表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
9・魔族討伐戦
153/156

女王ロリア

登場人物紹介

☆アミス一行のメンバー

◎アミス・アルリア 16歳 男 ハーフエルフ

 物語の主人公

 複数の聖獣を使役する少年魔導士

 見た目は完全な美少女


◎ラス・アラーグェ 24歳 男 元ハーフエルフ

 魔法生物化された魔法剣士

 自分を魔法生物カさせた者を探している

 魔法生物化されてる者特有の高い魔力を持つ


◎タリサ・ハールマン 20歳 女

 元暗黒騎士団に所属していた女戦士

 クーデタにより国を追われてアミスの仲間になった

 アミスに対しては仲間意識より忠誠心の方が強い


◎リン・トウロン 19歳 女 シェイプチェンジャー

 白虎へと姿を変えることができるシェイプチェンジャーの戦士

 土系の精霊魔法も使う

 アミスのことが好き


◎ジーブル・フラム 17歳 女

 氷の神を信仰する女神官

 ある人物の命令によりアミスを守る為に仲間となったが、それを知っているのは仲間ではタリサのみ


◎サンクローゼ・セリシェル 22歳 男

 仲間からサンと呼ばれている盗賊職

 イケイケな性格なため、常に前戦で戦いたがる

 本人曰くスロースターターなために、戦いが長引くと強いが、そこにはアミス達にもまだ解析できない理由が……


★その他

◎ルイス・オイク・ベイダー 男

 ベイダー王国の第二王子で今回の依頼人

 魔族討伐会議への護衛を依頼している

 魔族討伐作戦への参加も予定している


◎ローエン 男

 魔族討伐隊の指揮を取るベテラン冒険者

 アミス達とは別にルイスから依頼を受けている

 ローエンという名は本名ではない


◎マーキス 男

 一時期、アミスとラスに同行していたエルフの精霊使い

 癒し力の聖獣を持つ


◎ガラガルム 男

 マーキスと共に旅をするリザードマンの司祭

 大柄で威圧感のある見た目とは異なり、温和で落ち着いた性格


◎ロリア・エリミナ 女

 エリミナ王国の若き女王

 アミスと面識あり



 約一年半ぶりだった。

 まだ成長期である彼女の背は少し伸びたようで、アミスの記憶内の彼女より大きく感じた。その上で女王という立場となり、少し落ち着いた表情を見せる彼女はアミスの目にはあの時より大人びて見えていた。短かった髪も伸び上品に纏められていて、様々な面であの頃とは色々と違う。そんな彼女が自分に一切視線を向けない姿に、アミスは少し寂しい感情を抱いていた。

 だが、それは仕方のないこと……

 あの時とは立場がまったく違うのだから……


 (でも、良かった……)


 寂しいと感じた感情により、アミスは冷静に考えることができていた。

 見る限り、ロリア女王とルイス王子は面識があるようだ。会話の内容から子供の頃に一緒に遊んだ仲らしい。


 (ルイス殿下が19歳らしいから、ロリアとは3歳差か……)


 第二王子であったルイスと第三王女だった頃のロリアの関係。きっと、年齢から見てルイスがロリアの面倒を見てあげていたのだろうと予想できる。だが、今はその立場は変わっている。現時点では王位を継承する予定のないルイスと女王となったロリア。その立場の変化から、ルイスも少し言葉を選んでいる様子が見てとれた。


 「しかし、女王陛下自ら来られるとは……」

 「人手不足でしてね……、魔族に対しての知識が最もあるのが(わたくし)だったのです」

 「そうなのですか?」


 ルイスは少し驚きを見せたが、すぐに何かを思い出したかのように、納得した表情に変えた。


 「そう言えば、あの頃もそういった書物をよく読まれていましたね」

 

 ルイスの言葉に、ロリアは小さく笑みを浮かべていた。


 「実際に戦う機会もありましたしね……」


 再びルイスは驚きの表情へと変えた。


 「一度だけですし、もう1年以上前の話になりますけどね……」


 アミスは期待していた。そう言いながら彼女が自分に視線を送ることを……。その魔族との戦いを共に潜り抜けた自分に向けることを……。

 だが、彼女はルイスから視線を動かさなかった。その魔族との戦いの話題もすぐに終わり、2人の話は会議に関してのものへと移っていった。

 再び寂しさに包まれるアミス。そんな心境の中でも、アミスは2人の話をしっかりと聞く。今は仕事中なのだから。おそらくは護衛だけでは終わらない。その後の魔族討伐へ繋がる可能性のある話を聞き逃す訳にはいかないのだ。アミス自身の考えでは、魔族討伐には参加するつもりだが、彼女、ロリア女王は参加するべきではないと思っている。いや、彼女が直接参加する理由はないと思えた。あくまでも、魔族と戦った経験と知識を会議で話すつもりなのだろうとアミスは予想していた。


 「やはり、ルイス殿下も討伐隊に参加するおつもりで?」

 「当然ですよ。その為に戦える者達を揃えてきましたので……」


 まるでアミス達が討伐に参加するのが確定しているような言い方だった。アミスもラス達もそれに気づき僅かに苦笑いを浮かべた。その時、初めてロリアの視線がルイス以外の者へと移る。流し見るような彼女の視線は一瞬だけアミスで止まる。本当にほんの一瞬だった。だが、彼女の表情はまったく変わらずにすぐにルイスへと戻っていった。


 「確かに頼りになりそうな方々のようですわね」


 ラスの表情が再び苦笑いへと変わった。

 一目見ただけで頼りになりそうな者が何人居ると言うのだろう。随分と適当な発言をする女王だとラスは思っていた。そんな性格の人物なのだろうかと、彼女の事を知っているというアミスへと視線を向けた。そして、僅かに目を丸める。ラスが見たアミスの顔が少し青ざめていたからだ。

 他の仲間達を見ると、仲間達もそんなアミスの顔色に気づいているらしく、戸惑った様子を見せていた。だが、不必要に口を開いて良い状況ではなく、心配しながらも様子を見ることしかできなかった。

 顔を青ざめさせているアミスは周りが見えない心境となっていた。

 先程、ロリアが発した言葉の意味に気づいてしまったからだ。


 (『ルイス殿下も』?)


