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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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72 焼肉店

 焼肉店に行くメグちゃんとジョーちゃんとイーちゃんは、黒い和牛のキグルミ姿だ。和牛って焼肉店で食べられちゃう方だよ。いいの?


「みぃー」『ジュージューにゃの。テレビと同じにゃの』

「ジュージュー、パチパチなのー。おいしそうなのー」


 メグちゃんとジョーちゃんが目をキラキラ輝かせて肉が焼けるところを見てる。イーちゃんは静かだけど、わたしにはわかるよ。イーちゃんのあの目は獲物をロックオンした野生の目だ。静かにお肉を狙っているよ。

 わたしは、焼き肉テクニックをみんなに見せてあげている。わたしも焼肉店は初めてだけど、養護院で料理の腕は鍛えているからね。お肉を料理したのは数えるほどだったけど。


『みんな、こっちは焼けたからお皿に置いておくよ。どんどん食べてねー』

「みぃー」『ありがとうにゃの。いただきますにゃの』

「いただきますなのー」

「いただきますなのです」


 お皿のお肉が、あっという間になくなったよ。みんなほっぺたがハムスターのようにふくらんで、もぐもぐしている。これが焼肉強食じゃなかった弱肉強食の世界、きびしい野生の世界なんだね。


『みんな、たくさんあるから、ゆっくり食べたらいいよ。それにタレをつけた方がおいしいよ』

「もぐもぐ」『どんどんにゃくにゃるからにゃの。緊急事態だったの』

「もぐもぐなのー」

「もぐもぐなのです」


 みんな野生の目になってる。お肉が焼けるのが待ちきれない感じだ。ここはビビンバやクッパなんかのサイドメニューでしのぐしかないね。大量注文いくよ。


「みぃー」『美紀ちゃん、クッパおかわりにゃの』

『注文するねー』

「美紀ちゃん、カルビおかわりなのー」

「わたしもカルビおかわりなのです」

『ジョーちゃんとイーちゃんはカルビが好きみたいだねー』

「カルビおいしいのー」

「わたしもカルビが好きなのです」

『だったら骨付きカルビにも挑戦してみる?』

「挑戦あるのみなのー」

「挑戦したいのです」



『ジョーちゃん、こっちの玉ねぎもおいしいよー』

「玉ねぎはさっき食べたのー。もういらないのー」

『こっちのニンジンもおいしいよー』

「ニンジンはさっき食べたのー。もういらないのー。お皿に置いたらダメなのー」

『じゃあピーマンを置いておくねー』

「それは一番いらないのー。美紀ちゃんがいじわるするのー」

『ごめんね。ピーマンはこっちのキャベツと交換するよ』

「良かったのー」

「美紀ちゃん、キャベツとそっちのカルビを交換してあげるのー』

『キャベツを食べたら、カルビを置くよ』

「このキャベツは食べるの。でも、もう野菜を置くのは禁止なの」

『野菜もおいしいんだけどね』

「今日はお肉の気分なの。肉食なのー」

『わかったよ、ジョーちゃん。次からは全部お肉にするよ』


 かかったね、ジョーちゃん。ダメな物を先に出して、野菜を食べてもらうわたしの計略に。野菜も食べた方がいいからね、たぶん。

 前は何でも食べていたジョーちゃんが、子供舌なのか最近ピーマンを食べなくなっているんだよね。もう少し大きくなったら、また食べられるようになると思うけど。わたしも小さい頃はそうだったからね。



「みぃー」『美紀ちゃん、わたしも焼いてみたいの』


 メグちゃんがキリリとした表情で言ってきたから何かと思ったけど、自分で焼いてみたくなったんだね。


『だったら鉄板を半分ずつ使ってみようか。メグちゃんは左半分を使ってね』

「美紀ちゃん、わたしも焼いてみたいのー」

『ジョーちゃんも? だったらメグちゃんと反対側の鉄板で焼いてみる?』

「やったのー」


 身長20センチのメグちゃんとジョーちゃんが、長さ25センチの大きなフォークを構える姿は、和牛キグルミが黒なのもあいまって、国民的アニメに出てくるウィルスマンに似ているかも。

