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アミス伝 ~聖獣使いの少年~  作者: 樹 つかさ
9・魔族討伐戦
147/150

魔族の慎重さ

登場人物紹介

☆アミス一行のメンバー

◎アミス・アルリア 16歳 男 ハーフエルフ

 物語の主人公

 複数の聖獣を使役する少年魔導士

 見た目は完全な美少女


◎ラス・アラーグェ 24歳 男 元ハーフエルフ

 魔法生物化された魔法剣士

 自分を魔法生物カさせた者を探している

 魔法生物化されてる者特有の高い魔力を持つ


◎タリサ・ハールマン 20歳 女

 元暗黒騎士団に所属していた女戦士

 クーデタにより国を追われてアミスの仲間になった

 アミスに対しては仲間意識より忠誠心の方が強い


◎リン・トウロン 19歳 女 シェイプチェンジャー

 白虎へと姿を変えることができるシェイプチェンジャーの戦士

 土系の精霊魔法も使う

 アミスのことが好き


◎ジーブル・フラム 17歳 女

 氷の神を信仰する女神官

 ある人物の命令によりアミスを守る為に仲間となったが、それを知っているのは仲間ではタリサのみ


◎サンクローゼ・セリシェル 22歳 男

 仲間からサンと呼ばれている盗賊職

 イケイケな性格なため、常に前戦で戦いたがる

 本人曰くスロースターターなために、戦いが長引くと強いが、そこにはアミスにもまだ解析できない理由が……


★他の冒険者

◎ローエン 男

 魔族討伐隊の指揮を取るベテラン冒険者


◎マーキス 男

 一時期、アミスとラスに同行していたエルフの精霊使い

 癒し力の聖獣を持つ


◎ガラガルム 男

 マーキスと共に旅をするリザードマンの司祭

 大柄で威圧感のある見た目とは異なり、温和で落ち着いた性格

 面白い。

 目の前にいる者達は、楽しめる相手だと認識することができた。

 そんな相手を求め、高レベルの冒険者が集うと評判の地域で人間達を刺激する行動を取ってきた。正直言って、自分を満足させる存在など本当に現れるなんて思ってもいなかったため、半ば諦めの入った退屈さを感じていた。

 だが、今、期待以上の相手が目の前にいる。

 何としても、あの場所に来てもらわなければならない。あの方々を満足させる相手をあの方々の前に連れて行くこと。それが自分の仕事なのだ。

 達成できるはずのない仕事を請け負うこととなり、ずっと気分は沈んでいた。ずっと底辺の位置にあったテンションが、自分でも異常と思えるほどに上がっていっていくのがわかった。

 一瞬、自分の手で倒してみるのも面白いかもしれないと思いもしたが、少なくも全滅させるのは得策ではない。いや、自分達だけでやるのは厳しい相手だとわかる。自分達だけで全滅させることができるならあの方々を満足させる存在ではないということだ。


 「だが、少しなら……」


 目の前にいる獲物達にも、後ろに控える部下達にも聞こえないような小さな声で呟く。相手をその気にさせるために、1人か2人ぐらいは殺してしまって良いだろう。

 そう決めると獲物を吟味しだした。

 誰なら殺しても問題ないかを……

 逆に殺してはダメなのは誰かを……


 この中でも絶対に殺してはならない相手と思えるハーフエルフの魔導士をジッと観察しながら考えるのだった。




 互いの思考により一時的な膠着した状況を動かしたのはアミスだった。相手の能力が判らないのだから、防戦に回るのは不利と判断してのこと。基本的にラスから特別な指示がない限りは、アミスは自らの考えでの行動が許されていた。それは魔導士ならではの思考と汎用性があるからであり、それらの能力を活かす術をアミスが持っていると仲間から認められているからだ。

 戦闘経験の豊富なタリサから見ても、アミスの戦闘センスは目を見張るものがあった。冒険者歴が2年にも満たない者とは思えないほどであり、その前にどれだけの指導を受けてきたのか、彼女にも想像が付かない。

 今のアミスの強みは、複数の聖獣を同時使役することにより複数のことを同時にできることだ。

 アミスは防御面の強化したまま攻撃に出た。殺傷力、威力より攻撃範囲の広さを優先にした風の刃による攻撃だった。

 その刃により倒せる相手ではないことはアミスに判っている。ダメージすらまともに与えれるとも思っていない。ただ、相手の能力を少しでも知るきっかけになればという思いの牽制の意味が強い。実際、4体の魔族が攻撃の範囲に居たが誰1人としてダメージを受けた様子はない。各々が夫々の対応により風の刃を防いでいた。

