55 イーちゃん
ホテルの部屋でテレビをつけると、臨時ニュースをやっていたよ。
『メグちゃん、ジョーちゃん、黒竜江省と吉林省のダンジョンが消えたって』
「みぃー」『中国語にゃのによくわかるの』
「すごいのー」
『何を話してるかわからないけどテレビのテロップに漢字の簡体字で書いてるから、なんとなくだよ』
『黒竜江省のダンジョンは97個全部消えて、吉林省のダンジョンは19個消えたんだって』
『ダンジョンが発生して83年間で、ダンジョンが消えたのが初めてだから、大騒ぎになってるみたい』
『これはダンジョンの中にいた人がインタビューを受けてるのかな。知らないうちに外に出ていたみたい』
「みぃー」『ダンジョンが消えたのは、あの副触手が関係してると思うの』
『あの副触手20個くらいって言ってたけど、このニュースでは116個だね』
「みぃー」『アウターネット経由で聞いてみるの』
『聞けるんだー』
「わたしもおともだちにきいてみるのー」
『お友達?』
「みぃー」『副触手といっしょにいた黒猫のことにゃの。あの子、仕事がいやでよくサボって……じゃにゃくてウチに休みにきてるの。それでジョーちゃんが友達ににゃって情報板領域に入れてあげたりしてるの』
「いまもじょうほういたりょういきで、テレビゲームをしてるのー。ちょっときいてくるのー」
情報板領域、そんなことになってるんだ……
「みぃー」『聞いてみたの。副触手は他のダンジョンを217個使って島屋ダンジョンを強化するそうにゃの。上司の指示で増やしたそうにゃの』
『上司いたんだー』
「みぃー」『上司はあくまで意訳にゃの。正確には副触手を生み出した上位権限者みたいにゃ感じにゃの』
『触手社会もいろいろあるんだー』
「みぃー」『あとはダンジョンコアのある121階層に正規の方法で入れにゃいようにするそうにゃの。地球関連のモノリスが書き換わるから121階層にはモノリスを使って転移してくるにゃだそうにゃの。それと今は改装で忙しいからあとにしてくれだそうにゃの』
『121階層は宿敵たちの巣窟だから、二度と行かないよ』
「ただいまーなの。きいてきたのー」
『ジョーちゃん、おかえりー』
「しゅしょくしゅがダンジョンをたくさんつかえっていったのー。ほかの2このダンジョンもつよくするのー」
『他の2個のダンジョンも強化するんだー』
「それとねー、あとからしゅしょくしゅがダンジョンコアのところにいけないようにしろっていってきたのー。だから、イーちゃんはだっしゅつしてきたのー」
『イーちゃん?』
「いつもいやなのですっていってるのー。だから、イーちゃんなのー」
[いやなのです]からとってイーちゃんかー。わたしも[じょうほういた]からとってジョーちゃんにしたっけ。
「それでねー、イーちゃんにごはんやおかしをあげたいのー」
『あげてもいいけど、イーちゃん食べられるんだ』
「やったのー。あげてくるのー」
「みぃー」『アドバイスさんから聞いたの。あの黒猫は食べたり飲んだリする必要はにゃいの。でもわたしたちが上海でたくさん食べているのを見てうらやましくにゃったの。あの黒猫は他の存在からもらったり、買ったりしにゃいと、ご飯やお菓子を食べられにゃいの』
『そっかー。ご飯が食べられないのは悲しいからね。たくさんあげようか』
それから、ひさしぶりに言っておくよ。アドバイスさん、なんでそんなことまでわかるのさ。イーちゃんもストーカーしてるの?
◇
「みぃー」『せっかくだから上海ダンジョンにも登録しておくの』
『上海のお土産をすぐに買いにこれるね』
「かわいいおまんじゅうをかいにくるのー」
上海ダンジョンのモノリスは、島屋ダンジョンより高い塀で広く囲まれていた。塀の中には、運動会でよく見るテントが10個立てられていて、中国軍の軍服姿の人たちが動きまわっていた。入口の門には銃を持った4人が立っていて、荷物を満載した軍用トラックが入ってきている。
「たんさくしゃ、いないのー」
「みぃー」『みんな中国軍の人みたいなの』
『ものものしいから、さっさと登録してホテルに戻るよ』
「みぃー」『それがいいの』
隠密魔法+認識阻害魔法で姿を消して、モノリスにふれて1階層の入口ホールに入った。ここも中国軍の人が多かった。わたしたちはモノリスに登録して、とっとと上海ダンジョンを出たよ。
◇
「ダンジョン大量消失事件から2週間経ちしました。世界ダンジョン探索者協会によりますと、世界で627個のダンジョンが消失しました。各国の内訳は次の通りです。アメリカ207個、フランス148個、中国116個、ロシア86個、ベルギー26個、オランダ24個、日本15個、スペイン5個です。国内のほとんどのダンジョンをうしなったフランス、ベルギー、オランダではエネルギー問題が起こることが予想され、各国は対応を急いでいます」
「またダンジョン消失地域には、氾濫した魔物が集まる傾向が見られます。岡山県、鳥取県には九州などから魔物が移動してきており、移動ルートの中国地方西部では混乱が続いています」
寮の食堂で、麻婆豆腐、餃子、ご飯、中華スープの中華で豪華な晩ご飯をおいしくいただいていると、テレビでダンジョン消失のニュースが流れていたよ。
「うーんなの……」
餃子とご飯と中華スープを先に食べたジョーちゃんが、麻婆豆腐を前にかわいらしく悩んでいるね。
『ジョーちゃん、この麻婆豆腐は辛くないよ。ほら、あーん』
「えーいなのー」
目をつぶってパクッとしてもぐもぐしていたジョーちゃんがニパッと笑顔に変わったよ。
「おいしーの、からくないのー」
『良かったねー』
「ご飯のおかわりなのです」
「イーちゃん、わたしもいっしょにいくのー」
「いっしょに行くのです」
『今日は中華スープもおかわり自由だよ』
「中華スープもおかわりするのです」
「わたしもおかわりなのー」
2人でお茶碗とお椀を持ってふわふわ飛んでいったよ。
『イーちゃんも、だいぶなじんできたねー』
「みぃー」『ずっとこっちにいるからにゃの』
『ダンジョンの方はいいのかな?』
「みぃー」『副触手が何も言ってこにゃいの。たぶん大丈夫にゃの』
『そっかー。お仕事、大変だったみたいだから、ゆっくり休めばいいよ』
「みぃー」『イーちゃんが新しいゲームをほしがってたの』
『どんなゲーム?』
「みぃー」『RPGゲームにゃの。ゲーム機のプヨンポヨーション2のにゃの』
『ゲーム機はグーパーチョキコンしか持ってなかったね。明日ゲームソフトといっしょに買いに行ってくるよ』
「みぃー」『わたしもラノベの新刊を買いたかったの。いっしょに行くの』
イーちゃんはパイナルパンタジー7のゲームソフトを両手で掲げて「やったのです」と言いながらピョコピョコ跳ねて喜んでいたよ。
ジョーちゃんには魔物の森のゲームソフトをプレゼントしてみた。ゲームをあまりやらないジョーちゃんはキョトンとしていたけど、興味があったらやってみてね。
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