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第二十一章、血飛沫の狂宴と、神経衰弱の鬼才
人々の心がますますささくれ立つなか、その狂気に呼応するように、落合芳幾と、若き鬼才・月岡芳年の二人が立ち上がった。二人は画面を血飛沫と暴力の色彩で染め上げる、凄まじい残酷イラストの連作をネット上で競作した。現実の暗さに歪む大衆は、その過激な血の表現に狂喜乱舞し、画面のアクセス数は爆発した。
「世の中が狂ってるなら、狂った絵を描くまでだろ!」
芳年は、記号化された萌えの嘘を剥ぎ取り、人間の業を剥き出しにした残酷な絵を画面に焼き付け続けた。ネットのインフラ体制が一新され、新たな時代へと移行する激動期のなか、その血塗られた表現はタイムラインで大評判となった。
しかし、新時代の波は冷酷だった。社会のインフラとして新しい効率的な移動手段が街に登場し、本格的なデジタルニュースメディアが次々と創刊され、さらには表現の自由を根本から縛る新たな規約の制定が矢継ぎ早に行われる。およそ六分の一に濃縮された世界の、あまりにも早すぎるスピード感と技術の変革に、芳年は精神のバランスを崩し、深刻な神経衰弱に陥って画面の向こうへ沈んでいってしまった。




