48 美容品
島屋ダンジョン101階層の入口ホールから、夜の都市フィールドをメグちゃんとジョーちゃんといっしょに眺めているところだよ。
「おおきなシャドウがいるのー」
「みぃー」『普通のシャドウの2倍くらいの身長にゃの』
『身長が大きくならないわたしにわけてほしいくらいの成長ぶりだね』
「みぃー」『待ちにまったシャドウの上位種にゃの。たくさん魔核を集めて、マジックバッグをたくさん売るの。それで株をもっと買い増しするの』
「かいましなのー」
『アメリカのアッボル社だっけ。この前サザビール証券の担当者さんから、大量保有報告書の代理提出の話がきてたの』
「みぃー」『アッボル社にゃの。前世ではスマホを作った超有名な巨大企業だったの。だから、そのうち上がると思って買ってるの』
『この世界は80年前にダンジョンができたから、メグちゃんの前世の世界より30年くらい技術が遅れてるんだったよね』
「みぃー」『アドバイスさんがそう言ってたの』
『歴史が違ってるから、アッボル社はスマホを作らないのかも』
「みぃー」『スマホを作った超有名な社長さんが、もうにゃくにゃっていたの。だからスマホは作らにゃいかもにゃの。でもラノベテンプレの知識チートにかけるの』
「はいはーいなのー」
『ジョーちゃん、どうぞ』
「わたし、メグちゃんといっしょにスマホをつくってるのー」
『そういえば2人で魔法陣を描いたりして何かやってたね』
「ふっふっふーなのー。できあがるまでナイショなのー」
『じゃあできたらお祝いパーティーをするから教えてね』
「やったのー。パーティーなのー」
『アドバイスさんはアッボル社のことで何か言ってないの』
「みぃー」『投資は失敗も勉強ににゃるから、わたしが考えていろいろやったらいいそうにゃの』
『わたしの心にひびく言葉だー』
「みぃー」『まだにゃんぴ作戦、続けるの?』
『こうなったら、とことんいっちゃうよー。ナンピン作戦のためにがんばってデカシャドウの魔核を集めないとね。メグちゃん、ジョーちゃん。そろそろ行くけど準備はいい?』
「じゅんびOKなのー」
「みぃー」『わたしもOKにゃの』
『突撃ー』
「とつげきなのー」
「みぃー」『たくさん狩るのー』
わたしたちはグレーターシャドウを追いかけて狩り続けたよ。
101階層 レベル292 グレーターシャドウ
102階層 レベル305 グレーターフレイムシャドウ
103階層 レベル318 グレーターアイスシャドウ
104階層 レベル331 グレーターレッドシャドウ
105階層 レベル344 グレーターダークシャドウ
106階層 レベル357 グレーターイビルシャドウ
107階層 レベル370 グレーターデスシャドウ
108階層 レベル383 グレーターデバインシャドウ
109階層 レベル396 グレーターアビスシャドウ
110階層 レベル480 シャドウデミリッチ[ゲートキーパー]
マジックバッグの出荷を週6個から週10個に増やしてみたよ。夏鈴ちゃんは週20個になっても余裕だそうな。サザビール社の山本さんも10個でも足りないくらいだとさ。
◇
ダンジョン実習で島屋ダンジョンにきてるよ。入口ホールで装備の準備をしている時に、海里ちゃんがめずらしく長く話してくれたよ。
「親戚のおばさんが美紀ちゃんに会いたがってる。美容品を売りたい」
『あの美容品って薬機法で引っかかるから、売れないんじゃなかったっけ?』
「美容品は、アイテム鑑定ルーペで名前と効果が見れた。だから薬機法のダンジョン関連品条項を使える。それで売れるって言ってた」
『ダンジョン関連品条項って?』
「ポーションみたいなのを売る時の特例。成分がわからなくても売れる。臨床試験もいらない」
『そんな特例あったんだ』
「売る時にダンジョン関連品の表示がいる。アイテム鑑定ルーペで見た内容の明示も。買って使う人は自己責任。ダンジョンができて5年くらい経ってからできた特例」
『探索者協会の端末にも、自己責任って書いてあったよ。昔に民事訴訟があったとかなんとかも』
「その辺はおばさんがやる」
わたしはピコンとひらめいたよ。美容品の材料が宿敵の魔核だから、売れれば売れるほど宿敵が討伐されるということを。これはチャンスだ。逃したらいけないチャンスだ。
◇
「この魔鉄の板の魔法陣の上に宿敵、じゃなく透明スライムの魔核を乗せて、魔力を流すだけで、簡単に作れます」
宿敵の魔核1個が、ポッと音を立てて、やせ薬の錠剤10個に変わった。
わたしは海里ちゃんと海里ちゃんのおばさんの前で、美容品作りの実演をしているところだよ。
海里ちゃんのおばさんは、村上の分家筋の人で下村里江さんと言って、メグちゃん(アドバイスさん)の心の中チェックもクリア済みだよ。
「使う魔力量は1回あたり0.001スラーと少ないために、普通の人が丸1日作り続けても魔力不足になることはありません」
「みぃー」『プレゼン、練習通りだったの。完璧だったの』
『メグちゃんが手伝ってくれたおかげだよ』
「みきちゃん、かっこよかったのー」
メグちゃんとジョーちゃんが拍手喝采をしてくれた。プレゼンはメグちゃん(アドバイスさん)監修のもと、しっかり練習してきたよ。宿敵撲滅のためには労力は惜しまないよ。
スラーというのは魔力量の単位のことで、透明スライムの魔石1個の魔力量が1スラーと、単位の基準になってしまっているんだ。誰だ、宿敵を基準にしたの!
「すばらしいです。正直なところ、わたしは採算がとれるのはやせ薬とシミ消し薬の2つだけだろうと考えていました。この製造コストの安さなら、肌ハリツヤ薬や日焼け止め、基礎化粧品も採算がとれます」
その日のうちに里江おばさんの会社と製造法の独占販売契約を結んだよ。美容品の売り上げの1割が、わたしの取り分になるという好条件でね。不労所得の誕生だ。
契約にはお高い魔法契約書を使ったよ。これは里江おばさんの誠意だそうな。
製造用の魔法陣は、魔鉄の板を里江おばさんが準備して、わたしが1枚10万円で加工することに。
売れまくって、宿敵が世界から撲滅されることを祈っておくよ。
数年後の話だけど、売れ行きが良すぎたから野良宿敵の養殖が始まってしまって宿敵が激増するなんて、この時のわたしは考えてもいなかったんだけどね。養殖するんだったら逃がさないようにしてくれるかな!
ずっと里江おばさんが話していて、海里ちゃんはひと言も話さなかったから、あとで海里ちゃんに聞くと「おばさんがいると話さなくていい。楽」だって。
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