83 子供向けドラマ「みきドラゴンのぼうけん」
リビングのソファーの上で、泣いてるイーちゃんをジョーちゃんがなぐさめているよ。ここ数カ月、月に2回は見る光景だ。イーちゃんもウソ泣きなんだけどね。
「イーちゃん、傷はあさいの。もう泣き止むの」
「にゃう」『シクシクなのです。ピェーンなのです。もうダメなのです』
『ジョーちゃん、イーちゃんはまたいつもの?』
「そうなの。副触手に返り討ちにされて、お仕事を増やされたの」
「にゃう」『シクシクなのです。パワーアップしたから、いけると思ったのです』
「イーちゃん、もうあきらめるの」
「にゃう」『いやなのです。絶対やり返してやるのです。シクシクなのです。ピェーンなのです』
「しかたないの。ここは奥の手を出すの」
『ジョーちゃん、奥の手って?』
「空間ネットワークの大規模匿名掲示板でイーちゃんを励ます言葉を募集したの。それを使うの」
『大規模匿名掲示板かー。管理が大変で掲示板専用の管理コアをひとつ作ったやつ』
「イーちゃんは副触手に負けてないの。逆襲が成立しなかったの』
「にゃう」『そうなのです。わたしはまだ負けてないのです。逆襲するチャンスがあるはずなのです』
「そうなの。チャンスは消えてないの。チャンスは最初から幻だったの」
「にゃう」『幻じゃないのです。パワーアップしていけば、いつかお仕事の仕返しができるのです。触手じいさんに逆襲するのが、わたしの夢なのです』
「イーちゃん、夢は見る物なの。夢は追いかけたらダメなの」
『ジョーちゃん、イーちゃんを励ますんじゃなくて、あきらめさせようとしてない?』
「気のせいなの。イーちゃんに戦いの極意を教えるの。はやきことハムスターのごとく、静かなることコネコのごとく、侵略することコイヌのごとく、動かざることコタツムリのごとしなの」
コタツムリ……。ジョーちゃんが大規模匿名掲示板に変な影響を受けてる気がするよ。
「美紀ちゃん、イーちゃんをなぐさめるために、たこ焼きパーティーをしたいの。たこパーなの」
『たこパーかー。今夜の晩ご飯でたこパーやっちゃおうか』
「やったのー。たこパーなの」
「にゃう」『やったのです。たこパーなのです』
◇
「美紀ちゃん、わたしドラマを作りたいの。空間ネットワークで見たの」
『ジョーちゃん、ドラマを作るのは大変そうだよ』
「がんばるの。美紀ちゃんが前に作ったドラゴンアルバムみたいなドラマを作りたいの」
『ジョーちゃんがやりたいなら、わたしも手伝うよ』
「ありがとうなの。イーちゃんやイーちゃんのお友達たちもいっしょに作ってくれるの」
「にゃう」『ドラマの台本もできたのです。ストーリーの原案は美紀ちゃんの書いていたものなのです。わたしがアレンジしたのです』
『イーちゃん、わたしが書いていたの?』
「にゃう」『このノートに書いてあったのです』
イーちゃんが見せてくれたのは、わたしが小学校時代にいろいろ書いてた黒歴史ノートだったよ。探索者高校に入る時にノートは処分したはずなのに……わたしの黒歴史が……。
「ドラゴンネストダンジョンで撮影するの。わたしが監督なの」
「にゃう」『わたしは演出担当兼脚本担当なのです』
そうして完成した動画は、ドラゴンの実写+アニメ仕立ての30分ドラマで、いたるところにカワイイ絵が使われていてコミカルに演出されている。これならちびっこでもドラゴンをこわがらずに見られるね。
ジョーちゃんが歌っているオープニングやエンディングまであるよ。ジョーちゃんの透明感のある幼い感じのソプラノの声が歌にとても合ってる。本当に上手だね。作詞作曲はイーちゃんのお友達たちだって。
○ドラマタイトル
[みきドラゴンのぼうけん]
○ドラマストーリー
仮面の魔王ドラゴンに封印された女神ドラゴンが、勇者みきドラゴンに助けを求めた。
勇者みきドラゴンは女神ドラゴンを助けるため故郷の森から旅立った。勇者みきドラゴンは、湖で聖女じょードラゴンや王女めぐドラゴンを仲間に加え、魔王の手下トラ、オオカミ、ゴーレムを倒していく。行く手をふさぐ魔王四天王緑髪ドラゴンや赤髪ドラゴンをついに倒して、仮面の魔王ドラゴンと対峙する勇者みきドラゴンたち。
