5 探索者免許
養護院に逃げ帰ったわたしに、メグちゃんのアドバイスさんが、ライトアローため池爆破事件の真相を解き明かしてくれたよ。
「みぃー」『ライトアローの魔法陣は、普通は一定の攻撃力、一定の魔力消費量ににゃるそうの』
『そうなんだ』
「みぃー」『今回は普通の人の6千倍の魔力量を持つ美紀ちゃんが、大量の魔力を魔法陣に注入ちたの』
『説明の途中でごめんね。普通の人の6千倍の魔力量って何? わたしの魔力量は普通だと思うけど』
「みぃー」『美紀ちゃんとジョーちゃんは情報板領域を共有ちてるそうにゃの。情報板領域には霊素も魔力もたっぷり溜まっているの。そこでは霊素も魔力も大量発生ちていて、毎日領域の拡大に使われているの』
「だーうー」
ジョーちゃんが赤ちゃんなのにドヤ顔をしているように見えるよ。
情報板……日本語で書かれていたのに解読できなかった難しいアレだね。情報板領域もアレかな。わたしにはわからないことがわかったよ。
『ありがとう。わかったよ。ジョーちゃんとわたしは魔力を共有してるってことだね』
「きゃーう」
「みぃー」『魔力だけじゃにゃいの。霊素も共有してるち、情報板ギフトと刻印魔法スキルも共有ちてるそうにゃの」
「きゃっきゃ」
『そう言えばわたし情報板を出したり動かしたりできたよ。共有ってそういうことなんだ』
「みぃー」『今は美紀ちゃんがジョーちゃんの能力経由で情報板ギフトを動かちているの。ジョーちゃんも美紀ちゃんの能力経由で刻印魔法スキルを動かちているそうにゃの』
『そうなんだー』
「みぃー」『ライトアローのはなちに戻すの。魔力の大量供給で普通は魔法陣が先に壊れるの。今回、魔法陣が壊れなかったのは、情報板に魔法陣を描いたからにゃの。情報板は霊素でできているの。霊素は魔力の上位エネルギーにゃの。だからよほどの魔力量でもにゃいと情報板は壊れにゃいそうにゃの』
『情報板つよいってことだね』
「きゃーうーきゃ」
ジョーちゃんが手足をパタパタ、ニコニコ笑顔で飛びまわり始めたよ。
『ダンジョンに行って、ため池の時みたいな威力になったら困るね。魔力量を調節する練習をしないとダメだね』
「みぃー」『練習は大切にゃの。手伝うの』
「だー」
『2人ともありがとう。ジョーちゃんも手伝ってくれるんだね』
こうしてわたしの特訓生活が始まったよ。養護院の当番の合間や夜にこっそりとだけどね。
それとステータスを見るとレベルが2に上がっていたよ。逃げ足が早くなっているかも。
◇
院長先生に「探索者高校に行きたい。そのためにダンジョンでレベルを上げたい」と言ったら、強く止められたよ。「ダンジョンは軍学校の佳代ねえか哲雄にいといっしょに潜る」と佳代ねえと哲雄にいの名前を借りてお願いしたら、やっとうなづいてくれた。心配かけてごめんなさい。
実は佳代ねえと哲雄にいにも反対されたけど、ライトアロー30連発を見せたら、しぶしぶうなづいてくれた。哲雄にいには、試験費用と免許費用のお金も借りたから早く返さないと。
院長先生にも佳代ねえにも哲雄にいにも、足を向けて寝られないね。
院長先生が、わたしの進路のことをいろいろ話してくれたよ。
養護院の出資者が経営している工場で女工さんになってもいいし、養護院出身の人たちが経営している会社や店がいろいろあるから、そこで働いてもいい。心配しなくていいって。1人で悩む前に院長先生に相談しておけば良かったね。最近体調の悪い院長先生に遠慮したのが、失敗だったかも。
就職できるならダンジョンに行かなくてもいいような気がするけど、このままがんばってみるよ。レベルを上げてお金を稼ぎたいのもあるけど、院長先生の体調が良くなるようにポーションをプレゼントしたいからね。
ダンジョンで失敗しても、就職する道が残っていると考えれば、心に余裕が持てるよ。
◇
「探索者免許、ゲットだぜ!」
「うきゃーー」
「みぃー」『ゲットにゃの。おめでとうにゃの』
もらった探索者免許証を両手で高々とかかげる。
わたしは今日、探索者になったよ。探索者銀行の口座も作ったよ。
ジョーちゃんも手足をパタパタさせながら、わたしの周りを喜びの高速周回飛行だ。そんなにグルグルしていると目が回っちゃうよ、大丈夫?
