15 閑話 -ガルスside
「また、手合わせをされているのですか?」
「そうみたいね」
「さっきまで工房に籠っておられた様でしたのに、、、」
「ふふっ、妙な噂話の心配をしないといけないかしら?」
「お相手は、ご親友の方ではありませんでしたか?」
「彼では無くなったようよ」
「まぁ」
城の修練場で、ザィードとアレス様が剣の手合わせをしている。
「まぁ、魅力的な方ですからね」
「気持ちはちょっと分かるわよね」
「そうなのですか?」
「彼が来る度、こんな調子ではね」
「工房に良く二人でおられますね」
「そうでしょう?」
「こうして、剣の手合わせも」
「そうなのよ、まぁ、噂の方は冗談だとしても、こう嬉しそうにされるのもね」
「まぁ、お嬢様」
「私だってやきもちくらい妬くわよ?」
「アレス様に、ですか?」
「彼が来ると嬉しそうな顔をするのだもの」
「殿下の剣の相手を出来る方が、他にいませんから」
「まぁ、仕方ないのかしらね」
ガルスに来て一番驚いた事は、獣人達がほとんど道具を使わないと言う事だった。
そしてその理由もとても単純で、使う必要が無いから。
確かにエルメニアにいた頃、サイラス様は魔道具を使う事なく魔物を狩っていたが、生活の中でもこれほど道具を使わないとは思いもしなかった。
どうしようかと思っていた頃、ザィードがライルとジルの修練を見ていて剣に興味を持った。
魔物の相手でも道具があった方が便利なので、他の獣人達にも教えてみたが、彼等は剣に興味を持てなかったが、棍棒を使うようになった。
自分の身長より長い、細い棒を良く器用に扱えると思うが、確かに剣より単純でリーチがある分、利点も分かりやすい。
ザイードは、普段サイラス様の棍棒相手に身体を動かしているが、アレス様がガルスに来ると時間を見つけてはこうして手合わせしている。
「凄いっすね」
「本当に」
ザィードを相手にして、対等に戦っている。
「さすが、"赤の騎士"と言えばいいのかしら」
「これじゃ、王都に敵なしっすね」
「そうでしょうね」
「まだ妙な噂話は続いているのですか?」
「今は別の相手を募集中ってとこっすね」
「それにも困ったものね」
「お嬢様にお気持ちが残っている様には見えませんが」
「あの頃の気持ちを疑うつもりは無いけれど、、、アッサリしたものだったわよ」
「そうでしたね」
「ね?」
「若い頃、随分経験したみたいっすからね」
「なんの話?」
「まぁ、色々割り切って付き合えるって事っすよ」
「あら、誰のことかしら?」
「俺の話じゃないっすよ?」
「ふ~ん、そう」
「頭の中で考えてから動く人ですからね」
「そうね、剣筋にも良く出ているわ、一度、感情に引きずられてみればいいのに」
「それは、、、ちょっと面白そうですね」
「でしょう?」
「面倒な事にならないっすか?」
「あら、どうして?」
「あの人が、感情的に動くなんてちょっと考えたくないっすね」
「ふふっ、大丈夫よ、本来とても優しい人だもの。それに感情に引きずられている人って可愛いわよ」
そう言って、ザィードに声をかける。
「ザィード!」
こちらに視線を向けて手を上げるので、目をつぶってキスを送る様な仕草をすると、怒った顔をしてこちらに向かってくる。
彼が近くに来ると、二人は相変わらずサッサと離れて行く。
「人前でそうした様子をみせるな」
「軽い挨拶ですよ?」
「ダメだ」
甘えるように彼に触れる。
「では二人だけの時に?」
「リディア、今は汗をかいているから、、、」
「これからも、でしょう?」
「今は、、、ダメだろう?」
「薬師の方にお許しは頂きましたし、ロニが色々教えてくれます」
「そなたの侍女が優秀なのは知っているが、、、」
「それに経験者ですもの、ね?」
抱き上げて部屋に連れて行かれるので、修練場に残された人に手を振って見せる。
このくらいの意地悪は許して欲しい。
今日は朝からずっと二人でいて、全然構ってくれないのだもの、私だってやきもちの一つくらい妬きたくなる。




