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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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3 わたしの進路

 朝起きても情報板は消えてなくて、前が見えにくいねと思ったら、情報板がスッと左に移動してくれた。気が効くね、情報板。

 念話を使わなくても〈右〉〈上〉〈回転〉と思っただけで自由に動いてくれるよ。


「ラジコンで遊ぶのってこんな感じなのかも。楽しいー」

「わたしからは10mくらいしか離れられないみたいね」

「拡大。縮小。できたね」

「分裂。合体。これもできるんだ」

「10枚に増加。なんでもできるね」

「10枚を一度に動かすと、頭がこんがらがるよ」


 情報板を飛ばすのがおもしろくて、そのまま遊んでいたら、養護院の畑当番の時間を過ぎていたみたいで、ちびっこたちの奇襲を受けてしまった。反省反省。


「美紀ねえちゃん、おそいー」

「美紀ねえちゃん、もう行くよ〜」

「美紀ねえ、ちゃんと並んで。手をつないで」


 情報板は、他の人は見えないし触れない。ステータスボードと同じ不思議物体だね。


 ◇


「魔物がダンジョンから出てくるのは魔物氾濫の時だけだ。それ以外ではダンジョンから魔物が出れないようになっている。ダンジョンで魔物を捕まえて外に持ち出そうとしてもモノリスで弾かれる。ここはテストに出るぞ。魔物を眠らせていても、仮死状態にしても同じだ。ダンジョンができて80年間、日本でも海外でもダンジョンからの魔物の持ち出し例はゼロだ……」


 中学校のダンジョン学の授業を聞き流しながら、わたしは進路の見直し。ノートに書いてみるよ。わたしの人生の再設計だ。


 ○1つ目の進路は[陸軍学校]

 大日本帝国陸軍学校は全国に50校ほどあって魔物氾濫や国防のための学校。入学すれば軍属扱いになって、給与も出るし、学費も無料。おまけに寮に入れば衣食住が全て支給される。お得だ。

 ウチの隣の松高基地の中にも学校があるよ。お隣さんだ。エリートコースで良スキル良成績が入学の最低条件。軍閥貴族の子たちは裏口入学しているという黒い噂も。わたしが憧れていた進路。刻印魔法スキルでダメになったけど。


 ○2つ目の進路は[探索者高校]

 ダンジョンを探索する民間探索者を育成する学校。全国に300校ほどあって高度探索者の増強が目的。学費は安くて、寮も奨学金もある。戦闘系スキルか良生産スキル持ち、またはレベル10以上の者が入学可能。もちろんわたしは無理。


 ○3つ目の進路は[普通の高校]

 4年前までは、わたしたち孤児でも補助金や奨学金で普通の高校に進学できるようになっていた。クーデターで軍事政権になってからは、普通の高校の補助金が減って奨学金も出なくなっちゃった。こういうご時世だから魔物と戦える人材を増やすんだってさ。わたしたち孤児にとっては世知辛い世の中だね。


 ○4つ目の進路は[会社に就職]

 自分で選んだ会社の就職試験を受けて、採用されたら働ける。採用されない場合でも活躍をお祈りしてくれる。小学生に見えないこともないわたしが採用されるか微妙。


 ○5つ目の進路は[探索者になって自活]

 15歳から探索者になれるから、ダンジョンで魔物を倒して、魔石と魔核を売って生活する。刻印魔法スキルだし魔物を倒せる腕力もないよ。


 ○6つ目の進路は[軍に志願入隊]

 兵士に志願すれば衣食住は支給。給料も出るけど、身長157センチ以上ないと入隊検査で不合格。わたしの身長ではちょっぴり足りない。つま先立ちしても無理。



 ノートに書いたらわかりやすいね。ここでわたしはピコンとひらめいたよ。わたしには情報板があったんだ。聞いたら何か教えてくれるかも。


『わたしが魔物を倒す方法はありますか?』

 [アカウントがロックされました。管理者に問い合わせてください]

『わたしがお金を稼ぐ方法はありますか?』

 [アカウントが消去されました。管理者に問い合わせてください]


 アカウントがロックで消去だって? どういうことさ? 管理者にどうやって問い合わせるの? やっぱり自分で考えないとダメ?