 メグちゃんとジョーちゃんが大きなフォークで肉を突き刺して、せっせと鉄板に並べている。大変そうだ。


『メグちゃん、ジョーちゃん、鉄板に肉を置くのはわたしがやろうか?』

「みぃー」『大丈夫にゃの。自分でやるの』

「自分でやるのー」


 メグちゃんもジョーちゃんも鉄板から20センチくらいのところで、大きなフォークを構えながら、肉が焼ける様子を真剣な表情で見つめている。


『メグちゃん、ジョーちゃ、あまり近いと焼肉の脂がはねてくるから、気をつけてねー』

「気をつけるのー」

「みぃー」『当たらなければ、どうということはにゃいの』


「みぃー」『ここにゃの』


 焼ける肉を見つめていたメグちゃんが動いた。フォークで肉をひっくり返していく。その動きは洗練されていてムダがない。どこで習得した技だろうね。

 メグちゃんを見たジョーちゃんがハッとして、あわてて肉をひっくり返していくけど、あわてているせいかうまくひっくり返らない。


『ジョーちゃん、ゆっくりやっても、すぐに焦げたりしないから大丈夫だよ』

「わかったのー」


「みぃー」『できたの』


 メグちゃんが満足そうにうなづいて、鉄板から肉を自分のお皿に運んでいる。


『メグちゃん、それはまだちゃんと焼けてないんじゃない?』

「みぃー」『ミディアムレアにゃの。試してみるの』

『ミディアムレアなんだー』


 ミディアムレアって、あれくらいの焼き加減なんだね。今まで言葉だけしか知らなかったよ。

 メグちゃんは、運んできた肉にタレをつけてもぐもぐ食べた。


「みぃー」『美紀ちゃん、もっと火を強くするの』

『わたしがさっき焦がして炭みたいになったから、このくらいの火がいいよ。メグちゃんも食べて苦いって言ってたよね』

「みぃー」『焦げて苦かったの』

『まだ焼けてなかったら、また焼けばいいけど、焦げちゃったら苦いのを食べるしかないからね』

「みぃー」『もう一度焼くという手があったの。行ってくるの』

『わたしもメグちゃんが焼くのを手伝おうか?』

「みぃー」『ひとりで大丈夫にゃの』

『手伝うからいつでも言ってね』

「みぃー」『言うの』


 メグちゃんと話している間にジョーちゃんの焼肉が完成したみたいだね。


「できたのー」

「ジョーちゃん、わたしもお肉を焼いてみたいのです」

「イーちゃんも焼いてみるの。わたしの鉄板のところを使うといいの。このフォークも持って行くの」


 イーちゃんも自分で焼いてみたかったんだね。


「おいしいのー。焼くの大変だったけど、楽しかったのー」

『良かったねー、ジョーちゃん。あとはわたしにまかせてよ。ジョーちゃんは食べながら焼き加減を指示してくれたらいいよ』

「ありがとうなの。でも美紀ちゃんはすぐに野菜を置くの。野菜を入れたらダメなの」

『ごめんね。もう野菜を入れないからね。ジョーちゃんはゆっくり焼き肉を楽しんでよ』

「美紀ちゃんにお願いするの」


 野菜を混ぜようとしたわたしの計略が事前に封じられてしまったよ。やるね、ジョーちゃん。


 イーちゃんはフヨフヨ飛びまわりながら、お肉を運んだり、お肉を焼いたり、ご飯を食べたり、お肉を食べたりしているよ。


「焼肉はいそがしい食べ物だったのです。大変なのです」

『料理をしながら食べているようなものだからね。イーちゃん、焼くの代わるよ』

「大変だけど楽しいのです。もう少しやるのです」


 こんな感じでみんなの初焼き肉は続いたよ。


『お好み焼きも自分で焼く店があるみたいだよ。今度行ってみようか』

「お好み焼きの店、楽しみなのー」

「みぃー」『しゃぶしゃぶの店もあるの。今度行くの』

『今度行ってみようね』


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