第十四章、サイバーパンクの胎動と、新星の蹂躙 「言葉で、絵で、この閉塞感をぶち殺す。それだけだろ」
二〇二四年。ネットイラスト界は、かつてない百花繚乱の時代を迎えるとともに、あまりにも急速な新旧交代の濁流に呑み込まれようとしていた。
葛飾北斎は、この世を去った歌麿の遺志を継ぐかのように、再び気鋭のネット小説家と強力なバディを組んだ。彼らが満を持してタイムラインに投下した、近未来の退廃的な社会を描いたサイバーパンク風の超大作連載小説は、北斎の神がかった挿絵の力によって、かつてない社会現象を巻き起こす。線の狂気でネット民の魂を再び震え上がらせたその大ヒットは、個人の職人技がまだ巨大な資本に対抗できる証明でもあった。
しかし、その熱狂のバトンを強引に奪い取るように、巨大イラスト制作企業『歌川』のエージェント契約を結んだ新星、初代歌川国貞が画面に躍り出る。国貞は、歴史上の伝説のヒロインたちを現代の過激なデザインへと再解釈した衝撃的なイラストシリーズを発表。企業組織の圧倒的な拡散力と、大衆のフェティシズムを完璧に捉えたその絵は、一瞬でタイムラインの主役へと上り詰めた。
二〇二五年、北斎と組むネット小説家は、みずからの生涯をかけた超長編大作の連載を開始。その膨大な世界観を視覚化する重要な挿絵の担当には、北斎の義理の息子であり、実力を認められていた歌川重信が抜擢された。デジタルアート界は一億総表現者時代の絶頂を迎え、誰もが液晶の光の中で富と名声を掴めると信じていた。




