63 京都観光
去年の春休みの雪辱を果たすために、わたしたちは、京都の地に降りたった。ゲスト参加はイーちゃんだよ。ガーゴイルの世界同時多発氾濫で、今の京都はガラガラに空いてるそうな。ニュースでやっていたよ。
今回は、メグちゃんとジョーちゃんもあと少しで3歳になるから七五三のお祝いもあわせてする予定。
建仁寺を見学して八坂神社方面に向かってのんびり散策中しているけど、道を歩いている人はまばらだね。去年と大違いだよ。やっぱり観光はのんびりするのがいいね。
「みきちゃん、みどりいろのソフトクリームなの」
『ふっふっふー。ジョーちゃんのおやつセンサーがさっそく反応したみたいだね。あれは抹茶のソフトクリームだよ』
「まっちゃなのー?」
『抹茶練乳ソフトクリームっていうんだけどね。食べてみようか?』
「みぃー」『わたしは3個頼むの』
「わたしは5個なのです」
「はいはーいなのー。わたしは7こなのー」
「みぃー」『わたしは10個にするの』
『今日はお店も空いてるし、おかわり自由にしちゃうよー。アイテムボックスに入れて持って帰るのもOKだよ。わたしも養護院の子のお土産にしちゃうからね』
テーブルについたフードファイターメグちゃん、ジョーちゃん、イーちゃんが、身体ほどの大きさのソフトクリームとペロペロ戦っている間に、わたしも抹茶練乳ソフトクリームをペロペロ食べながら、アイテムボックスにお土産を入れていったよ。
「みきちゃん、びんのプリンなのー」
『ふっふっふー。ジョーちゃんのおやつセンサーが瓶プリンに反応したみたいだね』
「みぃー」『あそこの店のプリンにゃの。プリン専門店にゃの。買うの』
『さすが索敵のプロフェッショナル、メグちゃん。あっという間に店を見つけたね。買いに行こうね』
「6種類もあるのです。迷うのです」
『お店の人に聞いたら、奥にも在庫がおいてあって、お客さんが減っていて売れてないから、たくさん買ってくれたら助かるんだって』
「たくさんかうのー」
「みぃー」『全部買っちゃうの』
「たくさん買うのです」
『みんなのご要望にお応えして全部買って、山わけにしちゃうよー』
山円公園に移動したよ。ダメだ。花見は地元の人や近くの会社の人が多いんだったよ。でも去年よりはマシかな。
『みんな、あそこのベンチで桜を見ながらプリンを食べるよー』
「プリンでおはなみなのー」
「みぃー」『6種類の味くらべするの』
「わたしも味くらべするのです」
「みきちゃん、このプリンがいちばんおいしいのー」
『なめらかプリンだね。じゃあ、わたしのなめらかプリンをジョーちゃんにプレゼントしちゃいます』
「やったのー。へそくりプリンがふえたのー」
「へそくりなの?」
「アイテムボックスのおやつはすぐなくなるの。きょうから、へそくりおやつをためておくのー」
ジョーちゃん、へそくりおやつもすぐになくなる気がするよ。
◇
「みぃー」『わたしも京都の旅行雑誌を見てきたの。京都と言えばお番菜にゃの』
『確かに京都名物で載ってたね。お昼ご飯はお番菜ランチにしちゃうよ』
「おばんざいなのー」
「お番菜なのです」
お番菜の店に入って、ランチの湯葉丼とお番菜御膳を頼んだみた。出汁が効いてるねとランチをおいしくいただいていると、みんなのニコニコがなくなっていたよ。
『みんなどうしたの?』
「このおかず、あじがちょっとなのー。マヨネーズかけるのー」
「みぃー」『味が薄いのー。わたしもマヨネーズにゃの』
「この野菜、ちょっと味が薄いのです」
この中でマヨラーになってないのはイーちゃんだけだね。
『京料理は薄味で出汁を効かせたものが多いから、みんなの子供舌に合わないのかも。この焼き魚とローストビーフだったら、みんなもおいしく食べられると思うよ。残しても持って帰って天ぷらにしちゃうから大丈夫だよ』
「みぃー」『わたし子供舌じゃにゃいの。おとにゃ舌にゃの』
「わたしもおとなじたー」
「わたしは子供舌なのです」
『イーちゃんのはタッパーに詰めちゃうね』
「みぃー」『わたしも子供舌だったのー』
「わたしもなのー」
昼ご飯を食べたら、おやつ爆買いツアーに変更だよ。たくさんへそくりおやつを買って、みんなと山わけだー。
金平糖、阿闍梨餅、抹茶バームクーヘン、みたらし団子、ラングドシャ、シュークリーム、羊羹、モナカ、お饅頭、ケーキ、パイ、クッキー、チョコレート、ゼリー、せんべい、飴、なんだかきれいな和菓子。お土産用に箱が山積みになっていたから、買うのも楽だったよ。
◇
次は今日のメインイベント、一流料亭で七五三のお祝いだよ。
娘さんがいる岩本社長に七五三のお祝いの話を聞いたら、京都の一流料亭を紹介してくれることになったんだよね。接待で使っていたそうな。さすが若社長。
「みぃー」『一見さんお断りの密室政治にゃの』
『政治はないけど、おいしいものはあるはずだよ』
「みぃー」『料亭ご飯、食べてみたいの』
