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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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96/98

96 探索者サミット

 キッチンで晩ご飯の後片づけをしているとリビングから、わたしを呼ぶ声が聞こえたよ。


「美紀ちゃん、始まったのです」

「美紀ちゃん、早くくるの。清美ちゃんが映ってるのー」

『すぐにいくねー』


 テレビでは、落ち着いたグリーンの色合いのマーメイドラインのドレスを着た清美ちゃんが、レッドカーペットの上をズカズカと歩いていたよ。金髪王子はその後ろをヨレヨレな感じのタキシード姿でヨタヨタと歩いていた。

 金髪王子は英語のテロップで[No.24 Kinpatsu Ohji  Lv.152]って紹介されてる。ブロンドプリンスとかじゃないんだ。


「清美ちゃん、きれいなのー」

「清美ちゃんの方が主役に見えるのです」

「みぃー」『清美ちゃん、にゃんだか怒っているの』

『本当だね。どうしたんだろう?』

「空間ネットワークにこの動画があったのです」


 イーちゃんが見せてくれた動画には、マーメイドドレスの清美ちゃんのお尻をさわって殴りとばされる金髪王子の姿が映っていたよ。殴りとばされる瞬間を何度もスローでリピート再生したり、特殊効果をつけたりして、オモシロ動画に仕上がっている。


「みぃー」『だから金髪王子はボロボロにゃの』

『よく見たら金髪王子の左頬が赤くなってはれてるね』

「金髪王子が飛んでゴロゴロ転がっていたのです」

『よくこんな動画が撮れたね』

「はいはーいなの」

『どうぞ、ジョーちゃん』

「わたしがイーちゃんのお友達たちに清美ちゃんのかっこいい姿の撮影をお願いしたのー」

『ジョーちゃんがお願いしてくれたんだ。ありがとね』

「えへへなのー」

『イーちゃんのお友達たちにお礼をしておかないとね』

「あの子たちはメグちゃんとジョーちゃんからお礼をもらったから大丈夫なのです」

『メグちゃんからも?』

「みぃー」『ナイショにゃの』

「できたら美紀ちゃんに見せるの。それまでナイショなの」

『できあがるのを楽しみに待ってるよ』

「みぃー」『イーちゃんのお友達たちはライブ動画も撮ってくれているの。どんにゃサミットににゃるか期待にゃの』



「みぃー」『1時間半経っても、まだ全員そろってにゃいの。入場に時間をかけすぎにゃの。ジョーちゃんとイーちゃんは飽きて寝ちゃったの』

『晩ご飯のあとだからねー。世界レベルランキング上位者は世界のVIPだから、こうやって集まるだけでもビッグニュースみたいだよ』

「みぃー」『清美ちゃんが出てなかったら、こんにゃの見にゃいの。やっとランキング2位にゃの』


 テレビのテロップには[No.2 The Permafrost  Lv.196]と出ている。ロシアの永久凍土ミハイルさんらしいゴツいおじさんが2人レッドカーペットを歩いている。どっちがミハイルさんかわからないね。

 世界レベルランキング1位の閃光のライトネルさんが、大きな歓声をあびながら入場したら、テレビはサミット会議場の中継に切り替わったよ。

 円卓には24人の世界レベルランカーが座っている。閃光のライトネルさんの左隣の席は永久凍土のミハイルさん。右隣に空席があるね。あれがゲストの獣王国の王子の席かな?

 世界レベルランカーのパートナーとして、いっしょに入場してきた人たちは壁際に置かれた椅子に座っている。ドレス姿の女性もいれば、スーツ姿の男性もいるね。清美ちゃんは目を閉じて静かに待っているように見えるけど、あれは居眠りをしているんだ。わたしにはわかるよ。イーちゃんのお友達カメラその1はそんな清美ちゃんを密着取材中だ。


『ジョーちゃん、イーちゃん。そろそろ始まるよー』


 宙に浮いて眠るジョーちゃんとイーちゃんを指でそっと起こしてみたよ。


「むーーなのーー」

「……おやすみなさい……なのです」


 2人はそのままパッと消えた。情報板領域に入ったみたい。


「みぃー」『たぶん2人はテレビに出ている清美ちゃんを見たから満足したの』

『そうだね。まだ見たいなら明日イーちゃんのお友達動画を見せるよ』


 テレビの画面には[この会議は空間ネットワークの同時通訳システムを使用しています]というテロップが出ているよ。イーちゃんのお友達カメラその1は居眠り中の清美ちゃんの鼻の穴をアップで撮ってる。清美ちゃんが動画を見たら怒りそうだ。


「閃光のライトネルだ。みんな集まってくれて感謝する。今後の世界のことを話し合うために、この場にビッグなゲストを呼んでいる。異世界、クローエレーダー獣王国の第三王子リーン・レーダス殿だ。きてくれレーダス殿!」


 ホテルのベルボーイさんが着ているような黒いジャケットに黒ズボンという全身黒い格好をした12歳くらいの黒髪黒目の男の子が奥の扉から出てきたよ。頭の上にチョコンと出ている黒い三角耳とゆらゆら揺れている細長い尻尾がいい感じだね。


「我がリーン・レーダスだ。この会議に呼んでくれて感謝する。ただ会議を始める前にひとつ言わせてもらおう。我が聞いた会議の開始時間を1時間もすぎているぞ。少しは時間を守ろうという意識を持つべきだ」