仮面をとった魔王ドラゴンは勇者みきドラゴンの姉みかドラゴンだった。魔王ドラゴンと死闘を繰り広げる勇者みきドラゴン。その最中、聖女じょードラゴンと王女めぐドラゴンの究極封印魔法が成功して魔王ドラゴンは封印された。勇者みきドラゴンに助け出された女神ドラゴンは勇者みきドラゴンたちと一緒に旅に出るのであった。
○ドラマキャスト
勇者みきドラゴン(ウィンドウドラゴン)声:わたし
聖女じょードラゴン(ウォータードラゴン)声:ジョーちゃん
王女めぐドラゴン(フレイムドラゴン)声:メグちゃん
仮面の魔王ドラゴン(ウィンドウドラゴン)声:わたし
緑髪ドラゴン(グランドドラゴン)声:イーちゃんのお友達
青髪ドラゴン(アイスドラゴン)声:イーちゃんのお友達
女神ドラゴン(サンダードラゴン)声:イーちゃん
ナレーション 声:イーちゃんのお友達
オープニング 歌:ジョーちゃん
エンディング 歌:ジョーちゃん
魔王の手下 トラ、オオカミ、ゴーレム
エンディングの最後には、[この映像はフィクションです]っていうテロップもちゃんと入っていた。こってるね。
◇
養護院で[みきドラゴンのぼうけん]の上映会をやってみたよ。ジョーちゃん、イーちゃん、イーちゃんのお友達たちも上映会に参加だ。
ドラマをちびっこたちや小学生低学年の子たちは身動きもせずに食いいいるように見てる。場面に合わせてみんなの表情が同じように変わるのがかわいいね。
少し年齢が上の子たちは、楽しそうに見ていたり、興味深そうに見ていたりかな。ドラゴンの映像はめずらしいからね。
最後の戦闘シーンはカッコいいよ。身体からオーラみたいな光があふれて、動きに合わせてその光が尾を引く特殊効果が入っているからね。
究極封印魔法では白い光の柱が天高く立ちのぼっていくシーンもあるし。
エンディングでは、ジョーちゃんの歌に合わせて、ドラマの名場面シーンがセピア調で流れて、最後にエンディング後の旅のシーンがカラーで入っている。
上映が終わって、もう1度見たいと言う子、拍手している子、がおがおとドラゴンの真似をしてじゃれる子、そしてドラマの真似をしてなぜかわたしを攻撃するちびっこたち。
「ゆうしゃぶれす〜」
「ゆうしゃきっく〜」
「かめんのまおう。いくの、ふういんなの〜」
「まおうめ〜」
「がお〜」
「みかねえ、かんがえなおすの〜」
「絵がかわいかった」
「ドラゴン、かっけー」
「どらごん、どらごん」
「がお〜がお〜」
「戦闘シーンがカッコいい」
「アニメ、かわいい」
ちびっこたちよ、わたし魔王じゃないよ。ジョーちゃんがクスクス笑っているよ。
『上映会は大成功だよ。良かったね』
「みんな楽しそうに見てくれたの。作って良かったの」
「にゃう」『楽しく見てくれたのです』
「みゃう」『空間ネットワークに載せて、みんなにも見てもらうのです』
「みゃう」『次のを作るのです』
「わたしも作りたいのー」
◇
川スポに、アメリカで最近ある議論がまき起こっているという記事が載っていたよ。ドラゴンには人と交流できる知性があるのではないかという議論だって。議論のきっかけになったのは1本の映像で、その映像にはストーリーにそって巧みな演技を披露する7体のドラゴンが映っているそうな。ドラゴンネストダンジョンへ行った人も本物のドラゴンの映像だ、映っている山はドラゴンネストダンジョンの物だと話しているんだとさ。
『ジョーちゃん、この川スポの記事って[みきドラゴンのぼうけん]のことじゃないの?』
「たぶんそうなの」
『障壁を使ってドラゴンにいろいろな動きをさせたもんね。アメリカではドラゴンとの交流を試してみることになったんだって』
「あのドラマはフィクションなの。ちゃんと書いておいたの。ダンジョンのドラゴンと交流は無理なの」
『だよねー。ドラゴンたち、わたしを見るとすぐに襲ってくるし』
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