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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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34 金魚すくい

 今年も夏祭りの日がきたよ。準備に抜かりはないよ。お財布代わりの巾着70個(1000円入り)も、ちゃんと用意している。

 メグちゃんもジョーちゃんも、午後の夏祭りが楽しみみたいで、朝からお揃いの水玉模様の浴衣に黒金魚柄に金彩の入った帯、手には黒金魚の形をした巾着袋、足元はピコピコサンダルでピコフワしている。


「クロのなかまをふやすのー」


 ジョーちゃんは自分が食べられるようになったからか、最近は養護院で金魚のエサをよくあげているよ。入れすぎていたから、1日にあげていい量を決めたら、むーむー言って怒っていたけどね。


「みぃー」『今年はわたがちを食べたいの。2人といっちょにまわるの』

『ジョーちゃん、先に綿菓子を買ってから金魚すくいに行かない? 綿菓子はとっても甘いよー』

「あまいのー。わたがち、たべるのー」


 神社に着いたよ。今年も町内会の皆さんがボランティアで出してくれている出店は健在だ。境内に響く祭り囃子をバックに開始を宣言すると、みんな一目散に食べ物の出店に行ったよ。

 4歳の新ちびっこ4人組も迷わず、綿菓子の出店に向かったね。初めてのはずなのにと見ると、夏鈴ちゃんたち中学生組がちびっこたちを誘導していた。みんなにまかせておいても大丈夫そうだね。


『メグちゃん、ジョーちゃん、わたしたちもお祭りを楽しむよ』

「たのちむのー」

「みぃー」『たくさんまわるのー』


「ふわふわなのー」

「みぃー」『甘いのー。口の中に入れるとにゃくにゃるの』


 メグちゃんもジョーちゃんも自分の身体より大きな綿菓子にかじりついているね。2人とも綿菓子に埋もれそうだよ。


「みきちゃー、わたがちをぜんぶかうのー」

『わたしたちが全部買っちゃうと、祭りに遊びにきた他の子供たちが買えなくなっちゃうよ。ちょっとだったら大丈夫だよ』

「ほかのこがかえないのはだめなのー。ちょっとにするのー」

「みぃー」『わたちもちょっとおかわりを買っていくの』


  金魚すくいは今年も町内会長さんがやっていたよ。金魚すくいの挑戦者はまだ誰もいないね。


「1回お願いします」


『メグちゃんもやってみる?』

「みぃー」『わたちはわたがちを食べながら、のんびり観戦するの』


 ポイとお椀をもらったよ。ジョーちゃんがお子さまビニールプールの上をフヨフヨ飛んで獲物を探している。ジョーちゃんの目がどことなく鋭くなっているような気がするね。


「このちいさいクロにするのー」


 ビニールプールに2匹いる小さな黒金魚のうちの1匹だ。元気いっぱいにスイスイ泳いでいる方をあえて選ぶとは。あっぱれだよ、ジョーちゃん。

 ジョーちゃんがポイを持ってフヨフヨと金魚を追いかけ始めた。


「ここなのー!」


 ジョーちゃんの瞳がキラリと光って、バシャッと豪快に水しぶきがあがった。水しぶきもキラキラ光っているね。


「かくどをまちがえたのー。つぎなのー」


  ジョーちゃんのアシスタントのわたしは2枚目のポイをすぐに渡したよ。


「うごいたらだめなのー」

「すぴーどいはんなのー」

「おなわをちょうだいするのー」


「黒い金魚がほしいなら、とってあげるよ」


『ジョーちゃん、町内会長さんから救援の申し出がきたよ』

「じぶんで、がんばるの。これはちんけんちょうぶなの」

『真剣勝負なんだね。わかったよ、ジョーちゃん』


「ありがとうございます。もう少しがんばります」


「たいほなのー!」

「ふりーずなのー!」

「せいばいなのー!」


 ポイが30枚を超えたところで、黒金魚が君の熱意には負けたよ、と水面にフラフラ上がってきた。ジョーちゃんの瞳がキラリと光って黒金魚をポイッとすくい上げた。わたしはお椀でキャッチだ。


「やったのー! めちとったのー! ごようなのー!」


 満面の笑みのジョーちゃんがガッツポーズでフヨフヨ喜んでるよ。


『やったね、ジョーちゃん。大捕物だったよ』

「つぎはあの小さいクロなの。きょうはんちゃなの。おなわなの」


 ジョーちゃんはもう次のターゲットを決めていたよ。アシスタントなわたしはポイをそっとジョーちゃんに渡した。


 わたしたちはポイの枠に紙を貼っている町内会長さんに別れを告げて、ヨーヨー釣りに向かったよ。ビニール袋に入っている2匹の小さな黒金魚を、ジョーちゃんは誇らしげに見ているね。

