ウズノフミ
ウズノフミはある噂を耳にして、道路を徒歩で歩いていた。車など通るはずもない荒れた舗装。
たまに放置された粗大ゴミや──人骨。
かなり昔に人がいた痕跡はあれど人っ子一人いない。漂うのはモッタリとした重々しい空気。
どこからか怪鳥の鳴き声がし、ガサガサと野山の草薮を獣が移動する音がした。
それだけだ。
ウズノフミという人物は異類という人でない種族だった。彼女は化けるのが上手く、ある人間に化けて一週間前、異類を敵視している政府機関にテロを起こして逃げてきた。その人間は先程逮捕されどうなったかは分からない。
とにもかくにもその際にひどい傷を腕におい、痛みに耐えながらも人が生活できない場所まで逃亡してきたのだ。
紆余曲折あってこの異類しか居ない土地までこれた。潜伏先となる建物か何かを探さなければならない。
──が、異類しかいないという噂は本当である。
集落の痕跡しかない。井戸や建物の基礎しか残っておらず、迷い込んだ人の遺体や追突した車がたまにあるだけ。
重だるい空気。奇妙な植物。奇っ怪な野生動物。
異類ではあっても瘴気を放つ邪悪な存在がいると、滞在するウズノフミにも危険が及ぶ。
噂は所詮噂か?
(いや、ワシはそれに望みをかけてきた。諦める訳にはいかん)
あの山の峠を超えれば、また何か変わるかもしれない。
「おい、アンタ。死ぬ気か?」
通りかかったトラックの主がこちらに話しかけてきた。
「ここの異類は特段やべぇヤツだ。早くしないと死ぬぞ」
「それは…知らなかった」
「乗ってきな。道の駅まで連れてってやるよ」




