01 サウストリア(1)
久しぶりのサウストリアは思っていた以上に懐かしく感じる場所だった。
街道も整備されているので、メサから夜通し隊を移動させミュールに向かったが、仲間たちも大騒ぎで大変だった。
ミュールでは少し街の中に滞在すると聞かされていたので、街の中を散策出来るしサウストリアには公の浴場などがあり、誰でも利用出来るのでみんな楽しみにしている。
商隊では身体を拭くくらいが精々だし、使用人の中には浴槽を使ったことのない者もいて、始めての事にウキウキしている人も多かった。
カリーナも浴槽には入りたいが、さすがに公の浴場に行く勇気は無く、ここまで来たのなら、懐かしい人達にも会ってみたい。
だがそれを使用人が望める訳もなく、どうしようかと思っていたら、アン様に少し届け物をして欲しいとイスレイン家に使いに出された。
アレス様が気を配ってくれたのだと分かるのでとても嬉しい。
ファリス先生と一緒に馬車に揺られながら、外を眺める。
「このまま本家に行く事は出来ないから、別宅の方に行く事になるよ」
「良かった、私がサウストリアにいた頃も別宅にいたの」
「本当は服装もちゃんとしたかったんだけど、、、」
「ファーネ様は気になさらないわ」
「アレス様もそんな事を言っていたな」
前当主の奥方のファーネ様は、母を自分の娘にしてくれた人だ。
明るくておおらかで、とても暖かい人で、母やカリーナ以外にも何人かの子どもを育てていた。
「アレス様も来られるの?」
「いや、アレス様は本家の方に行くらしいよ」
「本家?」
「ダリル殿がやっとレオーナ様との話を決める気になったんじゃ無いかって」
「レオーナ様って、イスレイン家のお嬢様?」
「何年か前に、随分申し込まれていたらしいよ」
「そう、、、」
「その頃はアレス様が別の方に夢中だったから、、、でも今ならね」
「知らなかったわ」
「う〜ん、そうなるとアレス様が次の当主って事になるのかな、、、、、、」
レオーナ様との間にそんな話があったなんて知らなかった。
金髪に薄茶色の瞳をした明るい人を思い出す。
瞳の色は違うが、明るくて良く笑う所も、とても優しい所も、以前、彼が惹かれた人にとても良く似ている。
何を考えているのかしら?
馬鹿馬鹿しい、彼にはずっと妹だと言われているのに、、、
アレス様がいけないんだわ。
妹にちょっと優しすぎるから、妹だって優しい兄を取られたく無いって思う時だってあるのに、彼は全然分かっていない。
それにそんな事を考えている余裕は無い。
八年ぶりに会う人が、私のことを覚えていなかったらどうしよう。
「何だか緊張して来たみたい」
「どのくらい前になるの?」
「八年よ、、、やっぱり行くの止めておこうかしら?」
「大丈夫だよ、僕が一緒にいるから緊張しないで」
「ありがとうございます、ファリス先生」
「ファリスでいいよ」
「えっ?」
「今は先生では無いし、、、二人だけなんだから」
「ありがとう、、、ファリス」
名前を呼ぶのがこんなに恥ずかしいとは思わなかった。
ちょっと親密な感じがするし、顔が赤くなっているのが分かる。
何だか息まで苦しくなっているようで、このまま気を失ったらどうしようと思っていると馬車が止まる。




