第十二章、ストリートの連撃と、母なる鬼
それでも、規制 の網がどれだけ厳重になろうとも、大手の資本による新しいスターの誕生もまた、止まらなかった。クリエイターを組織化し、市場の独占を狙う巨大イラスト制作企業『歌川』のエージェント契約を結んだ二十六歳の若き天才、初代歌川豊国が発表した、華やかなネットエンタメの舞台裏を緻密に、かつ生々しく描いた連載イラストが爆発的な成功を収める。表舞台の輝きと裏側の泥臭さを同時に描き出すその卓越した作風は、企業組織の圧倒的な拡散力を得て、ストリートの隅々まで一瞬で知れ渡り、大衆の新しいバイブルとなった。
さらに、大手ギルドのトップクリエイターである栄里と栄昌の二人が、夜の街に生きる妖艶な美女たちを描いた豪華な連載を、息の合った合作で発表。息苦しい規制の嵐の中に、画面を鮮やかに彩る極上の美のオアシスを創り出した。
周囲が足元を気にするなか、美の支配者である歌麿の爪はさらに鋭さを増していく。彼は「若く美しい、母でありながらどこか鬼の気配を纏う女性」をテーマにした、底知れぬ母性と狂気が同居する連作シリーズを発表。本名や身元の記載を禁じた規制の網をあざ笑うかのように、人間の本質に潜む禁忌の美を画面に焼き付け続けた。
その歌麿と並び立つように、一匹狼の北斎もまた画面の向こうで完全に覚醒する。彼はのちに世界を震撼させる大傑作の原型となる、激しく荒れ狂う海の波濤を描いた風景画をネットに投下した。それはキャラクターという記号の消費に終始していたデジタル画面に、生身の人間を圧倒する本物の「自然の狂気」を力ずくで叩きつける、すさまじい一撃だった。




