶しちゃう鍵音であった。
◇
「マモタイトは魔物を倒すと手に入るようなんです。というわけで、マーリンさん、お散歩に行きましょう」
気絶から回復した鍵音はまったくめげずに俺を連れて、マモベースにいた。マモタイトは魔物たちを倒すと手に入ると聞いて、すぐに立ち直った模様。
ブリッジには俺とガブ、ルーにアミとニニーがいる。
「皆には内緒でこっそりと強くなるんです。あとコストの低い悪魔を封印もしたいです」
「自分で倒せば良いじゃん。手数料のマモッカを貯めて、マモタイトに交換してから、チクチクと魔物たちを倒していくの」
「そんな魔物と数回戦ったら宿屋に戻るWizardr◯の初期パーティーみたいなことをしてたら何日かかるか分からないじゃないですか。ここはパ◯スがいる間にレベル上げをする主人公みたいに強いプレイヤーに寄生する方法が良いと思うんです!」
「寄生プレイは嫌われるからね」
「私の顔立ちを見ると、皆許してくれるってランちゃんは言ってました」
テヘヘと照れる鍵音だが、あまりよろしくない教育を受けている模様。
「オタサーの姫プレイかな? でも俺はマーモットだから許さないよ?」
「今度ブラッシングします! キャベツも毎日奉納しますからお願いしますよ」
「仕方ないなぁ、分かったよ」
「俺様もついていくから安心しろよ」
キャベツのためなら仕方ないか。なら、お散歩に行こうかな。そして、キャベツと聞くと現れるのが仲間である。
「待ってください、マーリン。散歩に行くなら、天才たる僕の発明品も持って行ってください。MAレベル1に上げて、マモットアーマーを開発。全員分のマモットアーマーを用意しました。ピッタリ経験値20000を使い切りましたよ」
ルーが手渡してくれたのは銀のリングだった。マーモットのちっこい腕に嵌まる大きさだ。
マモットアーマー
耐久力250
戦闘力150
驚くことにマモベースと耐久力が変わらず、そしてその戦闘力はドローンなど比べ物にならない。
「このリングを使うとマモットアーマーを装備できます。携帯もできる便利なリングで、天才たる僕の傑作と言えるでしょう。ここから先は激闘となりますし、人間たちとコミュニケーションをとる必要もありますからね」
えっへんと得意げなルーだけどシステムが作ってくれたんじゃないかな。空気を読んで言わないけどさ。
「おぉ~! 面白そうだな、早速使わせてもらうぜ」
ガブが興味津々でリングを掲げると眩い光が輝き━━。
「お、装備できたか? 俺様かっこいい?」
鍛えられて筋肉隆々の大男がそこにはいた。
大男のお腹からマーモットが頭を突き出してひくひく鼻を鳴らすのがラブリ~。
ラブリ~だよね? 寄生したエイリアンに見えないよね?
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