86 大宮ダンジョン
「こんばんはー。美紀ちゃん、今いいー?」
「こんばんは。大丈夫だよ」
佳代ねえや清美ちゃんたちにスマホを渡したら、清美ちゃんから伝話がよくかかってくるようになったよ。由美ちゃんが智也といっしょにいるから、暇を持てあますそうな。空間ネットワークの仮想空間にもよく遊びに行くようになってるんだって。
「清美ちゃんたちがインタビュー受けてるニュース見たよ。ガーゴイル討伐の若き英雄たちだって」
「照れるわー。中央直轄軍が全然出てこんかったからなー。テレビもずっとうちたちについてきてなー。密着取材みたいやったわー」
「中央直轄軍って、なにしてたの?」
「わからんなー。一度も大宮で見んかったしなー。今度は緑髪派閥が失脚してなー、陸軍司令長官が赤髪にかわとったわー。緑髪派閥の貴族籍も剥奪でなー」
「緑髪派閥、失脚したんだー」
「半月くらい前になー。派閥を変わって残ってるのもおるけど、陸軍からも退役しまくりでなー。幹部や士官がどんどんおらんようなっとるわー」
「このまま軍閥貴族がいなくなればいいのに」
「そうやなー。あいつらワイロとったり派閥争いして邪魔しとるだけやからなー。でもまだ15万人くらいおるらしいから難しいかもなー」
「あとは金髪派閥と赤髪派閥?」
「今は金髪派閥と赤髪派閥がバチバチやっとってなー。うちらにもいろいろ聞こえてくるわー」
「派閥争いに巻き込まれないように気をつけてね」
「そうしたいけどなー。うちらのガーゴイル討伐も金髪派閥がやらせたみたいでなー。ちょっとややこしいことになっとるわー」
「マジで大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。いざとなったら任官拒否でもして逃げるわー。陸軍大学校に行って、陸軍は上までひどいのがようわかったからなー」
「清美ちゃんたちが陸軍を辞めるんだったら、MMJって会社に伝手があるから、すぐに就職できるよ。高給高待遇もいけるよ」
「辞めた時にはお願いするわー」
「期待しておいて」
◇
『とおー』
「とおーなのー」
「みぃー」『とおーにゃのー』
わたしたちは華麗に沖縄ダンジョンを囲む塀を飛び越えたよ。
「こんにちはー。遊びにきましたー」
「緑髪派閥の失脚は、金髪派閥と赤髪派閥が組んでしかけた物だ」
「緑髪派閥の失脚の名分は3つあってな、1つ目がガーゴイル討伐の失敗、2つ目が全国の魔物領域の放置、3つ目が空間通信の失策だ」
「3つ目の空間通信はお前のMMJもからんでいるぞ。空間通信は傍受できない秘匿通信として各国の軍が採用を始めているが、緑髪派閥の内閣がTNT社と組んで帝国軍での採用を邪魔していたからな。それが利敵行為ということになった。緑髪派閥の内閣も総辞職だ」
『とおー』
「とおーなのー」
「みぃー」『とおーにゃのー』
『やっぱりスキンヘッドおじさんに聞くとすぐにわかるね』
「あとは金髪派閥と赤髪派閥なの。美紀ちゃん、滅ぼすの」
『滅ぼさないからね』
「みぃー」『滅ぼした方が早いの』
『メグちゃんまで』
◇
『ジョーちゃん、イーちゃんが戸棚の中で丸まって出てこないけど、何か知ってる?』
「ふて寝してるの」
『ふて寝?』
「副触手の本体がパワーアップしたの。それで逆襲ができなくなっちゃったの」
『副触手、本体あったんだ……』
「惑星生命体が恒星生命体になったの。それで、こっちに引っ越してきたの」
『恒星生命体がこっちに……。もしかして太陽?』
「そう言ってたの」
『そっかー。太陽に勝つのは無理だよね』
「イーちゃんもさすがにあきらめたの」
「にゃう」『まだあきらめてないのです。何か方法があるはずなのです』
『やっと出てきたね。晩ご飯にするよ。メグちゃんも待ってるよ』
「みぃー」『今日はハムカツにゃの。早くするの』
「やったのー。ハムカツなの。たくさん食べるの」
「にゃう」『わたしもたくさん食べるのです』
◇
研究室にくると、先にきていた撫子ちゃんと海里ちゃんが出迎えてくれたよ。
「撫子ちゃん、海里ちゃん、こんにちはー」
「こんにちはー」
「こんにちはですわ。美紀ちゃん、異世界人があらわれたのですわ」
「異世界人? 何かのマンガの話?」
「昨日の夜、出てきた。埼玉のモノリスの裏から」
「マジで?」
「マジですわ。臨時ニュースになっていますわ」
「ニュース、川スポしか見てないから、知らなかったよ。でも異世界人ってよくわかったね」
「異世界人がそう言った」
「異世界人って言葉が通じるんだ?」
「美紀ちゃんみたいに念話で話しかけてきたのですわ。でもこっちには念話が使える人がいないから、今はボディランゲージで対応しているのですわ」
わたしボディランゲージ得意だよ。じゃなかった、埼玉って言ってたよね。ジョーちゃんじゃないけど、いやな予感がするよ。
「言語理解のアイテム、政府が手配中」
「埼玉ってもしかして大宮ダンジョンのモノリス?」
「そう、大宮」
「そうでしたわ、大宮ダンジョンと言えば、ガーゴイルを討伐した美紀ちゃんの先輩たちがいるところでしたわ」
「ちょっと向こうに連絡してくるよ」
わたしはちょっと急いで研究室を出たよ。今は勤務時間中のはずだからスマホは無理かな?
◇
「清美ちゃん、今、スマホ大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。どうしたん」
清美ちゃんのスマホにつながったよ。良かった。
「大宮ダンジョンに異世界人があらわれたって聞いてね。清美ちゃんたちは大丈夫だった?」
「夜に叩き起こされて警備にかり出されたわー。さっき終わったとこ」
「まだ学生なのに大変だね」
「人が全然おらんからなー。異世界人、ミスリル鎧を着たのが3人と軍の礼装みたいな格好のやつが1人出てきとったわー。みんな耳が長くてなー。マンガのエルフみたいやって言っとったわー」
「エルフ……やっぱりマンガみたいにみんな美形?」
「4人ともイケメンやったわー」
「マンガの通りだね。エルフたちはなんて言ってたの?」
「軍礼装のやつが上官を呼べって言うたから呼んだけど赤髪派閥のアホが朝までこなくてなー。向こうもイライラしとったわー」
「エルフがあらわれてもいつも通りかー」
「そのあとは赤髪派閥のやつらと交代したから、わからんわー」
「お疲れさまー。清美ちゃんたちがなんともなくて良かったよ」
「うちらは美紀ちゃんにレベルを上げてもらったからなー。大抵のことはなんとかなるわー。これから寝るから、またなー」
「徹夜だったね。ごめんね。おやすみー」
「おやすみー」
いやな予感を発動したわたしのシックスセンスは、今回も連敗記録を更新したよ。良かった。
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