87 異世界人
『ただいまー』
「おかえりーなの」
「にゃう」『おかえりーなのです』
「みぃー」『おかえりーにゃの』
『イーちゃん、埼玉の大宮ダンジョンから異世界人が出てきたんだって。何か知ってる?』
「にゃう」『触手じいさんが何かやっていたのです。聞いておくのです』
『お願いねー』
「みぃー」『空間ネットワークのニュースサイトでもトップニュースににゃってたの』
「大規模匿名掲示板のスレにもたくさん出てたの。みんなエルフって言ってたの。変なこと言うやつはたくさんレスして赤くしてやったら逃げていったの。おもしろかったのー」
『ジョーちゃん、大規模匿名掲示板は1週間自粛するんじゃなかったっけ?』
「知らないのー。ピュー♪ピュー♪なのー」
『ジョーちゃん、口笛は封印するんじゃなかったの?』
「しまったの。また美紀ちゃんの巧妙な罠にかかってしまったの」
『フッフッフッ、罠にかかったようだね、ジョーちゃん』
「クッなのー。今度は美紀ちゃんを罠にかけてやるの」
ジョーちゃんが不穏なことを言ってるよ。
◇
「にゃう」『美紀ちゃん、おはようなのです。触手じいさんに聞いてきたのです』
『イーちゃん、おはようー。もう聞いてきてくれたんだ。ありがとね』
「にゃう」『異世界人たちは、触手じいさんの本体がいた惑星から、こっちに引っ越してくるのです。今はダンジョンみたいな異空間の中で待機中なのです』
『こっちに引っ越しかー。何人くらいいるの?』
「にゃう」『20億人くらいって言ってたのです。他にも動物や鳥や魚や竜たちなんかもたくさんなのです』
『20億人……それに動物なんかも……。引っ越し、中止できないかな』
「にゃう」『触手じいさんに聞いてくるのです』
『ありがとね。朝ご飯にするから、メグちゃんとジョーちゃんを起こしてきてくれる』
「にゃう」『わかったのです。朝ご飯は卵かけご飯がいいのです』
『イーちゃん、最近好きだもんね、卵かけご飯』
「にゃう」『めんつゆにかつお節がおいしいのです。玉子焼きもほしいのです』
『玉子焼きもちゃんと準備してるよ。イーちゃんたち、みんな玉子焼きも好きだからね』
「にゃう」『やったのです』
◇
『ただいまー』
「にゃう」『おかえりーなのです』
「みぃー」『おかえりーにゃの』
『ジョーちゃんはまだ帰ってきてないんだ』
「みぃー」『クロたちのところにゃの』
『またレベルアップさせてるのかな?』
「みぃー」『たぶんそうにゃの。レベル1000を超えるって言ってたの』
『とうとうレベル1000超えかー。すごいねー』
「にゃう」『美紀ちゃん、触手じいさんに聞いてきたのです』
「イーちゃん、ありがとね。副触手なんて言ってた?」
「にゃう」『引っ越しは中止できないそうなのです。200年前からやってる引っ越しって言ってたのです。大きな異空間を作って、そこに惑星の生命体を少しずつ移していったのです』
『200年前から……。わたしの生まれるずっと前からやってたんだ。なんでまた引っ越しを?』
「にゃう」『触手じいさんの本体が恒星生命体に昇化してこっちの太陽に引っ越したから、もうすぐ惑星がくだけるそうなのです』
『元の惑星がなくなっちゃうんだ……。それだったら中止できないね……』
「にゃう」『引っ越しを始める前に、元の惑星の生き物が生きられる環境の惑星をずっと探したのです。でも地球しか見つからなかったそうなのです』
『地球しかなかったんだー。他の惑星も無理そうだね』
「にゃう」『それで触手じいさんのところで、お仕事を増やされたのです。大変なことになったのです』
「みぃー」『いつものことにゃの』
「にゃう」『メグちゃん、違うのです。とってもとっても大変なのです』
