第5話 詠唱って本当に必要なのか?
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俺とリクは2歳になった。
年が経つのは早いもので、1歳のときからあっという間に時間が過ぎていった。
まだ生まれて数ヶ月の頃に父さんと母さんに魔術《飛翔》を見られたあれ以来、弟以外には魔術を見せたことがない。
変に期待でもされたら自由に魔術を楽しめないからな。
ただまぁ1歳の誕生日に来た、俺専属のメイドのリリア。1年過ごしてみて、まだ謎が多い。
それは置いといて、今日もいつも通り荒野へとやってきている。
「さて、今日は昨日の続きだな。えっと〜確か昨日は攻撃系炎系統魔術の《大火炎球》の練習をしてたんだっけな」
俺は手を高く上げ、詠唱を唱える。
「炎よ、炎よ。我の呼びかけに応えろ。すべてを飲み込む灼熱の炎球となり、眼前の敵を灰燼へと帰せ。《大火炎球》」
詠唱を唱え終えると俺の頭上には大きな炎の球が浮かんだ。
「おっと、これを制御するのは流石にまだ体が追いつかないな。というか今更だけど、詠唱って本当に必要なのか?」
俺はふと考えてしまった。詠唱を唱える時間で相手に攻撃されて、魔術を発動できなければ意味がないということを。
俺は大火炎球をとりあえず放って、詠唱なしでの発動をしてみようとする。
「魔術にはイメージが1番大事って前世の学校で習ったからな。詠唱したとしてもイメージがしっかりできていなかったら魔術は発動しない。ということは、イメージをしっかり持てさえすれば詠唱はいらないはず」
俺は心の中で大きな大きな炎の球をイメージした。
そして、そのイメージを持ったまま、
「大火炎球!」
俺がそう唱えた途端、先ほどよりも大きい炎の球が出てきた。
「ハハ、できちまった。それに、俺のイメージが大きすぎたのか、さっきよりも大きいぞ!これは面白い。同じ魔術でもこうも大きさが変わるなんて……ということはだ、イメージ次第では炎の形も変えることだって可能……?」
俺は一旦その大火炎球を荒野へと放った後、座り込んで考える。
「さらにだ、詠唱なしで魔術が撃てるということは詠唱の意味は?なぜ無駄に長いを毎回読む必要がある?イメージするための補助?本当にそれだけなのか……?謎だ。実に興味深いな!これだから魔術はおもしろい!実際に試さないと分からないことが多いな!」
前世は魔術を使えず、試すなんてできなかった。
今世は魔術が撃てる、自分1人で研究ができる。最高だな。
俺は家へと帰ってきた。
「おかえりなさいませ、ソラ様。」
出迎えてくれたのは専属メイドのリリアだ。
「やぁリリア、ただいま。」
昔、俺が1歳になった時に来た専属メイドだ。来たばっかりのころはずっと散歩に付いてきていたが、いつの間にかついてこなくなった。
俺としては撒く手間が省けて嬉しい限りだ。
「少し服が汚れていますね、顔にも砂埃が……お風呂に入りますか?」
「あぁ、少し散歩中に転んでしまってね。怪我はないから安心してよ。お風呂には入ろうかな」
リリアは俺の細かい変化によく気づく。魔術を研究してるなんてバレないようにしないと。
「では、すぐに準備をして参りますので、手洗い、うがいをしてお待ちください。」
そう言ってリリアは急いでお風呂場のある方向に歩いていった。
数日後。
俺は詠唱について1つの仮説が浮かんでいた。
「待て、待て待て待て……いや、そうだとしたらだ……これはとんでもないことだぞ。うん、ダメだこの考えはやめよう……だが、この考えでないとしっくりこない。いやこの考え以外あり得ない……」
昨日まで俺は詠唱をイメージの補助の役割だと考えていた。ただ、それだけなら別にあんなにも長い詠唱の必要性がない。例えば俺が詠唱なしで発動した《大火炎球》なんかは、大きな炎の球とでもいいながら発動したら済む話だ。第一、俺はそんなイメージを心の中でしていたらできた。それが証拠だ。
ならばなぜ、詠唱は存在する?
というか、今までの魔術師たちは誰も疑問に思わなかったのか?
何百年、何千年も使われてきた詠唱を。
もしも最初から誰かが詠唱という形を人類に覚えさせたとしたら……?
そして、俺が辿り着いた仮説とは……
「詠唱は人類の強化するためじゃなく……弱くするために存在している……?」
俺はその考えを振り払おうとした。だけど、一度生まれた仮説は俺の頭の中から消えることはなかった。
一体誰が、何のために……
「詠唱があることで得するやつは……?」
そんなことを考えながら俺は眠りについた。




