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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
9・魔族討伐戦
154/155

扉の前の交渉

登場人物紹介

☆アミス一行のメンバー

◎アミス・アルリア 16歳 男 ハーフエルフ

 物語の主人公

 複数の聖獣を使役する少年魔導士

 見た目は完全な美少女


◎タリサ・ハールマン 20歳 女

 元暗黒騎士団に所属していた女戦士

 クーデタにより国を追われてアミスの仲間になった

 アミスに対しては仲間意識より忠誠心の方が強い


◎リン・トウロン 19歳 女 シェイプチェンジャー

 白虎へと姿を変えることができるシェイプチェンジャーの戦士

 土系の精霊魔法も使う

 アミスのことが好き


◎ジーブル・フラム 17歳 女

 氷の神を信仰する女神官

 ある人物の命令によりアミスを守る為に仲間となったが、それを知っているのは仲間ではタリサのみ


★その他

◎ルイス・オイク・ベイダー 男

 ベイダー王国の第二王子で今回の依頼人

 魔族討伐会議への護衛を依頼している

 魔族討伐作戦への参加も予定している


◎ロリア・エリミナ 16歳 女

 エリミナ王国の若き女王

 アミスと面識あり


◎セラ・ルアンナ 女

 ロリアの側近

 落ち着いた雰囲気を持つ魔法戦士


◎ティラローア・クレイク 女

 ロリアの側近の神官戦士

 主君であるロリア・エリミナがアミス・アルリアの部屋を訪ね入室してすぐに自分達に向けられている視線に気づいた。

 姿は隠しているが存在自体を隠すつもりはないのか、気配がハッキリと感じ取れる。


 扉前での見張りの指示を受けたのはセラ・ルアンナとティラローア・クレイクの2人。エリミナ王国女王であるロリアの側近であり、今回は護衛役として同行してこの都市に来ていた。

 護衛の1人セラは少し悩んだが、同じく考えている様子を見せている相方ティラローアに目配せすると互いに考えが一致した様子で頷きあった。


 「隠れていないで出てきたらどうですか?」


 セラは契約してある風の精霊の力を借り、室内には聞こえずに、隠れている相手にのみ聞こえるようにその声を飛ばした。

 その声に反応してすぐに隠れている人物が姿を現す。それは2人が予想している相手であり、何が目的でこちらを見ていたのかもすぐに理解できた。

 主君ロリアが今訪ねている相手であるアミスの仲間、タリサ・ハールマン、リン・トウロン、ジーブル・フラムの3人だった。

 どう会話を切り出そうかと考えるセラ達より先に、タリサが口を開く。


 「室内に入れてもらっても良いですか?」


 口調は穏やかだったが、確かな威圧感を感じる。

 躊躇うティラローアとは異なり、セラはすぐに首を横に振った。


 「申し訳ありませんが、少し待っていただきたく……」

 「それを受け入れるとでも?」


 セラの言葉を遮るようにタリサは言葉を被せた。セラが断ろうとすることを予測していたのだろう。だからこそ、相手に主導権を握らせないように先に言葉を放つ。


 「仲間が見知らぬ相手と会っている。それを無視するわけにはいかないのですが」

 「見知らぬって、さっき会ってるだろうが……」

 

 ティラローアが明らかな不満の言葉を出したが、それはすぐにセラが制止する。

 一見は共に勝気な風貌の女性2人だったが、性格には大きな差異があるようだと、タリサ達はすぐに分かった。おそらく立場も青みがかった髪を小さなポニーテールに纏めたセラの方が上なのだろう。不満そうに短め赤い髪を乱暴に掻きながらもティラローアが口を紡いだのがその予想を裏付けていると思えた。


 「主君の命ですので、入れるわけにはいきません」


 セラのその言葉に今度はリンが不満の言葉を発しようとしたが、その声が出される前にジーブルが止めた。彼女はここはタリサに任せた方が良いと判断している。


 「ここがどこかを把握していてのことですか?」

 「?」


 セラもティラローアもタリサのその言葉の真意を理解できなかった。彼女等がそれを問うより先にタリサが言葉を続ける。


 「ここは貴女(あなた)方の国でもなければ、貴女方の部屋でもない。私達の仲間の部屋ですよ」


 セラはタリサの真意を把握した。自分達に彼女を止める権利はない。そう言っているのだ。


 「ですが……」

 「友好的なうちに入れてくれた方が良いと思いますよ」


 そう言うとタリサが纏う雰囲気が一変した。直前まではずっと威圧感はあっても敵意が感じなかった。だが、威圧感が比べ物にならないぐらいに高まり、そこに今にも攻撃に出ようかという闘気が混ざりだす。

