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神絵師、二〇二六年七月に死す  作者: 海内裏
第四部:百花繚乱の終焉と、巨匠たちの意地(二〇二四-二〇二五)

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第十八章、社長座の強奪、そして巨星の消ゆる時

画面の向こうの覇権争いは、ついに極限に達する。

王座を守り続ける歌川国貞は、みずからの圧倒的な実力と市場シェアだけで、大手企業『歌川』の三代目代表取締役社長の座を力ずくで奪い取った。初代の養子という血筋だけで二代目の椅子に収まっていた前社長を経営陣から引きずりおろし、実力こそがすべての正義だと証明したのだ。組織という巨大なシステムすらも、一人の絵師の執念が力ずくで乗っ取った瞬間だった。名実ともに頂点に立った国貞は、かつての開祖たちの画名を継承し、タイムラインの絶対的な支配者となった。

傷だらけの絵師たちがそれぞれの頂点を極め、終わりなき戦いを続けるなか、すべての始まりの地にも、静かな終わりの時が近づいていた。

誰よりも長く描き続け、この三十年のネットイラストの歴史そのものとなった葛飾北斎は、病床でなお、ペンタブレットを握る震える手に全ての神経を集中させていた。液晶の光が、老いた男の顔を静かに白く照らす。

「あと……あと五年あれば、俺は本当の絵描きになれたのに……」

液晶の光がその瞳から消える最後の瞬間まで、北斎は絵への凄まじい執念を燃やし尽くし、静かにアカウントを閉じた。一億総表現者時代を切り開き、デジタル画面を肉筆の力で蹂躙し続けた最大の巨星が、ついにその長い旅路を終えたのだ。

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