80 民事訴訟
土曜日恒例のスーパーでの買い出しを済ませたわたしたちはポップル社のマンションに戻ってきたよ。
郵便が届いていたから、なんだろうねと見ると横浜地裁からの訴状だった。答弁書の用紙もいっしょについてるね。
『訴状ってなにこれ?』
「美紀ちゃん、どうしたのー?」
『横浜地方裁判所から変な郵便が送られてきてねー』
「みぃー」『見せてみるの』
「にゃう」『わたしも見たいのです』
「わたしもー」
訴状をリビングのテーブルの上に広げて、みんなで見てみた。
訴状はこんな感じ。
[訴状
事件名 美容品取引損害賠償請求事件
原告 株式会社 サザビール社 上海支社
法定代理人 山下弁護士
被告 田中美紀
訴訟物の価格 30億円
請求の趣旨
田中美紀はサザビール社に、30億円を支払え
請求の原因
1. 霊和11年9月27日にサザビール社横浜店の会議室で、田中美紀が店員山根に美容品5点の作成方法の買い取りを依頼した。
2. 田中美紀が店員山根に美容品(甲第3号証)を提供し、性能確認を依頼した。
3. 田中美紀の依頼により、サザビール社では美容品性能確認試験(甲第4号証)をおこなった。
4. 霊和12年10月3日にサザビール社横浜店の応接室で、東アジア地区ジェネラルマネージャー、店員山根、田中美紀で、美容品作成方法の取引の商談をおこなった際、田中美紀に一方的に取引中止を宣告された(甲第1号証及び甲第2号証)。
5. サザビール社は取引中止により、多大な損害(甲第5号証)を負った。この損害をサザビール社は田中美紀に賠償請求する。
証拠方法
甲第1号証 ジェネラルマネージャー証言
甲第2号証 店員山根証言
甲第3号証 提供美容品リスト
甲第4号証 美容品性能確認試験
甲第5号証 損害詳細(性能確認試験費用、慰謝料)]
「みぃー」『訴えたのはサザビール社の上海支社にゃの。あのバカマネージャーのところにゃの』
「にゃう」『損害賠償が30億円なのです』
『なんでこんな訴状が?』
「サザビール社がスマホの製造方法を手に入れようとしてると思うのー」
「みぃー」『バカマネージャーの嫌がらせの可能性もあるの』
『でも30億円だよ。マジックバッグ1.5個分だよ』
「にゃう」『ジョーちゃんのサザビール社のビデオを見せてもらって思ったのです。ジェネラルマネージャーは美紀ちゃんの貯金を知らないと思うのです』
「山本さんが美紀ちゃんのサザビール社の取引記録を消すって言ってたのー」
「みぃー」『たぶんバカマネージャーは、美紀ちゃんのサザビール銀行やサザビール証券の口座の記録も調べてにゃいの』
『訴状を初めて見たから、びっくりしちゃったけど、なんとなくわかってきたよ。訴状に書いてることもウソばっかりだね』
「みぃー」『美容品の作成方法の買い取り依頼も、里江おばさんと独占販売の魔法契約を結んでいるから、美紀ちゃんはできにゃいの』
「去年の9月27日の美紀ちゃんは、探索者高校で勉強をして、放課後に横河先生と推薦入試のお話をしてたの。サザビール社に行ってないのー」
『あの日かー。わたし忘れていたよ。ジョーちゃん、よく憶えてたねー』
「えヘヘなのー」
『美容品のことも、里江おばさんが売ってる美容品を手に入れて書いた感じかな。10月3日にわたしがジェネラルマネージャーと話したことだけは合ってるね。話の中身は全然違うけど』
「情報板で記録したのー」
『ジョーちゃんの嫌な予感が大当たりだったねー』
「えヘヘなのー」
「みぃー」『美紀ちゃん、訴状どうするの? アドバイスさんは人間の裁判のことは詳しくにゃいそうにゃの』
『困った時はスキンヘッドおじさんだからね。月曜日の午前中に相談に行ってくるよ』
「みぃー」『スキンヘッドおじさんにゃら、いろいろ知ってるの』
「はいはーいなの」
『ジョーちゃん、どうぞ』
「サザビール社を滅ぼすのー」
