02 サウストリア(2)
馬車を降りると、懐かしい声が迎えてくれる。
「まぁ、まぁ、まぁ、本当にカリーナだわ、私の可愛い孫娘がやっと帰って来てくれたわね」
「ファーネ様」
「あぁ、よして頂戴。おばあ様よ、公爵家に引き取られても、あなたは私の孫なんですからね」
「ありがとう、ファーネおばあ様」
「あぁ、可愛いカリーナ、良く帰って来たわ、で一緒に来たこちらの方は誰なのかしら?」
「失礼致しました、ファリス・ラングロアと申します」
「まぁ、ラングロア家の。なら一緒に入って頂戴」
「いえ、私はお連れしただけですので」
「何を言っているの、久しぶりの家にカリーナ一人では心細いでしょう? アレス様には私から連絡しておくわ、さぁ、入って、入って。
カリーナの好きなローズのお茶を用意してあるのよ、ゆっくりお茶でもしましょうね」
長い間、イスレイン家を取り仕切っていた人には敵わない。
押し切られるように屋敷に招き入れられ、ファリス先生がそのままお茶の席にも同席させられそうになっている。
流石に席には付けないと、少し離れた所にいるが、一人でいるよりずっと安心出来る。
しばらく王都に行った頃を話していると、知らない人の声が聞こえる。
「叔母上、いきなり呼び出して何の用です?」
「ダナー、こっちにいらっしゃい」
「僕だって暇ではないんですよ」
「貴方が会いたいだろうと呼んであげたのに、、、それ以上、余計な事を言っていると後悔しますよ。
カリーナは、小さかったから覚えていないかしらね」
「カリーナ?」
「えっと、、、」
白っぽい金髪に空色の瞳、誰だろう? と考えていると、その人にいきなり抱きしめられた。
「カリーナ! 本当にカリーナだ!」
「貴様、離れろ」
びっくりして固まっていると、ファリス先生がその人を引きはがしてくれる。
「まぁ、ダナー。年頃の令嬢にいきなり抱き着くものではありませんよ」
「ダナー? あの“いたずらっ子”のダナー?」
「もう、子じゃないぜ」
空色の瞳がウインクして見せる。
なんだか誰かに似ている気がする。
「ダナー、いい加減にしなさい」
ファーネ様に指摘され、ファリス先生の手から逃れると、彼が正式な礼をする。
「ダナー・ティジィスと申します、是非、お見知りおきを」
「カリーナ・アウスレーゼです」
席を立ち、同じように正式な礼を返す。
「さぁ、もういいわ、席に着きなさい。ダナー、来て良かったでしょう?」
「もちろん! 感謝しているよ、叔母上」
私はあんまり感謝していないわ。
ここにいる間、随分彼には困らされた。
部屋の中に緑蛙がいっぱい放されていたり、贈られた箱の中に虫の抜け殻が入っていて、母がその度に気を失って大変だった。
花畑で迷子になっていると、見つけてくれたのも彼だったけれど、、、遠くに連れて行くのもいつも彼だった。