 そう彼女は言った。

 『も』と……

 それは彼女も同じという意味。ロリアも魔族討伐に参加する意志があるということ表していた。

 その後の2人の会話の内容は冷静さを完全に失ったアミスの頭に入ってくることはなかった。





 ルイスとロリアの話し合いはすぐに終わった。

 ロリアとしては、旧知の中のルイスが同じ宿を利用していること知って挨拶をしにきただけだったらしい。互いの立場上会議中は不必要に親しく会話もできないだろうと思って、その前に少しでも話をしておこうしたのだ。

 解散後は宿内での護衛は本職の者達に任せてアミス達は各自の部屋に戻った。と、言っても男と女で分かれるだけ。だが、ローエンはアミス達と同室には居なかった。


 「やはり、我々とは立場が違うのですね……」


 右手で顎を摩りながらガラガルム司祭が呟く。


 「元々、前から雇われていたんだろうね」

 「前回のも戦力になる冒険者の見極めの為に同行したんだろうな」


 と、マーキスとラスが返す。

 最初から違和感があった。自然を装おうとはしていたが、実力も実績もある者も含めたあれだけの数の冒険者をいきなり仕切るのはやはり不自然だった。

 人に指示や命令をすることに慣れた身分の高い人物か、もしくは、余程の大物冒険者なのか。


 「ま、もう隠すつもりはないみたいだけどな」


 他の冒険者とは別の部屋が用意されている時点で特別な扱いを受けていることはわかる。


 「ただ、何者なのか……」


 と、考える仕草を見せるラスだったが、それより気になっているのはアミスのことだった。横目でその表情を確認するが、その表情を見る限り自分達の会話が耳に入ってる様子はない。悩み考え込んでるのは明らかだ。

 いつもなら遠慮せずに声をかけるラスだったが、それが躊躇われるほどにアミスの顔色は良くなかった。ふと、マーキスと視線が合った。マーキスは目配せてラスに声をかけるように促す。ラスはそんなマーキスを恨めしそうに軽く睨みつける。

 同じように心配しながらも、自分にキッカケ作りを任せることが狡いと思いながらも、それも当然なことだと納得するしかなかった。

 仲間としてアミスと旅をしているのはマーキスではなく自分なのだから……


 「おい……」


 意を決して声を出しかけた時に、まるでそれを止めるようなタイミングでコンコンとドアが叩かれた。

 顔を見合わせるラスとマーキス、ガラガルム。


 「どなたですか?」


 ガラガラムが落ち着いた声で訊ねる。一般的には凶暴な種族として知られるリザードマンとは思えないほどの優しい声だった。


 「……」


 躊躇いの気配が感じられる沈黙。

 

 「ロリアと申します……」


 そして、躊躇いを残したままの名乗りが聞こえてきた。そして、その名乗りに過剰に反応したのはアミス。ガタッと大きな音を立てながら椅子から立ち上がった。慌てて声を出そうとしたアミスをラスが右手で冷静に制した。

 そして、どんな対応も取れるように集中する。

 ロリアと名乗った者の声は先ほどルイスとやり取りをしている者とは違うものに聞こえたからだ。

 それは先程まで耳に入っていた落ち着き払い威厳を感じ取れた若い女王の声とは異なり、自信なさげで幼さが残ったものだった。

 ラスはマーキス、ガラガルム、アミスと順々に視線を流す。マーキスとガラガルムも警戒している様子だったが、アミスだけは逆に落ち着きを取り戻したように口元に笑みを浮かべていた。


 「ラス、大丈夫です」


 何が大丈夫なのか?

 ラスは戸惑いを見せたが、冷静さを失っていた先程までとは打って変わったアミスの表情に毒気を抜かれた気分だった。

 そんな2人を見て、ガラガルムが静かに扉の前に移動する。扉を開けて訪ねてきた者を向かい入れるつもりなのだろう。ラスも向かい入れることを止めるつもりはない。それでも無警戒というわけにもいかなければ、かと言って警戒心を強く見せ過ぎるのも相手の身分を考えれば良くないことだろう。

 だが、ラスは身分が高い者に良い印象を持っていない。ハーフエルフという特殊な種族生まれ故の差別的な扱いを沢山受けてきた。そんな差別的な視点は王族や貴族のような身分の高い者ほど強い傾向があり、故に、どうしても悪い感情の方が強くなってしまう。

 その感情が表に出過ぎて、相手を怒らせて痛い目を見たこともある。そういった経験により、不自然さを感じさせないレベルで警戒心を見せる事に慣れてきているラス。


 (今回も……)


 いつも通りやるだけ。幸いにも、直接のやりとりはガラガルム司祭と彼女と直接面識のあるアミスがすることになるだろう。

 自分はただ警戒するだけ……


 だが、事態はラスの思ってもいない流れへと進むことになる。予想できるわけもない流れへと……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