『一流料亭では懐石料理と現代風本膳料理を選べるんだって』
「みぃー」『どっちがおいしいの?』
『どっちがおいしいかわからないけど、懐石料理はフランス料理みたいに一品ずつ出てくる方で、本膳料理は一度に全部出てくるんだって』
「みぃー」『本膳料理の方がいいの。たくさんにゃらんでる豪華ご飯を見てみたいの』
「わたしも本膳料理がいいのです」
「だったらわたしもなのー」
岩本社長に本膳料理のことをさらに聞いてみると、京都の一流料亭は、海外からのお客の接待も多いから、メニューも含めていろいろなお客のリクエストに応えてくれるそうな。子供用の料理や仕出し弁当も作ってもらえるって。さすが一流料亭だね。
いっしょに養護院の子たちの仕出し弁当も頼むことにしたよ。一流料亭らしく、時間停止機能付きの小さなマジックバッグを持っているから、豪華仕出し弁当も500人前までなら対応できるそうな。一流料亭すごい。
◇
日が落ちかけて薄暗くなっている中、わたしたちは一流料亭の門の前に立っていた。メグちゃんたちはふわふわ浮いてるけどね。
料亭は大正時代に作られた華族の邸宅を改装して使っているんだって。料亭の敷地は、白壁に瓦屋根の付いた築地塀にグルリと囲まれている。料亭の暖簾の掛かった門の両脇には提灯が吊るされていて入口を暖かな光で照らしている。
「みぃー」『暖簾に鈴がついているの』
「チリンチリン、なってるのー」
「楽しいのです」
『おもしろいねー』
門の中は日本庭園が広がっていた。大きな石燈籠もあるね。石畳の通路が料亭の玄関まで続いている。通路の両側の足元には四角い行燈が並んでいて幻想的な光景を作り出している。
そして、なぜかイーちゃんに似たちび黒猫がたくさんいた。ふわふわ飛びまわりながら「なのです」「なのです」って言っているよ。
「イーちゃんのおともだちもきてるのー」
『イーちゃんのお友達?』
「この子たちは部下みたいなものなのです」
「部下いたんだー」
「みぃー」『情報板領域にも仕事がお休みの子がたまに遊びにきてるの。お菓子やジュースでおもてにゃしするの』
『おもてなしかー。偉いねー』
「イーちゃんみたいにみんなゲームがだいすきなのー」
『だったらもっといろいろなゲームをたくさん買おうか』
「やったのです! ゲームたくさんなのです!」
「「「「「「「「やったのです!」」」」」」」」
ちび黒猫たちの声がこだましたよ。
「ありがとうなのです。みんにゃ喜んでいるのです」
『この子たちは何か用事があってきたの?』
「わたしが今日料亭に行くと言ったから、お店作りの参考に見にきたのです」
『お店を作るの?』
「わたしたちはみんなご飯やお菓子を食べたいのです。でも、わたしたちは誰かにご飯やお菓子をもらわないと食べられないのです。だからみんなで仮想空間にお店を作って、みんな自由に食べられるようにする計画なのです。これはわたしたちの最重要計画なのです」
『ご飯を食べられないのはつらいもんね。わたしも計画を手伝うから何かあれば言ってね』
「美紀ちゃんにはもうたくさん手伝ってもらっているのです」
『何か手伝ったっけ?』
「いつももらっているご飯やお菓子の味をデータ化して、仮想空間に送っているのです。わたしが食べた物は、みんながいつでも仮想空間で食べられるのです」
『データ化できるんだー。すごいね』
「データ化の技術は全部メグちゃんにもらったのです。仮想空間を作る技術や仮想空間に入る技術もメグちゃんにもらったのです」
『メグちゃん、偉いねー』
「みぃー」『アドバイスさんに教えてもらった技術にゃの』
『それでもメグちゃんがいないとできなかったからね。ヨイコヨイコ』
「仮想空間を作るコアや仮想空間と通信するカードや通信技術は、全部ジョーちゃんに借りたり、もらったりしているのです」
「おてつだいしたのー」
『ジョーちゃんもお手伝いしたんだー。偉いねー』
「くうかんネットワークコアを3こ、れいそでつくったのー。くうかんつうしんカードもたくさんつくったのー」
『大変だったねー。ヨイコヨイコ』
「えっへへなのー」
『空間ネットワークコアって寮の部屋に浮いてる緑のビー玉3個のことだよね』
「そうなのー。ちいさくしてるのー」
「みぃー」『仮想空間のメインとバックアップ、空間通信に3つ使ってるの。イーちゃんたちの大切なデータだから、バックアップでいつも複製を作ってるの』
『あのビー玉がそんなことに……。イーちゃんたちの計画がうまくいってるなら、それでいいよ。メグちゃんもジョーちゃんもイーちゃんも何かあったら言ってね』
「いうのー」
「ありがとうなのです。お願いするのです」
「みぃー」『仮想空間ではイーちゃんがもらったゲームをコピーしてみんなで遊んでるの』
「ゲーム大会もやっているのです」
『コピーかー。まあいいかなー』
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