第11話 アルディア王立貴族学院入学試験③
◆◆◆◆◆
「それでは、2組目、実技試験スタート!」
先生の合図とともに、天幕内に瞬間転移され、試験が開始された。
「まぁぼちぼち倒しながら、ある程度生き残ったらやられよう」
周りは魔術が飛び交う。それを躱すことは普通の人ならなかなか大変だろう。流れ弾が当たる可能性もある。
「詠唱はしたふりでいいか」
俺は口パクで詠唱を唱えたふりをしながら、下級魔術の火球をたまに撃つ。
みんなの戦闘音で周りからは詠唱をしていないということがバレない。
10分ほど経ち、あたりの人がある程度少なくなってきた頃に、俺は一瞬だけ視線を感じた。
遥か上空、雲の上から俺ら受験生を見ている何者かが2人いる。
少し嫌な予感がしたので、俺はリクに念話をする。
(おーい、リク。お前も感じたかもしれんが、雲の上からこっちを見てる奴が2人いる。あとで合流するから先に行っててくれるか?)
(急に頭に直接話しかけてくるな!まぁ、嫌な予感がするからな。先行ってるから、あとでちゃんとこいよ)
(ごめんて、リク任せたぞ。)
(OK、ソラ。)
まぁリクが対処したらとりあえずは大丈夫だと思うが、空中戦だからいつもよりも戦いにくいだろう。
少し早めに行ってやるか。
◆◆◆◆◆ ソラから念話がかかってきたころ。
結構高いところにいるんだな。まぁいいか。
「《闘気解放・緑》」
自身のジャンプ力を強化し、一気に空へと飛んだ。
「《飛翔》」
ジャンプの勢いが落ちてきた頃に飛翔で空を飛び、視線の先を目指す。
雲を突き抜け、遥か上空へとやってきたとき、黒い装束を纏った2人組がそこにいた。
「てめぇらか、俺らを見てたのは」
「おやおやお〜や。君は、1組目の1位だった子ではないですか!」
「おいてめー!バレてるやん!隠匿魔術でバレないんじゃなかったのかよ!」
「いやはや、さきほどくしゃみをしたその一瞬だけ隠匿魔術が解除されてしまったのでしょう。ですが、その一瞬だけで分かるとはなかなかですね」
少し小柄な方が魔術師で、大柄な方が武術家だと会話から分かる。
「で、あんたら誰なの?何で俺ら受験生を見てるわけ?」
「それを素直に教えるとでも?」
「だれがオメェみてぇなガキに教えるかよバーカ!」
「まぁいいや、力ずくでも聞き出してやるよ。《闘気解放・赤》、《闘気解放・青》」
自身の攻撃力、移動速度を強化。
「ほう、武術ですか。空中戦はあまり得意ではないはず。それに、1対2ですよ?無謀ですね。」
「無謀かどうかは戦えば分かるさ。空界流《抜刀・五月雨》」
俺は五月雨という刀を取り出し、構える。
「一丁前に構えてるけどなぁ、俺らには勝てねぇぞ!」
「ふぅ、閃光流《一閃》」
光の速度で相手に一太刀を浴びせる。
「グハァ!速い……見えなかったぞ。」
「油断しすぎですよ。」
「まだまだぁ!《五月雨・千雨》」
俺は2人の間に入り込み、辺りに1000の斬撃を浴びせた。
「っとっとっと。危ないですね。14回だけ少しかすりましたね。」
「痛ぇ!何だこの斬撃は……傷が塞がらねぇぞ」
「五月雨の刀の効果さ。こいつの攻撃で付けられた傷はすぐには治らない。まぁせいぜいのたうちまわれ」
「ですが、このぐらいのかすり傷なんてことありませんね。では、そろそろ反撃といきますかね。《黒天》」
「無詠唱!?」
辺り一面が一気に暗くなる。何も見えない。
「《暗黒滅打》」
「ゴハァ!」
俺は腹を殴られた。その攻撃は重く、肋の骨が1、2本は折れたかもしれない。
「大したことないですね、《黒星》」
1人の魔術師が魔術を放った、そのとき、
「防御系魔術《絶対防御》」
後ろからソラの声が聞こえた。
「間に合ったかな?リクお疲れ様、空中戦だったけどよく頑張ったね。あとは任せて」
「ソラ!」
「おやおや君は誰ですかな?」
「こいつの双子の兄のソラだよ。よーく覚えとけ、お前らを倒す名だ。」
◆◆◆◆◆ リクが2人の黒装束と戦っている頃。ソラは……
ざっと見た感じ、あと30人ぐらいってところか。
そろそろ脱落して、リクの加勢に行くかな。
お、ちょうどいいところに水球が飛んできた。当たるかー
「うわぁ!攻撃くらったぁ。」
わざとらしい演技と共に、俺は天幕外に出された。
「さてと、じゃあ加勢に行くか」
俺は飛び上がろうとしたそのとき、
「やぁ、ソラくん。こんにちは」
知らない先生らしき人に話しかけられた。
「どちら様ですか?今少しだけ急いでるのですが」
「そう慌てないでくれ。僕の名前はカーゼ。この学院の教師さ。ちょっと君に聞きたいことがあってね。弟のリクくんがさきほどから見当たらなくてね。どこに行ったか分かるかな?」
「いっや〜知らないですね。すみません。」
もちろん嘘だ。今ごろ上空にいるなんていえない。
「そうか。ごめんな急いでるところ。」
「はい、それでは」
俺は少し実技試験の場から離れ、一気に上空へと向かった。
上空へとやってきたら、辺り一面が黒くて、よく周りが見えなかった。
俺はリクの存在を捉えて、一気に近づいた。
「大したことないですね、《黒星》」
誰かの魔術がリクへと放たれた。すかさず俺は、
「防御系魔術《絶対防御》」
