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第十五章、王の崩御と、馴染めぬ男の足踏み 「お前の絵には、大衆への愛が足りねえんだよ」
巨大企業『歌川』のトップスターとして君臨し続けた初代歌川豊国は、大衆の求めるエンタメに徹底的に寄り添い、タイムラインの絶対的な王として君臨したまま、その栄華のなかで静かに生涯を閉じた。個人の作家性を捨て、組織の規格として勝つための商業イラストの基礎を築いた男の、華やかな最期だった。
その豊国が生前、全盛期だった頃に『歌川』の門を叩き、多すぎるライバルたちの才能に圧倒されて契約を断られた若者がいた。のちに独自の風景を開拓することになる、歌川広重である。
広重は別の弱小制作チームになんとか潜り込んだものの、画面のなかの過激な流行や、数字だけを追いかける炎上マーケティングに、どうしても馴染めずにいた。さらに、生活の安定のために画面の外の実社会から引き継いでいた、お堅い治安維持の副業の籍をどうしても辞めることができず、自分の本当に描きたいものを見失ったまま、液晶画面の前で長い足踏みを続けていた。データの世界はあまりにも冷たく、流行はあまりにも早すぎたのだ。




