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神絵師、二〇二六年七月に死す  作者: 海内裏
第五部:黒船の影と、デジタルの終焉(二〇二六・〇一-二〇二六・〇七)

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最終章、機械の襲来、そしてデジタル浮世の終焉

やがて、文字と速報を中心に据えた高速なミニニュースサイトがネットの主流となり、制作に膨大な時間のかかるイラスト付きのニュースは急速に退潮していく。さらに、海外のクリエイターたちが国内に持ち込んできた、最新の「実写生成人工知能による超高精度な加工写真」のアルバムデータが、若者たちの間で爆発的な人気を博し始めていた。カメラが捉えた光と、人工知能による自動生成の計算が、人間の手仕事を一瞬で過去にする時代の幕開けだった。

それでも、あの残酷な闇から這い上がってきた芳年は諦めなかった。病から奇跡的な復活を遂げた月岡芳年は、血飛沫を捨て、人間の内面や複雑な感情を極限まで描き出した美人画の傑作シリーズを連続で投稿。彼のサークルは登録者数が二百人を越える巨大なギルドへと成長し、ついに絵師の人気番付において最高位の筆頭へと上り詰めた。

しかし、その絶頂の瞬間、人間の手仕事を終わらせる決定的な破壊的技術革新が完成する。

『高解像度イラストの完全自動複製と、実写生成人工知能の一般化』

人間の手作業による試行錯誤が、ただのデータとして完全に自動代替される時代。若き天才であった井上安治が心不全で突如この世を去り、その若者の死のショックと、時代の残酷な濁流に押し流されるように、芳年も再び精神の闇を病み、ついに液晶の光の前で静かに息を引き取った。

デジタルデータの私的なやり取りが完全に解禁され、誰もが自らの携帯端末で撮った人工知能加工の写真付きのポストを一瞬で送り合う、二〇二六年七月の現代。

かつてネットの王座を争い、己の腕一本で画面を切り裂き続けたクリエイターたちの系譜が完全に途絶えたとき、最後のトップインフルエンサーは、無機質に発光する液晶画面を見つめながら、ぽつりと呟いた。

「画面の中に生きる、本物の絵師らしい絵師が、ついにいなくなっちまったな……」

タイムラインには、最新のトレンドヘアスタイルを施した、自撮りの人工知能加工写真ばかりが、魂の無い美しさで無限にスクロールされていく。

一九九五年のネット黎明期、あの小さな掲示板の片隅で、開祖である菱川師宣が灯した、人間の手仕事による「デジタル浮世絵」の絢爛たる栄華は、完璧な機械の光と人工知能の前に、静かに、だが完全にその幕を閉じた。

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