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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
9・魔族討伐戦
155/155

かつての仲間と

登場人物紹介

☆アミス一行のメンバー

◎アミス・アルリア 16歳 男 ハーフエルフ

 物語の主人公

 複数の聖獣を使役する少年魔導士

 見た目は完全な美少女


◎ラス・アラーグェ 24歳 男 元ハーフエルフ

 魔法生物化された魔法剣士

 自分を魔法生物カさせた者を探している

 魔法生物化されてる者特有の高い魔力を持つ


◎タリサ・ハールマン 20歳 女

 元暗黒騎士団に所属していた女戦士

 クーデタにより国を追われてアミスの仲間になった

 アミスに対しては仲間意識より忠誠心の方が強い


◎リン・トウロン 19歳 女 シェイプチェンジャー

 白虎へと姿を変えることができるシェイプチェンジャーの戦士

 土系の精霊魔法も使う

 アミスのことが好き


◎ジーブル・フラム 17歳 女

 氷の神を信仰する女神官

 ある人物の命令によりアミスを守る為に仲間となったが、それを知っているのは仲間ではタリサのみ


◎サンクローゼ・セリシェル 22歳 男

 仲間からサンと呼ばれている盗賊職

 イケイケな性格なため、常に前戦で戦いたがる

 本人曰くスロースターターなために、戦いが長引くと強いが、そこにはアミス達にもまだ解析できない理由が……


★その他

◎ルイス・オイク・ベイダー 男

 ベイダー王国の第二王子で今回の依頼人

 魔族討伐会議への護衛を依頼している

 魔族討伐作戦への参加も予定している


◎ローエン 男

 魔族討伐隊の指揮を取るベテラン冒険者

 アミス達とは別にルイスから依頼を受けている

 ローエンという名は本名ではない


◎マーキス 男

 一時期、アミスとラスに同行していたエルフの精霊使い

 癒し力の聖獣を持つ


◎ガラガルム 男

 マーキスと共に旅をするリザードマンの司祭

 大柄で威圧感のある見た目とは異なり、温和で落ち着いた性格


◎ロリア・エリミナ 女

 エリミナ王国の若き女王

 アミスと面識あり


◎セラ・ルアンナ 女

 ロリアの側近の魔法戦士


◎ティラローア・クレイク 女

 ロリアの側近の神官戦士

 室内の光景を見て、タリサもリンもジーブルもすぐに反応できなかった。

 彼女達の目に映ったのは、先程ルイス王子を訪ねてきた時とは別人にしか見えない表情で、アミスに抱きついている女王の姿だった。抱きつかれたアミスは顔を真っ赤してどうすれば良いか分からずに慌てている様子。タリサ達3人は状況が飲み込めずに、既に室内に居たラス達は視線を移した。だが、ラスは引き攣った顔でどうすれば良いか悩んでいる様子だった。

 そんな状況下で動いたのは、タリサと一緒に室内に入ったセラだった。スタスタとアミスとロリアの2人の横まで移動すると、ペリっと音が出そうな勢いでアミスからロリアを引き剥がした。


 「気持ちはわかりますが、少し落ち着いてください」


 主君であるロリアに強めにそう言うと、赤い顔のまま目を丸くしているアミスへと視線を向けた。が、その前に立つ2人により、その視線は遮られる形となった。目の前に現れたのは、リンとジーブルの2人。アミスを庇うような体勢でロリアとセラを睨みつけていた。


 「私のアミスに何をする!」

 「リン、勝手に自分のものにしないでください」


 そんな2人のやり取りに、セラは思わず吹き出してしまいそう笑ってしまう。


 「あなた達に危害を加えるつもりはないので安心して欲しい……」


 笑みを消さずにセラはそう言うとロリアに目を移す。ロリアは不満そうな顔でセラとリン、ジーブルの3人の間で目を泳がせていた。その姿は王としての威厳をまったく感じさせない姿であり、セラも困ったような表情へと変化させていた。


 「とりあえず、落ち着いてくださいね」


 少し厳しめに再度そう言うと、ロリアも従うしかない様子だった。


 「事情を詳しく聞いても宜しいですかな?」


 場が落ち着きそうになったと見てガラガルムが事態の収拾の為に口を開いた。司祭の落ち着いた声によるその言葉により収拾に成功し、静かな話し合いがスタートすることとなる。


 (一行をまとめる為には、この落ち着いた雰囲気と話し方というのも大事なんだな。

 王族や貴族を相手にする時は特に……)


 ラスはふとそう思ったが、それは自分にはできないことだと実感させられていた。

 だが、それはアミスやジーブルがもう少し年齢を重ねてくれば、任せればいいことだと思う。

 自分も成長しなければならない。だが、多くを求めて自分を見失うわけにはいかない。それぞれの役目を全うするだけのことだと、自分達の目指す道を見つめ直すラスだった。




 アミスの冒険者として初仕事。その時に共に行動していたのがロリアとの縁だった。初仕事にしては過酷なものだと2人は語る。本来ならばそれに同行するはずのセラとティラローアとも別行動となり、その時にダークエルフの魔術師レンや、現グランデルト王国国王ゼオル・ラーガと出会った。

 大変な経験と共に得たものもあった。アミスは初契約となる2体の聖獣を手に入れ、ロリアは対魔族の切り札と成り得る魔法を身につけた。

 その後、ロリアは王女として国に戻る事になり、自分に仕えるようにアミスを誘った。だが、アミスは冒険者として旅を続けると言い、その場で別れた。いずれ再会することを誓い合って……


 大雑把な説明だった。全てを説明してないことは、アミスの仲間達には判る。きっと簡単に口に出すことが出来ない事があったのだろう。そして、アミスのことを理解している彼等は判っていた。おそらくはアミス達はその時に仲間を失ったのだろうと……


