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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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92 工場見学

 晩ご飯の後片づけをしていると、スマホに清美ちゃんから伝話がかかってきたよ。


「美紀ちゃん、聞いてよー」

「清美ちゃん、どうしたの?」

「今日、四国地方大隊に行ったんやけどなー。30代、40代の人もみんなわたしに敬礼してきてなー。なんかキツいわー」

「清美ちゃん、出世しちゃったからねー。しかたないよ。実際に魔物討伐でそれだけの実績をあげてるし、本当のレベルも世界でトップクラスだし」

「でもなー、なんかやりづらくてなー。本当になんでこんなことになったんかなー」


 エルフの国の主導で、帝国陸軍から軍閥貴族関係の幹部や士官が全部いなくなったんだよね。そのすっぽりあいた陸軍幹部の席に、エルフ人事で清美ちゃんたちが大抜擢。

 清美ちゃんは四国地方大隊のナンバー3に。由美ちゃんと智也は中部地方大隊のナンバー3とナンバー4に。佳代ねえと哲雄にいは九州地方大隊のナンバー3とナンバー4に、孝弘は北陸地方大隊のナンバー3になったよ。


「副官に現場のたたき上げのいい人がついてくれてなー。それだけが救いやわー」

「偉くなっちゃうと大変だね」

「エルフの国のお達しで、今度は部隊全体のレベルを上げることになってなー。エルフの国はレベル100ないと兵士になれないみたいでなー。今のままでは氾濫した魔物の討伐も難しいって言われたわー」

「軍閥貴族たち、魔物討伐が全然だったもんねー」

「これからは魔道甲冑を使わないようにするって話でなー。魔道甲冑を使ってるとレベルが上がらんみたいやわー」

「そのまま使ってると早い動きの魔物についていけなくなって、魔道甲冑ごとやられちゃうんだよねー」

「やっぱりそうなんやなー。大隊を半分にわけて、片方はレベル上げにするかなー。ちょうど島屋ダンジョンの定期討伐の時期やしなー」

「清美ちゃん、島屋ダンジョンは気をつけてね。1階層でレベル50のゾンビが山ほど出てくるから、入口ホールから離れると、清美ちゃん以外は全滅しちゃうと思うよ。2階層はレベル60で、3階層はレベル70とどんどん上がっていくから、進みすぎて魔力ぎれになると清美ちゃんでも危ないからね。30階層のゲートキーパーは絶対にやめた方がいいよ」

「島屋ダンジョン、そんなことになってるんやなー。陸軍の記録に書いてなかったわー」

「陸軍、島屋ダンジョンに全然きてなかったと思うよ。あそこで一度も見たことがないし」

「ウチもそんな気がするわー」


 ◇


「異世界人さんたち、見てくるのー」

「みぃー」『ジョーちゃん、わたしも見に行くの』


 今日はMMJの工場見学ということで、メグちゃんとジョーちゃんも遊びにきてるよ。2人は新入社員さんたちの方にピューっと飛んでいった。ジョーちゃんがなにか変なこと言っていた気がするね。


「おはようー、撫子ちゃん」

「おはようですわ、美紀ちゃん。ニュース見たのですわ?」

「何かおもしろいニュースあった? わたし川スポしか見てないから、あまり知らないんだよね」

「美紀ちゃんも社会人になったから、川スポ以外のニュースも見た方がいいですわ。スマホのニュースサイトで世界中のニュースが簡単に見れますわ」

「普通のニュースは宿敵のニュースが多くてねー」

「見たくないニュースは非表示にできるのですわ。簡単に設定できるのですわ」

「本当? どうやればいいの?」


 わたしは自分のスマホのニュースサイトを撫子ちゃんにも見えるようにしたよ。


「美紀ちゃんのニュース、透明スライムのことばかり表示されているのですわ」

「そうなんだよね。検索で[透明スライムを絶滅させる方法]を検索するたびに、宿敵のニュースが増えていってね。だんだんニュースサイトを見なくなっていったんだよねー」

「美紀ちゃんが透明スライムに関心があると思われたのですわ」

「消し方には関心があったんだけどね」

「ニュースサイトのここに非表示にしたいニュースの語句を登録しておくのですわ」

「透明スライムの養殖っと。消えたー。宿敵の養殖のニュースが消えたよ。ありがとう、撫子ちゃん。これで恐ろしいニュースから解放されたよ」

「どういたしましてですわ」

「いろいろなニュースがあるねー。[アメリカとドワーフ王国、竜人王国の条約協議が決裂]かー。海里ちゃんが前にアメリカ政府が異世界の魔道技術を狙ってるから交渉で揉めてるって言ってたやつだね」