 セラもティラローアも咄嗟に武器に手をかざした。攻撃にすぐに対応できるように……

 だが、そんな彼女達の動きにタリサ達はなんの反応も見せない。タリサは表情を変えず、リンとジーブルも落ち着いた様子で少し不思議そうに2人に視線を向けていた。

 先程感じた闘気が勘違いだったかと思える程の状況に2人は互いに顔を見合わせる。


 (脅し? いや、このまま断り続ければ本気で攻撃してくるだろうな。それだけアミスの事が大事ということか……)


 セラは考える。そして、ティラローアはそんな彼女からの指示を待った。もし、戦うことになれば負けるつもりはないが、簡単な相手ではないことは理解していた。

 セラは小さな溜息をつくと、タリサに対して笑みを向けた。敵意はないというアピールだった。

 ここは事を大きくするべきではない。ここは彼女達の入室を許可するしかないと判断した。


 「少々お待ちを……」


 セラはそう言うとタリサに背を向けた。隙だらけのその姿は、それも敵意は無いという意思表示。そのまま扉に手を添えると、魔法により主君に言葉を飛ばした。


 (ロリア様、宜しいでしょうか?)

 (なに?)


 帰ってきた魔法によって頭に直接響いた主君の言葉。上機嫌さを隠さないそれに、セラは少し笑みを浮かべる。


 (セラ?)


 すぐに要件を伝えてこない彼女に、ロリアは彼女の名を呼ぶ。


 (アミス・アルリアの仲間が来ておりますが、入れてもよろしいでしょうか?)

 (ええ、いいですよ)


 あっさりとした返答。ある程度は予想ついていたそれに、セラは苦笑いを浮かべる。


 (御入れしてあげてくださいな)


 セラがすぐに返事を返さなかったので、ロリアは更にそう伝える。


 (承知しました)


 セラはそう返すと、扉から手を離してタリサ達に向かって振り向く。


 「お許しが出ました。と、言っても許しがなくても入るつもりだったのでしょうけど……」


 と、再度苦笑いのセラ。


 「そのつもりでした」


 タリサは素直にそう返した。腹の探り合いはもう必要ないと判断して……


 (しかし、何者なのか……)


 この短いやり取りでセラは感じていた。タリサの尋常ではない実力に……

 いざ戦闘となれば、ティラローアと共にある限りどんな相手であろうとそうそう遅れを取るつもりはない。だが、自分達の実力に自信を持っているそんなセラでも目の前の女戦士と戦うことはしてはいけないと感じていた。実際の年齢は知らないが、どう見ても20歳前後。だが感じられる雰囲気は実力の高いベテラン冒険者でも簡単に纏えないほどのもの。

 調査して名前だけは調べてある。だが知識にある有名冒険者の中にタリサという名前はない。


 (こんな者がアミスの仲間になっているとは……)


 偶々、ルイス王子の護衛としてアミスを見かけた時、遠方から観察し若い者ばかりの冒険者一行に入ったことが分かり、そんな若い者達で上級魔族と戦うつもりなのかと不安さを感じていた。それを主君のロリアに伝えると、同様の不安さ感じたらしく、ルイス王子への訪問を理由にして様子を見ることにした。アミス一行以外にも充分な実力を感じられるベテラン冒険者もいるようで少し安心しかけていたが、アミスの沈んだ表情に気づき、ロリアの不安な気持ちは抑える事ができなくなった。

 そして、直接アミスに会いに行くと言ったロリアを止めることが出来ずに、今の状況になっていた。

 だが……


 (実力者揃いということか……)


 タリサだけではないとセラはわかった。少なくとも、目の前にいる3人の女冒険者は充分な実力を持っているとセラには感じられた。


 (しかも、大事に想われているようだな……)


 これを伝えればロリアを安心させることができるだろう。だが、それと同時にもう止めることはできないだろうも思ってもいた。ロリアが魔族討伐に参加することを……


 (参加してほしくはなかったんだけどな……)


 危険なことには参加せずに、王としての仕事に集中してほしかった。だが、かつて彼女が経験した冒険が彼女を変えた。弱気だった心が強くなったことは嬉しかったが、代わりに新たな使命を持ってしまった。魔族の手から人々を守るという使命を……。それを可能にする魔法を手に入れてしまったことにより、彼女自身がそれをやらなければならないも思うようになってしまったのだ。

 アミスがこの討伐に参加するなら、ロリアが参加しないわけがない。ロリアを危険なことから遠ざけたいセラは複雑な心境となっていた。

 考え込むセラを横目で心配そうに見るティラローア。そんな目を向けられていることに気づき、セラは誤魔化すようにタリサ達に対する。


 「では入りましょう」


 そう言い扉に手を伸ばす。

 ゆっくりと開かれる扉、そして、室内の情景がセラやタリサ達の目に映った。

 そこにあったのは予想外の光景。

 タリサやジーブルすらも予想していないものを目にして、全員が驚きで固まることとなったのだった。

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