 アミスは冷静に観察しながら次なる攻撃に出る。攻撃役を任されたタリサ達もそれに合わせて動く。

 既に高い連携を取ることができるようになっているタリサとリンは自然に動けている。だが、アミスの支援の形を知らないローエンは僅かに思考するタイムロスがあった。


 「ローエン、好きに動いて大丈夫だ! アミスを信じてやれ!」

 「!!」


 凄い信頼感だとローエンは思った。

 アミスの年齢を考えれば、その信頼度は異常とも思えた。それはただの連携訓練だけでは行き着けないレベルだった。

 どれだけの実戦の修羅場を共に乗り越えてきたのだろうか?

 強い興味を持ったが、今はそれに気を取られているほどの余裕はない。ローエンは難しく考えるのをやめることにした。ラスの言葉を信じることに、アミスの実力を信頼することに決めたのだ。

 敢えてローエン側からアミスに合わすことを止め、共に攻撃に出ているタリサ、リンとの連携を意識する。そうすればアミスが援護してくれることを信じて……


 (白翼天女の防御結界があるだけでも、充分に助かっているがな……)


 攻撃魔法や飛び道具から守ってもらえるだけでも充分な援護だった。ローエンには、近接戦闘に意識を集中できさえすれば上級魔族にも引けをとらないという自負があるからだ。

 ローエンはシフトチェンジすることにした。戦ってみてより攻撃的に行くべきだと感じたからだ。

 右手持っていた短戟を近くの魔族へと投げつけて魔族との間合いを広げると、左手の盾を右の一の腕に装着しながら短い呪文の詠唱を唱えた。

 その呪文により呼び出された武器がローエンの両手に納まる。ローエンがより攻撃的に出る時用の武器であるハルバードだった。

 斬る、突く、叩く、引っ掛ける等複数の用途に使える上に、その重量と長物故の遠心力により高い威力にも期待できる。だが、その重さ故に高い身体能力と技量を求められる武器だった。

 

 「マジか……」


 そんな言葉がラスの口から漏れる。

 ラスはローエンが最初に手に持っていた短戟と盾という装備が本来のメインウエポンでないということが、彼から感じられる雰囲気に似つかわしくないことから予想は出来ていた。故に別の武器を持っているのではと思ってはいたが、それでもハルバードは予想外であった。

 そう思ったのはラスだけではなかったようだった。


 「下がれ!」


 1人の魔族の指示により、魔族達はローエン達から間合いを空けた。攻撃に出ようとしていたローエンだったが、間合いを広がられたことにより動きを止める。


 (随分と慎重だな……)


 ラスもタリサもそう感じた。

 指示を出した親玉らしき魔族は感じ取ったのだ。ハルバードの攻撃が自分達に通じるものだということを……

 

 (あの魔族はこちらの力を認めてるということか……)


 一切油断を見せないその魔族の姿にラスはやり難さを感じていた。戦闘能力に優れた魔族に対して1番の対処方法は、優れている故の油断に付け込むことだからだ。少なくともこれまで戦ってきた魔族の時はそう対処してきた。今まで戦った中にも慎重な魔族はいたが、結局はどこか人間達を下に見ている故の油断を見せてくれた。

 だが、目の前にいる今回の魔族(相手)はそういった面を感じられなかった。

 ラスは考える。

 どう戦うかを……


 (前衛役が足りないかもしれないな……)


 守り主体でいるだけなら問題はない。だが、攻勢に出る時に直接攻撃の頭数が足りないと感じていた。

 今までの動きを見る限り、タリサ、リン、ローエンの3人以外は攻撃役に回せないと思っている。それは自分も含めてのこと。そして、相手の慎重さによりこちらの切り札も使うタイミングが難しい。手に入れたばかりの一撃必殺の聖獣もキメるのは困難だろう。


 1つのミスが命取りになる。

 その思いが今まで以上に強く感じられていた。

 迷うラス。

 だが、その迷いの結論を出す前に戦いは終わりを迎える。それは一瞬のこと。急に周囲の木々がざわめき出す。魔族達が何かをしたようには思えなかった。だが、そのざわめきにより周囲に気を取られた僅かな間に、目の前にいた魔族達は消え去っていた。それはあまりに自然であり、動きの気配も感じられなかった。最初から何か存在しなかったかのように、ただの自然な木々達が残っただけだった。

 その状況をすぐに理解できる者は誰も居なかった。

 魔族との戦闘経験豊富なベテラン・ローエンであっても理解できなかったのだ。

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