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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
9・魔族討伐戦
148/150

認められし才能、誇りし才能

登場人物紹介

☆アミス一行のメンバー

◎アミス・アルリア 16歳 男 ハーフエルフ

 物語の主人公

 複数の聖獣を使役する少年魔導士

 見た目は完全な美少女


◎ラス・アラーグェ 24歳 男 元ハーフエルフ

 魔法生物化された魔法剣士

 自分を魔法生物カさせた者を探している

 魔法生物化されてる者特有の高い魔力を持つ


◎タリサ・ハールマン 20歳 女

 元暗黒騎士団に所属していた女戦士

 クーデタにより国を追われてアミスの仲間になった

 アミスに対しては仲間意識より忠誠心の方が強い


◎リン・トウロン 19歳 女 シェイプチェンジャー

 白虎へと姿を変えることができるシェイプチェンジャーの戦士

 土系の精霊魔法も使う

 アミスのことが好き


◎ジーブル・フラム 17歳 女

 氷の神を信仰する女神官

 ある人物の命令によりアミスを守る為に仲間となったが、それを知っているのは仲間ではタリサのみ


◎サンクローゼ・セリシェル 22歳 男

 仲間からサンと呼ばれている盗賊職

 イケイケな性格なため、常に前戦で戦いたがる

 本人曰くスロースターターなために、戦いが長引くと強いが、そこにはアミスにもまだ解析できない理由が……


★他の冒険者

◎ローエン 男

 魔族討伐隊の指揮を取るベテラン冒険者


◎マーキス 男

 一時期、アミスとラスに同行していたエルフの精霊使い

 癒し力の聖獣を持つ


◎ガラガルム 男

 マーキスと共に旅をするリザードマンの司祭

 大柄で威圧感のある見た目とは異なり、温和で落ち着いた性格

 「何故、撤退したのですか?」


 全員が集合してすぐに問いの言葉を投げかけてきたのは、レンシと言う名の獣人型の女魔族だった。


 (またか……)


 問われた上級魔族ケンチュウは小さな溜息吐きながら、レンシへと視線を向ける。彼女は最近、部下として彼の元に派遣されてきたのだが、小さな疑問も放っておけない性分のようでこの短い期間の間に多くの質問があり、ケンチュウは正直嫌気をさしていた。

 それでもそれは慎重さ故の質問であり、その性格が慎重派魔族と呼ばれている自分の下に合うと判断されて派遣されたことは理解できた為、我慢していた。


 「あのまま、続けた方が良かったと思うか?」

 「……」


 逆にそう問われて彼女は考える。


 「いえ、そういう訳ではないですが、あまりに判断が早いと思いまして……」


 ケンチュウの指示に不満があるわけではななかった。ただ、早過ぎる判断に思えたことへの疑問をもっただけなのだ。個人的に判断する材料が少なく感じただけだった。


 「お前の慎重すぎる思考を悪いとは言わない。だが、それで行動が遅れるのは良いことではない」


 まだ短い付き合いであったが、彼女のことはある程度判るようになっていた。多少苛立つことはあっても、その慎重さはケンチュウにとって評価できることなのだ。だからこそ、質問を無視することはしなければ、ただ、素直に答えを返すこともしない。自分で考えさせ、その上でこちらの考えも述べるようにしていた。


 「それほどの相手だと?」

 「その可能性が高いと感じた。数人だがやっかいそうなのがいた……」

 「数人……ですか……」


 レンシにも判る相手は2人いた。

 まずは完全に気配を消して放ったはずの不意打ち攻撃に気づいた女戦士。そして、その言葉に反応して攻撃を防ぎきった聖獣を呼び出したハーフエルフの魔導士。

 この2人は明らかにやっかいな相手だと思えた。


 「ハーフエルフの魔導士、黒髪の女戦士、獣人の女戦士、最後にハルバードを呼び出した中年戦士、あと、指揮をしていたハーフエルフも警戒するべき対象だろうな」


 彼女が考えていたことが何かわかってか、ケンチュウが警戒するべき相手を並べる。


 「他にも特殊な能力ややっかいな聖獣を持っている奴がいるかも知れないが、現状では判断できる相手はこんなものだな」

 「では、やはり撤退は早過ぎたのでは?」


 自分達を討伐にきた人間達を実力を測り、納得できる実力者をある人物の前に行くように仕向けるのが自分達の役目。だからこそもっと好戦を続けるべきだったというのがレンシの考えだった。


 「いや、あの方の目にかなうだろう実力者が居るとわかっただけで充分な収穫だ。それに……」


 ケンチュウは言葉を止めた。その先は言うべきことではないと判断したからだ。


 「ケンチュウ様?」


 レンシは言葉を止めた理由が判っていなかった。故に先の言葉を求めようとしたが、そんな彼の目つきが鋭いものへと変わっていることに気づき、それ以上の追求を止める。


 ケンチュウが即撤退を判断した1番の理由(わけ)は、戦闘を続けていればこちらにも被害が出ると思ったからだ。ケンチュウは同族を大事にする魔族だった。その考えは魔族達より、寧ろ人間の考え方に近いものだった。故に犠牲者が出ないように撤退を選んだ。1つのミスでこちらの命を奪える攻撃力を持っていると判断してのこと。