「異世界の魔道技術はこちらの世界より500年以上進んでいるそうですわ」

「そうみたいだね。うちの世界の魔道技術はまだ89年の浅い歴史だからねー。それで500年差だけで済んでるのがすごいよ」

「美紀ちゃん、このニュースですわ。岡山に謎の巨大な木が突然あらわれたのですわ」

「えーと[岡山の魔物領域に高さ1Kmの黒い木が出現]……」


 ちび黒猫のイーちゃんががんばって1Kmの黒い木を植えている姿が思い浮かんだよ。たしかに大変だよね。


「この木は今も少しずつ大きくなっているのですわ」

「[ニュース速報、黒い木が急成長。30分の間に2Kmの高さに]……」


 ちび黒猫のイーちゃんががんばって黒い木を大きくしている姿が思い浮かんだよ。イーちゃん、朝ご飯を食べたらすぐに出かけてたもんね。


 ◇


 先輩社員たちに引率されて、工場の生産ラインの見学にきたよ。ここはスマホの6つの部品の1つを作っているところだね。

 お揃いの白いツナギを着て紺色の帽子をかぶった人たちが作業をしている。製造用魔法陣の魔鉄の板の上に宿敵の魔核を置いて魔法陣に魔力を流すとポッと音が鳴って、あっという間にスマホの部品に早変わり。やっぱり何度見ても謎技術だ。あちこちからポッという音がリズミカルに聞こえるよ。できた部品は白手袋をはめた左手で部品を運ぶベルトコンベアに乗せた。2秒に1個ペースの早ワザだ。


「異世界人さんたち、こっちの方がたくさんいるの」

「みぃー」『本当にゃの。岩本社長も思いきったことをするの』


 またジョーちゃんが変なことを言っている気がするよ。


 ◇


 先輩社員たちに引率されて今度は旧魔道甲冑試験場にきたよ。旧魔道甲冑試験場は、400m四方のサーキット場みたいなところで、鈴木魔機社時代には作った魔道甲冑の性能試験や魔道甲冑出荷前の一時保管に使っていたところだよ。4年前、ここに新しいスマホの工場を建てようとしたけど、建築許可がおりなくて断念したんだよね。

 ここにはなにもなかったはずだけど、なんだろうね。なんだか背筋がぞわぞわするよ。


『メグちゃん、ジョーちゃん、最大限警戒だよ! 恐ろしい気配がするよ』

「みぃー」『まわりに脅威ににゃるものはいにゃいの』

「!! これは宿敵たちの気配なの!」

『やっぱり! この気配はまちがいないよ。アイツらが近くにいるよ』


 旧魔道甲冑試験場の管理棟の屋上に上がると、春の心地よい日差しが降りそそいでいて、陽光にきらめく海が見えるよ。風が気持ちいいね。白い航跡を残して進む大きな船も見える。フェリーかな。


「ここは透明スライムの養殖試験場です。透明スライムを効率的に増やす方法を研究しています。3年前に魔物学誌に掲載された論文を見た人もいると思いますが、透明スライムにスライムの魔核を与えることで分裂速度が通常の20倍になるという画期的な方法も、この試験場で発見されました。この手法は現在、世界中の透明スライムの養殖場で使われています」


 眼下の広い旧魔道甲冑試験場には、スライム養殖用の水色の樹脂製プールが整然と設置されている。そしてその中では無数の宿敵たちがボヨンボヨンとうごめいていたよ。なにこの地獄のような光景。


『宿敵を増やそうとする恐ろしい陰謀の黒幕がわかったよ。MMJだったんだ』

「みぃー」『MMJの筆頭株主は美紀ちゃんにゃの』

「美紀ちゃんが恐ろしい黒幕だったのー」

『わたしが黒幕……』


 あまりの衝撃的な事実にわたしは立ちつくすしかなかったよ。

 茫然自失状態のわたしが正気に戻ったのは、松高のポップル社のマンションに戻ってからだったよ。メグちゃんの話によると撫子ちゃんが心配していたんだって。ジョーちゃんは情報板領域に入って、黒幕のわたしに謀られたココロのキズを癒やしているそうな。わたし謀ってないからね。


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