第八章、八頭身のストリート、そして改革の前夜
そして二〇一九年、ついにデジタルアートの黄金期を告げる究極の巨匠、鳥居清長が降臨する。清長は、これまでのキャラクターイラストの常識を覆す、八頭身の圧倒的なプロポーションを持つ美人画を次々と発表した。
彼の描く、現代のスーパーモデルのような洗練された女性たちが、実在するネオン街や、若者たちが行き交うストリートの背景に美しく佇む絵。それは、デジタルグラフィックの究極の完成形と称された。
「画面のなかの嘘を、本物のストリートに馴染ませる。それが俺の技術だ」清長は、現実の景色とデジタルの線を完璧に融和させ、ストリートカルチャー の 頂点へと君臨した。
この時期、ネット上では、知的なユーモアと政治的な風刺をふんだんに盛り込んだ、五七五七七の短い言葉の芸術、いわゆる洗練されたパロディ短歌の連作が大バズりを記録していた。絵師たちと文人たちがオンライン上で繋がり、一つの絵に対して無数の狂った歌が投げかけられる。大衆の文化水準はかつてない高みに達しようとしていた。画面の向こうは、まさに絢爛たるバブルの絶頂にあった。
だが、二〇二〇年を目前にしたその瞬間。再び世界的な金融危機と、それに伴う過酷な大不況の影が、表現の自由の剥奪を狙う新たな権力の足音とともに、きらびやかなデジタルストリートの足元へと、静かに忍び寄っていた。