「ライトネル、お前がクソめんどうな入場をさせるから、こんなガキにまで文句を言われてるじゃねーか。俺は言ったよな、ムダなことはさせるなと」


 ランキング18位ブラジルの灼熱のミゲルさんだ。イーちゃんのお友達カメラその2にうつっていたけど、ミゲルさん、ずっと待たされてイライラしてたもんね。


「ミゲル、落ちつけ」

「わたしも言わせてもらうわ。時は金なりという言葉があるの。ライトネル、あなたは1位という立場におごりすぎよ。所詮アメリカの軍事力の後押しで作られた1位でしょう」

「シェリル、てめえ……」

「ライトネルは別にいい。だがアメリカには言いたいことがある。6年前にガーゴイルの同時多発氾濫があったな。あれはアメリカのネバダ州の核攻撃が原因だというレポートが出ていたぞ。アメリカの代表としてひと言ほしいな」

「ウチの国でも似た話を聞いたな。タイミング的にまちがいないと」

「あのクソめんどかったガーゴイルは、アメリカのせいかよ」


 円卓では世界レベルランカーたちが、口々にライトネルさんやアメリカの文句を言っている。ランカー同士で口論している人たちもいるね。非難されたライトネルさんも負けずに言い返している。

 居眠りしていた清美ちゃんが目をさました。周りがうるさくなったからね。イーちゃんのお友達カメラその1はカメラを少し引いて清美ちゃんの鼻全体を撮影中だ。


「みぃー」『考えていたサミットと全然違うの』

『本当だねー』

「みぃー」『閃光のライトネルさんも他の人もイメージと違ったの』

『わたしも、世界レベルランカーはみんな立派な人だと思っていたよ。みんな普通の人みたいな感じだね』


「ガーゴイルの話は本当か? どうなんだ、ライトネル」


 円卓の喧騒の中にロシアの永久凍土ミハイルさんの声がひびいたよ。


「知らん。ガーゴイルなんかどうでもいいだろ」

「そうか……」


 ライトネルさんの返答を聞いてゆっくり立ち上がったミハイルさんが、ライトネルさんの頭に向けて右足を振り抜いたよ。鋭い蹴りをとっさに両腕でガードしたライトネルさんは椅子ごと吹っ飛んでいった。

 今まで黙って会議の様子を眺めていたリーン王子が立ち上がった。


「ここは会議の場だ。ギルドの酒場ではないぞ」


 リーン王子から同心円状に黒い魔力の波動が広がっていった。波動にあたった人が気絶しちゃったよ。テレビの画面はカメラマンが気絶したのか横倒しになってブラックアウト。イーちゃんのお友達カメラその2、その3、その4が会議場の撮影を続けているけどね。その1は清美ちゃんの鼻を撮影中だよ。


「みぃー」『あの王子、ラノベの魔王みたいなことをやってるの』

『なんだかかっこいいね。あれって魔装を作る時に失敗したら出るやつだよね。今度わたしもやってみようかな』

「みぃー」『美紀ちゃんがやると大変にゃことににゃるの。やめておくの』


 リーン王子は気絶した円卓の世界レベルランカーたちを見て戸惑っているように見える。


「世界の強者が一堂に会するという話を聞いてきたのだが……どういうことだ……」


 黒ジャケットのポケットからモノクルを取り出すと、スチャッと左眼に装着して、円卓の人たちを順番に見始めた。


「レベルが低い……やはり兄者たちの言うことが正しかったのか……」


 リーン王子が残念そうに首と尻尾をふった。と思ったら目をカッと見開いてある方向にグリンと首を動かしたよ。尻尾がピーンと立っている。そこには突然の魔力波動を警戒する清美ちゃんがいたよ。会議場で意識を保っているのは、リーン王子と清美ちゃんとイーちゃんのお友達たちだけだ。


「まさかレベル885だと」


 レーダー王子はモノクルをはずして目をゴシゴシこすると、またモノクルをつけて清美ちゃんを見つめた。


「英雄クラスを超えている……。ここにいたぞ。真の強者がいたぞ。我は賭けに勝ったのだ」


 レーダー王子は尻尾をクルクル動かしながら、清美ちゃんのところにかけよっていった。


「我は君に一目惚れした。結婚してくれ」


 清美ちゃんの目を見つめながらのリーン王子のプロポーズを、イーちゃんのお友達カメラその2、その3がしっかりアップでとらえていたよ。お友達カメラその1は継続して鼻のアップを撮影中だ。突然のプロポーズに驚いたのか鼻がピクッと動いたね。


「急すぎるし、よく知らんからなー。断るわー」


 戸惑う清美ちゃんとリーン王子の攻防は、それからしばらく続いたよ。


「みぃー」『考えていたサミットと全然違うの』

『本当だねー』


 わたしは清美ちゃんをからかう新たな武器を手に入れたよ。プロポーズ動画をスマホに保存しておかないとね。

 イーちゃんのお友達カメラ1の子に、清美ちゃんの鼻を撮していたことを聞いてみると「わたしは鼻が自慢なのです。だから清美ちゃんのかっこいい鼻を撮ったのです。ジョーちゃんの依頼なのです」と鼻動画をうれしそうに見せてくれたよ。もちろんその子はほめておいた。

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