結構な魔力の塊だったので、今俺が出せる防御系魔術で1番強い、絶対防御を繰り出した。
「間に合ったかな?リクお疲れ様、空中戦だったけどよく頑張ったね。あとは任せて」
「ソラ!」
「おやおや君は誰ですかな?」
どこからか声が聞こえる。
「こいつの双子の兄のソラだよ。よーく覚えとけ、お前らを倒す名だ。」
「双子の兄?私たちを倒す?何を言っているのですか?たかが私の攻撃を1度防いだぐらいで調子に乗らないでもらいたい。」
「はっ!それはどうかな?特殊系光系統魔術《天の光》」
辺り一面を覆っていた黒を天の光で消し去った。
「ほう、無詠唱。さらに、私の黒天を打ち消した。ただものではないですね。」
「たかが、1人増えたぐらいじゃ俺らを倒さないぞ!」
1人は魔術師、1人は武術家だな。相当強いが、俺の敵じゃないな。
「《再生》。リクこれで怪我は治ったと思うが、後ろで待ってろ。あいつら2人は俺だけで片付ける。」
「ソラ、あっちのでかい武術家の攻撃は強すぎる。当たったら結構やばい」
「分かった。気をつける。それじゃあ、本気出すか」
俺は一気に魔力を解放した。俺は基本的に魔力は内に隠しているが、本気を出す時は解放する。
「なんですかこの魔力の量に密度は!尋常じゃない!あなたは本当に人ですか!?」
小柄な魔術師が俺に対して言ってくる。
「知らん。《亜空》」
2人を別空間へと閉じ込める。
「じゃあリク、ちょっと待っててな」
俺はリクにそう言ってから亜空内に入る。
「ここはどこだ!どうなってる!俺らはさっきまで上空にいたのに。」
「これは……空間系統魔術!?おかしい、こんなのが許されていいはずは」
「お前ら、俺の質問に答えてもらおうか。どうして受験生のことを見ていた?」
「教えるわけがない!お前みたいな奴に教えてたまるか!」
「はぁ、さっさと言ってくれれば痛くしないで逝かせてあげるのに。攻撃系毒系統魔術《毒壊》」
毒でじわじわ追い詰めて、なんで見てたかを吐かせてやる。
「何ですかこの毒は、体が痺れるし、痛い。手の感覚がすでになくなって……」
「さぁ、早く答えろ。早くしないとそのまま体が崩壊して死ぬぞ?」
「俺はもう我慢できん!俺らは魔人で、魔界から人間界で脅威となりそうな子供の偵察のために……」
喋っていた男の首が急にどこかへと消えた。首だけがだ。
「あぁ、恐ろしや、恐ろしや。魔神様すみません。私たちを許し……」
もう1人も首がなくなった。
「は……?亜空内に干渉?どうやって、というかこの魔力はなんだ。初めて感じる魔力。魔力の痕跡を辿ってもどこから来たものなのか分からない。魔神様とか言ってたな。何者だ……?」
2人とも体だけは残っている……
俺は亜空内から出てきた。
「ソラ!あの2人は?倒したのか?」
リクがこちらへやってくる。
「いや、俺が倒したわけではない。何者かによって首が消されて、死んだ。亜空内に干渉された。干渉されるはずがない別空間なのに……」
「まじか……その何者かって誰だ?」
「小柄な魔術師が最後に『魔神様』と言っていた。」
「魔神様……なんかやばそうなやつだな。神って言ってるぐらいだもんな。」
「あぁ。やばいやつに違いはない。そんなやつが関わってくるとなると、俺でも対処できるかどうか……」
俺はもっと強くならなければならないと思った。
俺とリクは上空から貴族学院へと戻ってきた。
戻ってくる途中に、リクには亜空内で起こったことを全て話しておいた。
「実技試験やめ!2組目もみなさんいい戦いでしたね、お疲れ様でした。それではこれで実技試験を終わります」
「お、ちょうど終わったみたいだぞ」
俺はリクに言った。
「お互い受かってるといいな」
「だな」
俺とリクが話していると、
「みなさんこれにて、全ての試験が終わりました。
試験結果は3週間後発表です。発表方法はこの学院内の掲示板に大きく張り出されるので、そこで確認をしてください。それではみなさんお疲れ様でした。家に帰るまでが受験ですので、気をつけてお帰りください」
そう言って、アルディア王立貴族学院の受験は幕を閉じた。
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ 受験が終わり、どこかの場所にて。
「あのソラとかいう、リクの兄はそこまで大したことないわね。」
「確かにそうだな!あの兄は弟に比べてそこまで強くないようだな!」
「ほぉっほぉっほぉっ。あやつの動きをちゃんと見ておらんかったのか?最初の方の人が多い乱戦の中、魔術をしっかりと躱していたぞ?」
「確かにそれはすごかったですが、最後やられる時何故かわざとやられている気がしたのですが、そう感じたのは私だけでしょうか」
「それは私も思ったわ!最後はわざと当たりに行っていたわね。理由は分からないけど。」
「ソラのその行動はよく分からんが、他の奴ら、特に最後の方に残った7人はなかなか良かったぞ!1人は最上級魔術を使ってたし、さらにもう1人は極級魔術を使っていた。他の5人も上級魔術を使えていたからな」
「今年はいろいろとすごそうじゃのぉ。」
「4月からがとても楽しみですね。」