『ごめんね、イーちゃん。なんでも言ってね、お仕事、手伝うから』
「にゃう」『やったのです。お願いするのです』
◇
晩ご飯の後片づけをしていると、スマホに清美ちゃんから伝話がかかってきたよ。
「美紀ちゃん、聞いてよー」
「清美ちゃん、どうしたの?」
「赤髪派閥の中央直轄軍がぞろぞろ大宮にきてなー。うちらにさっさと川崎に帰れって言ってきたんやわー。佳代ねえと哲雄にいにも」
「陸軍大学校の清美ちゃんたちはわかるけど、佳代ねえと哲雄にいは大宮に配属されてたよね」
「佳代ねえも哲雄にいも川崎配属の辞令をもらっとったわー」
「急な話だね?」
「ガーゴイル討伐で目立ったうちらが邪魔だったみたいやわー」
「なんとなくわかったよ。赤髪派閥の手柄狙いだね」
「いつものことやけどなー。ガーゴイルを討伐した時は全然出てこんのに、こんな時だけなー。ちょっとくやしかったわー。エルフもイケメンやったし」
「そんなにイケメンなんだー」
「マジでイケメンなー」
「美人な女性エルフが出てきたら、軍閥貴族が暴走したりして」
「そこまでアイツらもバカじゃないわー」
◇
研究室にくると、いつものように先にきていた撫子ちゃんと海里ちゃんが出迎えてくれたよ。
「撫子ちゃん、海里ちゃん、おはようー」
「おはようー」
「おはようですわ」
「撫子ちゃん、昨日の海外協力機構の役員面接はどうだった?」
「うまくいった気がしますわ。でも協力隊の経験がないから不安ですわ」
「撫子ちゃんは大丈夫」
「海里ちゃんの言う通りだよ。一次面接も二次面接も突破したんだから、大丈夫だよ」
就職活動で撫子ちゃんは独立行政法人の海外協力機構を受けたんだよね。探索者高校の寮でわたしを助けようと声をかけてくれた撫子ちゃんには向いてる職業なのかも。
海里ちゃんは里江おばさんの会社に内定してるよ。海里ちゃんは嫌がっていたけど、海里ちゃんのおじいさんの村上家当主命令が出て、行くことに決まったそうな。名家は大変だよね。
「美紀ちゃん、そんなことよりですわ。異世界人がアメリカのロサンゼルスダンジョンとアルジェリアのアルジェダンジョンにもあらわれたのですわ」
聞きおぼえがあるダンジョンだね。副触手が壊すなって言ってたダンジョンだ。
「大宮ダンジョンより2週間遅れだね」
「違う異世界人」
「アメリカはドワーフと竜人で、アルジェリアは獣人と魚人だったのですわ」
「盛りだくさんだねー。アメリカとアルジェリアも政府が話をする感じなのかな?」
「たぶん、そうなりますわ」
◇
『メグちゃん、MMJの岩本社長から連絡がきたよ。仮想空間のMMJの店舗に異世界の獣王国や魚帝国がスマホを買いにきたから、販売したいんだって。アルジェリア政府が通訳で使おうとして、獣人や魚人の代表たちにスマホを渡したそうだよ』
「みぃー」『どんどん売るの。岩本社長にまかせておくの』
『メグちゃん、MMJクレジット会社が獣王国と魚帝国に、企業カード枠でクレジットカードを発行したいって』
「みぃー」『MMJのクレジットカードの発行枚数が1億枚を超えたの。異世界進出なの。どんどん広げるの』
『発行枚数の半分くらいはイーちゃんのお友達たちのクレジットカードだけどね』
「みぃー」『これからシェアを広げていくの』
『メグちゃん、岩本社長から、異世界でも空間ネットワークを使えるようにできないのか問い合わせがきてるよ』
「みぃー」『アドバイスさんに聞いたの。空間ネットワークコアを1個、異世界に設置してシステムを改修すれば、異世界でも使えるようになるの。ジョーちゃんとイーちゃんにお願いしてみるの』
『できるんだー。わたしも手伝うよ』
ブックマークや★★★★★評価をいただけるとうれしいです