今日は探索者免許証をもらうのに苦労したけど、苦労が報われた気分だね。
松高探索者支部は、市役所みたいなところで、窓口が何個もあった。なぜかわたしは窓口のたらい回し状態に移行。5つの窓口を渡り歩いたよ。しかも行く先々で年齢を疑われてね。わたしは立派な中学3年生なのに、小学生と疑われてね。中学校の生徒手帳を見せてもダメだったんだ。最後には伝話で養護院に確認までされたよ。
みんなの話では1時間もかからないってことだったのに、わたしは3時間だ。
その間メグちゃんとジョーちゃんはいつもと違う場所で興奮したのか、探索者支部の中を縦横無尽に飛びまわっていた。楽しそうで良かったよ。
メグちゃんは『酒場がにゃいの』、『荒くれ者がいにゃいの』、『美人受付嬢がいにゃいの』『カップルパーティにゃの。リア充爆発するの』、『水晶で魔力測定しにゃいの』、『ポーション高すぎにゃの』、『武器もアクセサリーも見れないの。カタログ販売にゃの』とみぃみぃ言ってたけどね。
わたしも今日から大人と同じ扱いになる。もう大人と言っても過言じゃないよ。レディー、淑女だ。
探索者になると[18歳未満でも大人と同じ権利を持てるけど、大人と同じ義務が発生する事][全て自己責任になる事]が探索者法で決まっている。未成年のわたしでも18歳以上の成人と同じような契約ができてしまうってことだね。
院長先生は「他人の保証人にはならない、サインをしない」「他人にお金を貸さない」「頼まれたら家の方針だと言って断るように」と教えてくれたよ。
世間には詐欺師や悪意を持って近づいてくる人も多いからって。女性や女の子を喰い物にする大人もいるんだって。わたしも気をつけないとね。
実は養護院の同期の清美ちゃん、由美ちゃん、智也、孝弘の4人も、ひと足先に探索者になっているんだ。院長先生は4人にもしっかり教えたそうだよ。
4人は、軍学校入学のための特別クラスに移ってから、中学校の先生の引率で、松高ダンジョンに潜っているんだよね。軍学校の入学試験の足切りがレベル15だから、レベル20まで上げるんだって。ダンジョンに行っても魔石や魔核は中学校の物になっちゃうから、お財布はさびしいままだそうだけど。
軍学校の競争倍率は例年20〜30倍なんだとか。さすが超エリート学校。
◇
宿敵たちの戦いをくぐり抜けて、目的の場所にたどり着いたわたしは、地面に座って荒い息を整えていた。
『きびしい戦いだったね』
「あーうー」
「みぃー」『ため池の前を走っただけにゃの』
『あのため池は宿敵の巣窟なんだよ! 宿敵がごろごろ、ぷかぷかしてるんだよ! 近づいたら危険なの!』
「だーうー」
「みぃー」『ただの透明スライムにゃの。美紀ちゃんにゃら簡単に撃退できるの』
『やれやれだぜ。メグちゃんは透明スライムの恐ろしさを知らないから、そんなことが言えるのさ』
わたしは肩をかっこよくすくめてみせた。一度やってみたかったんだー。すくめるって両肩を上げればいいんだよね? メグちゃんに残念な目で見られている気がするよ。
「みぃー」『美紀ちゃんはテンプレのやれやれだぜが言いたかっただけにゃの。もう中学3年生のお姉さんにゃんだから、中二病は卒業ちた方がいいの』
『わたし、中二病じゃないからね! 智也と同じじゃないよ』
わたしの抗議はメグちゃんに軽くスルーされてしまったよ。これは裏にアウターネットのアドバイスさんがいるね。わたしの行動が分析されてしまったようだ。