 だが、これを部下達の前で言う訳にはいかない。理解力の高いレンシだけであれば問題なかったかもしれないが、部下達の全てが敵である人間達に理解があるわけではない。多くの魔族と同様に、高過ぎるプライドを持ち、他種族を格下と見下したいる者もいる。

 そんな者達の前で殺られるかもしれないなんて言える訳がないのだ。


 (この辺りも察してくれるようになれば、我が側近になれるのだがな……)


 ケンチュウは鋭かった目つきを緩め、レンシを横目にそんな事を考えていた。





 一方、魔族達に逃げられたかたちとなったアミス達魔族討伐隊の一行は、撤退した魔族達の行動に疑問を持ちながら捜索を続けていた。

 だが、ローエンにはすぐに解った。

 既に魔族達が森からいなくなっていることを。

 それでも何か痕跡を求めて探索を続けて、そして、魔族達が南西方面へと立ち去ったという予想に行きついた。

 多くの魔族と関わってきた経験豊富なローエンでも魔族の目的、そして、思惑を理解しかねていた。

 こちらの強さを感じ取ったのだろうか?

 いや、そうだったとしても即撤退は、ローエンが知る魔族の性質状ありえないことに思えた。

 ラスやマーキス、ガラガルム司祭も今回の魔族の行動は不可思議に思えていた。


 「答は出たのか?」


 ローエンにそう訊ねたのはラスだった。ローエンが今回の魔族の行動の理由を測りかねていることをラスは感じ取っていた。故にローエンの思考の邪魔をしないように待っていたが、1人では答が出そうに無いと判断してキッカケ作りの為に声をかけたのだ。


 「いや、全然わからんよ……」


 ローエンは素直に答える。正直、予想外のことが多過ぎて少し混乱気味になっていた。

 複数の上級魔族が相手なのだから、簡単な依頼ではないことはわかっていた。だがそれでも、今回は戦力的に充分なメンツが揃っていると感じていた為、自分の経験を活かせば対応は可能だと思っていた。

 いざという時の為の切り札も複数用意してある。油断、過信をしなければどうにでもなるはずだった。

 だが、そうではなかった。

 充分な準備をし、自身の索敵能力により魔族側の見張りの裏をついたはずだった。だが、相手の奇襲を許した。魔族に自分の対応の上を行かれた。それに関しては悔しくも納得するしかなかった。魔族にも自分の知らない能力者はまだまだ存在しているだろう。だが、彼にとっての問題はそこではなかった。まだ20歳そこそこの若い冒険者が自分が対応できなかったことをやってのけた。

 有能な仲間の存在は頼りになる。それ自体は悪い事ではない。だが、今回の仕事の中心は自分だとローエンは思っていた。自分が指示して周りを動かす。自分の経験がモノを言う仕事であるはずだった。

 だが、相手の攻撃にいち早く気付いたのも、攻撃を防いだのも、そして、素早く指示を出し混乱しかけた体制を整えたのも、ローエンではなかった。

 そして、魔族が見せた自分の理解外の行動。

 今までの経験が……

 自分が誇れるはずの経験という武器が、全て否定された気分だった。


 「落ち込む必要はない……」


 ラスからかけられた言葉は、それも予想外のものだった。


 「あいつらは普通ではない。俺もそれなりの力を持っているつもりだったが、あいつらに出会ってから自信がなくなることばかりだよ」


 呆れ顔でそう話すラス。それは彼にとって本心なのだろうことはわかった。だが、ローエンから見ればラスも普通ではない存在に思えた。

 ローエンは魔法に関しては専門ではない為、ハッキリした知識や技能からのものではなかったが、ラスがその身に帯びている魔力の高さは普通じゃないということは感じ取っていた。だが、それ以上に驚かされたのは物怖じしない指揮能力。それをやるつもりでいたローエンですら指揮の対象にされてしまった。


 「今まで何と戦ってきたのだ?」


 自然とローエンの口から出た疑問。それに対して、ラスは静かに返す。


 「ありえない相手とばかりだったよ……。よく生き残ってこれたと、今でも不思議に思うほどのな」


 そんなラスの言葉を聞き、考えるローエン。

 自分も多くの経験をしてきた。ラスが口に出した『よく生き残った』という気持ちはあった。だが、ラスが言う()()と自分が思ってきた()()とでは、大きな違いがあることに気づいた。

 目の前に居る若者達は、それを自分達の力によって切り抜けてきたのだ。だが、自分は違っていることに気づいてしまった。

 

 (俺は普通ではない先輩達に守ってもらっただけだ……)


 経験による自信が崩れていく気がした。それでも彼は踏み止まる。今までの経験によって……


 「そうだ……まだ俺にはこれがある……」


 小さな呟き。それはラスにしか聞こえていない。その呟きとともにハルバードを握る右手に力が入っていることにラスは気づき、静かに笑みを浮かべる。

 ローエンにとっての1番はそのハルバードを使った戦闘能力なのだと理解しての笑みだった。

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