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神絵師、二〇二六年七月に死す  作者: 海内裏
第五部:黒船の影と、デジタルの終焉(二〇二六・〇一-二〇二六・〇七)

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第二十二章、推し活の王座と、液晶のハッキング

芳年が闇に沈むなか、空席となった王座を力ずくで奪い取ったのは豊原国周だった。国周は、エンタメ界のスターやインフルエンサーたちの顔面を、圧倒的なクローズアップの構図で描き、再び画面のすべてを支配した。

「流行遅れの残酷絵は終わりだ。これからは、最最前線の『推し活グラフィック』で稼ぐ時代よ!」

国周の描く、大衆の熱狂をそのまま吸い上げたエンタメアートはネットの隅々まで轟き、数字を叩き出し続けた。

この新しい液晶の表示画面が放つ、まばゆい輝きをハッキングしたのが、小林清親だった。清親は、最新の画面表示デザインが放つ光の照り返しや影を、そのまま画面内の景色の中へと取り込んだ、極めて革新的な風景画シリーズを発表した。ネットの画面には「光の表現」という称賛の言葉が溢れ返り、ゴシップを中心に据えたイラスト付きのニュースデータが爆発的な人気を博した。

だが、彼らの生きる都市を襲った大規模な火災がストリートを焼き尽くしたとき、清親の心は折れた。

「どれだけ美しい光を描いたって、本物の火の前では、全部一瞬で燃えちまうじゃねえか」

清親はそれまでの繊細な光の表現を完全に捨て、ただの分かりやすいコミックイラストへと転向してしまった。その失われた光の技術を引き継いだのは、ハガキサイズの小さな風景イラストをタイムラインに投稿し、その卓越した美意識で頭角を現した、若き弟子の井上安治だった。

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