 「でも、あの時に一緒に居たのがゼオル王だったとは思いませんでしたけどね」


 話の自然な流れでロリアはそう言った。それに複雑そうな表情で反応を返すアミスやラス。ロリアもすぐにそれに気づき続けかけた言葉を止め、セラ達と顔を見合わせる。

 

 「ゼオル王……グランデルトの国王ですよね?」


 止まりかけた会話を続けるよう口を開いたのはマーキスだった。アミス達の微妙な表情に気づいていないわけではない。ただ、ここで会話が止まったら場が長い沈黙に包まれそうだと感じて、そうさせないよう敢えて口を挟んだのだ。

 そんなマーキスの考えに気づいたのか、ガラガルム司祭も言葉を放つ。


 「1年程前に即位したばかりの新しい王ですよね」

 「そうですね。即位したのは私と同じぐらいの時期ですわ」


 ロリアも敢えて話に乗ることにした。アミス達がゼオル王と何かあったのだろう事は、それを知らぬ者にも予測できる。それでも話を続けたのは、その()()がどれだけ深刻なことなのかを測るために……


 「冒険者として行動していたということか? その……ゼオル王は?」


 少し険しい表情で会話に交わるラス。


 「そうです。私達が受けた依頼を彼も別に受けていました。そして、一緒に行動したのです」

 「なるほど……」


 ラスは納得したような返事をしながらタリサを横目で見る。彼女は表情を変えた様子もなく黙って会話を聞いていた。思う事がないわけがないはずだ。それでもそれをまったく顔に出さない姿に、ラスは感心していた。そんな読み取れない表情に、かつて自分達が騙されていた事を思い出す。

 

 「そういえば、新しい聖獣は手に入れたのですか?」


 微妙な空気を感じ取ったのか、セラが話題を変えた。


 「はい、今では……7体の聖獣と契約しています」


 アミスはまだ卵状態から孵化しそうにないティスも数に含める。その数を聞き、ロリア達は素直に驚きの表情を見せる。たった一年半という短期間でそこまで増やしている事は訊ねたセラとしても予想外だった。精々、2体ぐらい増えているぐらいだろうと思っていた。自分達も聖獣を探しており、それらしい情報すら手に入れることができていない状況だったからだ。


 「これも才能なのかしら?」


 考えてみれば、初仕事となる迷宮探索で2体の聖獣と出会っている。その聖獣に関する才能が聖獣を引きつけているのかもしれないと思えた。

 だが、ロリア達は知らない。途中、3体の聖獣を失った上での現在の契約数だということを……。


 「あれ? そういえばティスは?」


 あのうるさいぐらいに元気いっぱいだった妖精の姿が見えないことに気づいたロリアは何気なく訪ねてしまった。

 瞬く間に曇るアミスの表情に、ロリアは触れてはいけない話題だということにすぐに気づいた。慌てるロリアに対してアミスは優しく笑みを浮かべた。


 「え?」


 戸惑うロリア。そんな彼女に対してアミスは、杖を手に取り……


 「ここに居ますよ」


 と、杖をロリアに見せる。

 目を丸くするロリアだったが、すぐにその意味に気づいた。杖に付いている契聖石の存在に……その意味に……

 だが詳しい事を訊ねることは出来なかった。先ほど見せたアミスの曇った表情と無理やり作り出した今の笑みを見てしまっては、訊ねることなんて出来るわけがなかった。


 「そう言えば、あの時の人物がゼオル王だってどうやって知ったんですか?」


 躊躇うロリアに気を遣い、今度はアミスが話題を変えた。それに対してロリアもホッとして返事を返す。


 「お互いに即位してすぐにグランデルトから使者が来たのです」

 「経済的な交流をしていると聞いている」


 と、言ったのはタリサ。アミスやラスが少し驚き気味に視線を向けたが、


 (情報だけは常に仕入れているということか……)


 ラスはすぐに納得する。


 「そうなんです。其々が足りない物を其々が持っていたので、互いに補おうという話になりました。それもあの時、一緒に仕事をした縁が生きたんだと思いますわ」


 グランデルト王国は王が代わり、国の方針も少し変化を見せていた。かつては積極的に他国へ侵攻していた。新王になってからも侵攻はしているが相手を一部に絞って、友好的な外交の方に多くシフトしているようだ。これもタリサが仕入れていた情報であり、アミス達もそのことは知識として持っていた。

 タリサがかつて仕えていた国の事が気になっているのは仕方ないことだと、アミス、ラス、リンは理解している。そして、その情報を隠さずに共有しようと教えてくれるのは、決して国に戻るつもりはないという自身の考えを示すためなのだろうことも理解できた。

 だが、どこまで国に未練がおるのかは判りようがない。そこまでは聞けはしない。聞けば未練はないと言うがしれない。だが、それが心の底からの返答なのか知りようがない。だからラスも敢えて訊ねない。既にタリサに信頼を寄せていたとしても、それは聞くべきではないと思っているのだから。

 常に冷静で滅多に表情を崩さないタリサ。頼りになる面でもあるが、逆にそれはアミス達を不安にさせる。無理しているのではないかと心配してしまう。


 「そう言えば……」


 滅多に崩れない表情。それはロリアの何気ない言葉に崩れることになる。


 「今回の会議に使者を派遣するとゼオル王も言ってましたよ」


 目を見開くタリサ。

 この一年の旅で、グランデルト王国から随分と離れた国まで来ていた。情報は仕入れてはいたが、関わる事はもうないだろうと思っていた。だが、ロリアのによって伝えられた情報は、アミス、タリサ達とグランデルト王国との縁が簡単には切れないものなのだと、思わせる情報だった。

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