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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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68 スマホの使い方

「みぃー」『ジョーちゃんにお願いして、空間ネットワークコアを2個増やしてもらったの。ジョーちゃん、ありがとうにゃの。拍手にゃのー』

『ジョーちゃん、お疲れさまー』

「まかせるのー。あさごはんまえなのー」


 わたしもパチパチ拍手だよ。それとジョーちゃん、朝メシ前だからね。


「みぃー」『増やした空間ネットワークコアの1個は人間の通信とコンテンツ用にしたの。もう1個はイーちゃんたちと人間の共用コンテンツに使うの』

『共用コンテンツって?』

「みきちゃんもみるのー。おもしろいのー」

「みぃー」『美紀ちゃんにも、このあと使ってもらうの。いろいろにゃ動画もあるの』

『動画、メグちゃんが見たがってたやつだね』


「みぃー」『空間ネットワークコアを使った伝話システムは、イーちゃんたちが作ったシステムを売ってもらったの』

「メグちゃんのポップル社に売ったのです。お金をたくさんもらったから、みんなで順番にお買いものをしたのです」

「ほっかいどうをあんないしてきたのー。こんどはしゃんはいをあんないするのー」

『気をつけていってきてねー』


「みぃー」『伝話システムを人間用に改造するのも、スマホのシステムもソフトも、イーちゃんたちに依頼したの』

「お金をたくさんもらったから、お買いものデータを集めているのです。お買いものができる仮想空間を作るのです。商品もデータにして再現するのです。みんなお買いものができるようにするのです」

『みんなって京都の料亭にいた50人くらいじゃないの?』

「今はだいたい5億人くらいなのです」

『5億人!』

「毎日増えているのです」

『毎日増えてるんだ。思っていたより多すぎてびっくりしちゃったよ』


 わたしの脳裏に街を埋めつくしたイーちゃんが「なのです」と言ってる光景が浮かんだよ。


 ◇


 今日はメグちゃんにスマホの使い方を教えてもらうよ。ジョーちゃんとイーちゃんは北海道に遊びに行ってるよ。


「みぃー」『美紀ちゃんもスマホを使ってみるの』

『このONの字にさわればいいんだね』


 手のひらサイズの黒い板に書かれたONの字に触れると、わたしの前に黒い半透明の画面があらわれて、空間ネットワークとスマホの利用規約の文章が表示されたよ。


『細かい字でずっと文書が続いているねー』

「みぃー」『100ページくらいあるの。法律のアドバイスさんがあらゆる事態を考えてくれたの。この規約に同意しないと使えにゃいの』

『軍閥貴族みたいな人がいるもんね』


 法律のアドバイスさん……知らないアドバイスさんだ。

 利用規約画面で[同意するのです]を思考操作で選ぶと、画面が切り替わって、かわいいマークのアイコンがたくさん並んだ画面が出てきたよ。


「みぃー」『検索のアイコンを選んで、何か検索してみるの』

『考えただけで検索を選べるね。検索する言葉も[松高]って考えただけで、いろいろ出てきたよ』

『これは松高の画像や動画だね。[松高の画像なのです][松高の動画なのです]みたいな説明がついてるから、イーちゃんのお友達が撮ったのかな?』

「みぃー」『そうにゃの。イーちゃんのお友達はいそがしい子はいそがしいけど、暇がある子もいるみたいにゃの』

『そうなんだー。この画像や動画も見ようと思っただけで、拡大や再生ができるね。本当に新技術のかたまりだね』

「みぃー」『わたしとジョーちゃんでいろいろ工夫した自信作にゃの』

『本当に便利だね。メグちゃんもジョーちゃんも、すごいよ』

「みぃー」『ふふふーにゃの』

『メグちゃん、ひとつだけお願いがあるんだけど』

「みぃー」『にゃんにゃの?』

『さすがにお風呂に入ってるところや着替えているところの画像は、このままだとまずい気がするんだよ、ノゾキ魔孝弘的に』

「みぃー」『ノゾキ魔孝弘はとってもまずいの。人間に見えないようにフィルターをかけるの』

『勝手に撮ってる家の中の画像もお願い。ノゾキ魔孝弘が入ってきちゃうから』

「みぃー」『ノゾキ魔孝弘はダメにゃの。これもフィルターにゃの』


 ◇


『伝話、伝話帳、カレンダー、時計、カメラ、メール、チャット、画像、動画、ライブカメラ、音楽、本、ゲーム、大規模匿名掲示板、仮想空間、アプリ、プログラミング、仕事、説明、ネットワークセンター、支払……いろいろあるね』

「みぃー」『わたしのオススメは仮想空間にゃの。情報板領域の中みたいににゃってるの』

『情報板領域の中?』


 わたしは情報板領域の中に入ったことがないから、中がどんなふうか興味津々だよ。


『すごい、すごいよ、メグちゃん。本物みたい。おいしそうなパンの焼ける香りやうどん屋さんの香りもわかるよ』

「みぃー」『ほとんど現実と変わらにゃいの』

『こんなこともできるんだー。お店もたくさんあるねー』

「みぃー」『イーちゃんたちががんばって作った街にゃの。わたしもジョーちゃんもいろいろお手伝いしたの』

『お疲れさま。メグちゃんはお手伝い偉いねー』


 うららかな陽射しがさんさんと降りそそぐ中、わたしは商店街の案内板の前に立っていたよ。店の前の道は広いね。

 そこをイーちゃんのお友達たちがふわふわ楽しそうに飛びまわっていた。あちこちから「なのです」という言葉が聞こえてくるよ。

「ようこそおこしやす」や「おおきに」というどこかの料亭で聞いたはんなりな京言葉も、あちこちから聞こえてくるよ。


『店員さんがみんな女将や仲居さんだね……』

「みぃー」『イーちゃんたちは、お店や商品のデータを優先してるの。店員さんのデータは後まわしにゃの』

『イーちゃんのお友達も楽しんでるし、この街にはまだ人を入れない方がいいかも。イーちゃんたちを見ただけで大騒ぎする気がするよ』

「みぃー」『コピーして人間専用の街を作った方が良さそうにゃの。イーちゃんのお友達たちが楽しんでるのを邪魔するのも悪いの。イーちゃんに相談するの』

『ここはメグちゃん、ジョーちゃん、イーちゃんたちが作ったみんなの街だもんねー』


 ◇


 仮想空間の一流料亭にきたよ。現実の一流料亭との違いがわからないね。あの時の夕暮れまで再現しているよ。イーちゃんのお友達も結構きていて、次々にあらわれる女将に次々に案内されていったよ。次はわたしの番だ。


「ようこそおこしやす、みなさま。当院の女将の山科ですぇ。よろしぃおたのもうします」


 角膳を運ぶシンクロ率100%の仲居さん3人の動きも忠実に再現されているね。


「よろしおあがりやす」


『おいしいー。味も香りもそのままだ』

「みぃー」『ここにゃら美紀ちゃんもおにゃかいっぱいににゃらずに、いくらでも食べられるの』

『マジで?』

「みぃー」『マジにゃの』

『あの日食べられなくて残してしまった雪辱を果たすよ。そしてあの日に本当は食べたかった子供用の方も制覇するよ』

「みぃー」『わたしももう一度食べるの』


 負けてしまったよ。わたしより口も身体も小さいメグちゃんが25膳食べる間に、わたしは10膳食べただけだったよ。さすが大食いチャンピオン。わたしの完敗だ。


「おおきに」


 夜の暗さも雰囲気も、女将と仲居さんたちがずっと頭を下げて見送ってくれたところも完全再現だった。わたしの初スマホ体験は大満足で終わったよ。


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