『そうだねー。ポップル社の侵入者のこともあるし、この前のジェネラルマネージャーとの話に、今回の訴状。MMJの工場の盗難もたぶんサザビール社が絡んでると思うからねー。わたしもちょっと腹が立ってるから、今回は仕返しするよ』
「やったの、滅ぼすのー」
『滅ぼさないからね。サザビール社にダメージをあたえる嫌がらせくらいかなー』
「にゃう」『どんな嫌がらせをするのです?』
『サザビール社の本社ビルなんかを崩そうと思ってるけど、世界各国に支社がある超巨大企業だから、あまりダメージにならない気がするんだよね』
「にゃう」『わたしにいい案があるのです。わたしもポップル社に侵入されて邪魔に思っていたのです。ポップル社に置いているわたしたちの物を盗もうとしたのです。わたしも嫌がらせのお手伝いをするのです』
『じゃあイーちゃんにお手伝いをお願いするね』
◇
『メテオシャワーメークアップ』
「みぃーうみぅーみぃみゃーみぃー」
「メテオシャワーメークアップなのー」
「にゃーうにゃーにゃにゃーにゃー」
善は急げということで、わたしたちはいつものかっこいいポーズでヴァルキュリア紅に乗り込んだよ。今回はゲストのイーちゃんも参加だ。イーちゃんのかっこいいポーズは、メグちゃんとジョーちゃんのかっこいいポーズ研究に参加していたんだそうな。
「みぃー」『空気清浄化システム、エアコンシステム作動にゃのー』
「情報板、展開なのー。全周モニター、外の映像を表示なのー。隠密魔法、認識阻害魔法作動なのー」
「みぃー」『情報板に航行情報を載せたの。航行補助コア起動したの』
「システム、オールグリーンなのー」
『動作チェック、終わったよ』
「みぃー」『ヴァルキュリアくれにゃい、発進にゃのー』
「発進なのー」
『ヴァルキュリア紅、発進』
わたしたちは松高市の冬晴れの空に飛び立ったよ。
『航行補助コア、目的地ロサンゼルス、サザビール社研究開発センター上空、高度500m、高高度飛行モード』
「航空レーダー、パッシブモードで起動なのー」
「みぃー」『飛行ルート設定にゃの。飛行予定時間20分にゃの』
「自動航行システム正常なのー」
『自動航行開始』
「にゃう」『初めて乗ったのです。楽しいのです』
『ロサンゼルスにつくまで20分だから、後ろで3時のおやつにしようよ』
「イーちゃん、こっちなのー」
ヴァルキュリア紅に新しくラクラク自動航行システムをつけたから、目的地を設定すれば操縦しなくても勝手に飛んでいってくれる。わたしが後ろの6畳間でおやつを食べても大丈夫だよ。
メグちゃんとジョーちゃんは、後ろのこたつ机で先にもぐもぐタイムを始めてる。あれは先週買ってきた華山洋菓子店のお菓子じゃないか。わたしも参加だ。
ポムん♪
ちょっと間抜けな音が操縦席で鳴ったよ。
『着いたみたいだね。みんなはそのままおやつを食べていてくれていいよ』
「ロサンゼルス、見てみるのー」
「みぃー」『わたしも見るの』
「にゃう」『わたしも見るのです』
「夜なのー。変なのー」
「みぃー」『時差があるの。日本より17時間遅いの』
『メグちゃん、よく知ってるね。ジョーちゃん、日本がお昼の3時だったら冬時間のロサンゼルスは夜の10時なんだよ』
「時差なのー。たぶん、わかったのー」
「みぃー」『ハリウッドに行ってみたいと思ってたの』
『今は夜だから、また昼間に遊びにきてみようか』
「みぃー」『そうするの』
「あっちにハリウッドって書いてるのー」
『本当だ。ジョーちゃん、英語も読めるようになったんだ。すごいねー』
「えへへなのー」
「にゃう」『大きな遊園地も見えるのです』
『あそこにも今度行ってみようか』
「にゃう」『遊園地、みんなで行ってみたいのです』
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