 メグちゃんとジョーちゃんといっしょに、焼きそば、かき氷、お好み焼き、りんご飴、焼きそば、タコ焼きと出店のハシゴもしたよ。

 養護院の子たちも楽しそうにしていた。今年の夏祭りも大成功だったね。


 ジョーちゃんの黒金魚2匹は、養護院の大きな水槽にいれられた。クロの仲間だって。ジョーちゃんがまた水槽に張りついて見てるね。


『ジョーちゃん、そろそろ帰るよ』

「わかったの。かえるの」


 名残惜しそうなジョーちゃんを連れて、寮に帰ったよ。


 ◇


「本日未明、ホワイトハウスのリットン報道官が、来年1月に沖縄県の統治権を大日本帝国に返還すると発表しました。実現すれば83年ぶりの大日本帝国復帰となります」


 寮の和食朝ご飯、鮭の塩焼き、玉子焼き、ご飯、お味噌汁、お新香を、みんなでおいしくいただきながら、テレビを見ていると沖縄県返還のニュースをやっていたよ。


『メグちゃんもジョーちゃんも、鮭の塩焼きにマヨネーズなんだ』

「みぃー」『マヨラーの基本にゃの』

「つなまよも、おさかなにまよねーずなのー」

「みぃー」『美紀ちゃんもマヨネーズかけてみるの』

「おいしいのー」

『おいしいんだー』


 わたしもいつの間にかマヨネーズをかけていたよ。鮭の塩焼きにマヨネーズもおいしいね。ご飯が進むよ。


 ◇


 夏休み明け初日。撫子ちゃんと海里ちゃんと写しあった山盛りの宿題は、忘れずに持ってきたよ。写しあうだけでも大変だったからね。やっぱり宿題の量が多すぎだよ!


「みぃー」『だんちはみんな日焼けちてるの』

「わたちもひやけちたいのー」

「みぃー」『わたちたちは日焼けちにゃいそうにゃの。でも日焼けはお肌の大敵だから、ちょうどいいの。そばかすもちみもへっちゃらにゃの』

『ジョーちゃん、顔クロになると最新トレンドファッション軍団の仲間になっちゃうよ。ヤマンバだよ』

「ヤマンバは、やーなの」


「やっぱり青髪派がいなくなっていますわ」

「金髪派と赤髪派が増えた」

「他のクラスでもそうですわ」


『ジョーちゃんの金髪仲間が増えてるよー』

「なかまじゃないのー! もうーなのー。みきちゃん、いじわるなのー。めーなの。めーなの」

『ごめんね。ジョーちゃんがかわいかったから、からかってしまったの。もうしないから許して』

「むーなの、むーなの」

『ごめんね。本当にごめんね』


「美紀ちゃん、何を拝んでますの? それよりあの噂は本当だったみたいですわ」

「噂?」

「陸軍の青髪派閥の領袖が退役して、下も失脚したらしいのですわ」

「あー陸軍でいろいろあって貴族籍剥奪もあるって話だよね。青髪くんはまだきてないけど、どうしたんだろうね」

「青髪くんなら、金髪に変わってあそこにいますわ」

「マジで?」

「マジ。あの黒板のところで騒いでる」

「ほんとだー」

「金髪派閥に入ったのですわ」

「なんだかびっくりだよ」


 ◇


「今年の学校対抗戦代表選抜大会は、総監督の大久保先生の要望で中止になりました。H組からは金城くんが1年生代表選手の補欠に選ばれました」

「川崎、なんで俺が入ってないんだ?」

「赤間くん、学校では先生と呼びなさい」

「なんでだって聞いてんだよー!」

「机を蹴るのを止めなさい。大久保先生が選びました。大久保先生に聞きなさい」


「みぃー」『赤髪が逆上ちてるの』

「どっかいったのー」


 赤髪くんは、周りの机に八つ当たりしながら教室を出ていったよ。


『川崎先生、冷静だねー』

「みぃー」『本当にゃの』


「金城くんは、9月と10月のダンジョン実習は免除となります。今日の午後に視聴覚教室に行ってください」

「先生、俺が補欠ってどういうこと?」

「大久保先生が決めました。大久保先生に聞きなさい」

「金城くん、机を叩かないように」


「ダンジョン実習のパーティの変更は、決まったら提出してください」


 ◇


「金髪くんも赤髪くんも、荒れてたねー」

「学校対抗戦は、もともと1年生300人の中で、選手7人補欠7人の狭き門だったのですわ」

「わたしや撫子ちゃんや海里ちゃんみたいに、最初から全然関係ない生徒もいるんだけどねー」

「生産魔法だから最初から対象外なのですわ」

「対象外の方がいい。楽」


 ◇


『生産魔法の夏鈴ちゃんにも、探索者高校の実態をちゃんと教えておかないといけないね』

「みぃー」『夏鈴ちゃん、探索者免許をとったの』

「たんさくちゃこうこう、くるのー?」

『わたしは普通の高校の方がオススメかな。ここは軍閥貴族の子女が多いし』

「かりんちゃ、れべるあげたいっていってたー」

「みぃー」『レベルは加工魔法にも役に立つから上げておいた方がいいの』

『そうだね。今度レベル上げに連れていってあげよう。決めた。そうするよ』

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