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岩戸竜馬は返らない。  作者: てんたくろー


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14/29

14/よりによって、なんでこんなところに。

 岩戸くんの、おそらくは仕事関係の人だろう竜宮院さんとやらが学校にまで来るなんて。

 信じられない事態に私は、美山一葉はますます膨らむ違和感を無視できなくなってきていた。


 何をしているんだろう、私は。西校カルテットなんていって持て囃されて、またわけの分からない暴力事件なんて勢いのままに首を突っ込んで。

 本当にしたいこと、見ていたい人は遠のくばかりなのに。会椿さんだけじゃない、あんなに綺麗な人まで纏わりついてるのに。


「竜宮院さんのことは驚いたけど……俺達は俺達の使命と正義を果たすぞ。一年達から事情を聞きに行こう」

「おう!」

「ま、やるだけやってやりましょう」

「…………うん」


 如月くんが、中村が、千里がいつもみたいに意気軒昂に調査に乗り出そうとしている。けれど私はやはりテンションが上がらないまま、遅れてうなずくしかない。

 放課後、人気の少なくなった教室。今日から例の暴力事件について私達カルテットは動き出すのだ。それを多くの学生達が望んでいるし、これまでも私達が解決してきた。


 だから行くわけなんだけど……やっぱり気分が乗らないのは、岩戸くんと竜宮院さんのことが頭から離れないならだろう。

 最初に竜宮院さんが挨拶してきて以後、彼女はこのクラスを離れて校内の視察に行ったから二人が話すことはなかったけど、それでも親しげに話していた姿はクラスメイト達みんなの格好のゴシップだった。


『岩戸のやつ、あんな美人とどこで知り合ったんだ……』

『仕事の縁? とかって話だけどよ。政府の調査員とかって人と関わるバイトってなんだよ』

『会椿さんカワイソー』

『美人に挟まれてハーレム気取ってるのかな。見てくれからしてオタクっぽいもんね、アイツ。きゃはは!』


 いつも賛否両論って感じの岩戸くんだけど、今回ばかりは否定的な声が目立っていた。クラスに馴染むことなく目立ち続ける振る舞いをする彼に、会椿さんばかりか竜宮院さんなんてすごい美人が傍にいるのだ。

 男子のやっかみもあれば、女子の偏見もある。本人はまるで意に介していないけど、傍から見ていただけの私でもかなり気分が悪い光景だった。


「聞いた話だと最初の事件は二週間前。1年2組そばの廊下で放課後、一人で歩いていた一年生の男子生徒が後ろから襲われて殴られたらしい」

「ああ、聞いてるぜ。強盗が被るようなフルフェイスマスクを着けてたから誰かまでは分からなかったけど、少なくとも男だったって話なんだろ」

「そうだね。でもそこから数日後、今度は体育館に向かう通路で昼、一年の女子生徒が何者かに突き飛ばされる事件が起きた。その時もフルフェイスマスクだったそうだけど、女子の格好だったみたいなんだ」

「そこから数日おきに男女問わず、フルフェイスマスクの暴漢に襲われて怪我をする事件が起きているわけね……グループでの犯行でしょうけど、一体何が目的なのやら」


 教室を出て一年の校舎に向かう道すがら、如月くん達が事件について話し合っている。ここ最近、少しずつ話題になっていた事件だから、本格調査する前でも概要くらいはみんな知っていることだ。

 男女問わない無差別的通り魔事件と言い換えられるかもしれない。ことを起こした後に物色したりさらなる乱暴に及んだ形跡もない、シンプルに奇襲的に一撃入れて逃げ去っていく犯行がここのところ、一年生の間で起きている事件だった。


 千里の言うように、複数人によるグループでの犯行だとは思う。示し合わせたように一定間隔で、校内に限っての事件。今のところ一年生しか被害者が出てないから、そこにも何かしらヒントはあるのかも。

 でも、そんなことをわざわざ、フルフェイスマスクなんてものさえ用意して行う意図が見えてこないのが正直なところ、不気味だった。金や身体目当てじゃない、純粋な害意ばかりが見て取れるのははっきり言って普通じゃない。


「犯人達の目的も調べたいところだけど、しばらくは実際に被害に遭った人達から経緯を聞いてみよう。そこに何かしらの共通点があれば、それが突破口になるかもだ」

「今のところは警察沙汰にもしてないんだよな、うちの学校。相変わらず隠蔽的というか、まあ怪我っても軽い打撲とかばっかりだし、ことを荒立てたくないってのはあるんだろうけどよ」

「だから先生達も私達に期待してるところがあるんでしょ。本格的にまずいことになる前に、カルテットが内々で解決してくれればーって。大人として教師としてどうかって感じだけど、まあそれがなくても生徒達からも期待されてるしね」

「そうだな……と、うん? 誰かいるな、あれは」


 今後の予定を立てながら角を曲がって、一年の校舎へと辿り着く。するとそこに人影があって、私達は立ち止まった。

 二人いる。片方は私もよく知る人……クラスメイトだ。背が少し高くて、やる気なさげな、でも誰よりも強くて頼りになる男の子。

 そしてその傍にいるのは、今日初めて名前を知った美人すぎる女の人。


「岩戸くん……?」

「竜宮院さん? それに岩戸まで……何、してるんだ?」


 岩戸竜馬くんと竜宮院みつきさん。

 思わぬところで、思わぬ時間に二人は佇んでいた。

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