 わたしがお金を稼ぐ方法、何かないかな? 就職できるところを探すしかないかー。あと1年で身長が20センチくらい伸びてくれたらいいのに。待ってるよ、わたしの身長。頼むよ、わたしの身長。

 小学4年生のプールで溺れた時から身長が伸びなくなったよね。今でもはっきり思い出せるよ、わたしの宿敵、透明スライム!


 ◇


 小学4年生の夏、養護院のみんなと行った市民プールで潜水ごっこをして遊んでいたら、プールの底で顔に何かぶつかったの。顔が痛かったから、足をついて立ち上がろうとしたけど、顔がプールの底のほうから離れなくてダメ。プールの底を手で押してもダメだったの。

 顔に何かくっついていてプールの底とつながっていたの。手ではずそうとしてもはずれなかった。

 バタバタしているうちに息が苦しくなって、もっとバタバタ。

 そんな時に目の前に誰かの足がきたの。わたしは両手を伸ばして、その毛深い足の足首をつかんだ。足が動いても一生懸命、手を伸ばした。

 もっと息が苦しくなって、周りの水がキラキラ光ってきれいだった。その後のことは意識が無くなったみたいで憶えてないよ。


 セミの鳴き声で目が覚めたら、見なれた養護院の保健室のベッドの上だった。見なれた佐藤先生も見えた。茶髪ショートボブのおばちゃん先生。今でも通いで養護院にきてくれている。


「美紀ちゃん、良かったー。気がついたのね。どこか痛いところはない?」

「顔と首がちょっと痛いです」

「市民プールに透明スライムが入り込んでいて、美紀ちゃんを攻撃したの。清美ちゃんたちが心配していたわ」

「スライムがプールに」

 透明スライムめ!

「近くにいた方と監視員さんが助けてくれたの。呼吸が止まっていたそうよ。本当に良かったわ」

 毛深い足の人、ありがとう。

「呼吸が止まって」

「助けてくれた方には、院長先生がお礼に行ってくれたわ」

 院長先生ありがとう。いつも忙しいのにごめんなさい。


 これがわたしの宿敵透明スライムとの出会いだった。

 この後なぜか宿敵との遭遇が増えたんだよね。小学校の横のため池に野良透明スライムが住みついたせいだったけど。宿敵に何度も何度も帰宅を邪魔されて、撤退を余儀なくされたのは苦い思い出だよ。

 宿敵たちがぷかぷか用水路を流れてきた時には、逃げても逃げてもぷかぷか追いかけてきて、もうダメかと思ったね。泣いてないよ。目に水が入っただけ。

 ここ2年5ヶ月ほどは、中学生に成長したわたしを恐れたのか、宿敵が現れなくなってひさしいよ。


 ◇


 同室の清美ちゃんに進路相談してみた。清美ちゃんは水魔法スキルで軍学校を目指すから、お給料でわたしを養ってくれるって。うれしいけどそれはダメだ。わたしはもうすぐ大人だから自立した女性になるんだ。

 同期の由美ちゃんにも進路相談してみた。火魔法スキルで軍学校を目指すから、お給料でわたしを養ってくれるって……

 同期の中二病智也にも進路相談してみた。光魔法スキルで魔王が目覚めるから、オレに任せろだって……

 同期のノゾキ魔孝弘にも進路相談してみた。影魔法スキルで軍学校に入るから僕を頼ってだって……


 養護院に差し入れにきてくれていた去年卒院の佳代ねえと哲雄にいにも聞いてみた。

 佳代ねえは氷魔法スキル、哲雄にいは土魔法スキルで軍学校に進んだエリートだよ。お給料をもらっているからいつでも頼ってきてだって。

 差し入れのアンパンおいしかったです。ごちそうさまでした。


 みんな良攻撃魔法スキルだね。うらやまー。良攻撃魔法スキルなんて普通は100人に1人くらいなのに。びっくりだよ。

 よく考えたら去年や一昨年、その前もその前の前も、みんな良攻撃魔法スキルで軍学校に進学してたよ。

 なぜかわたしだけ違うね……

 スキルガチャで良いスキルをもらうには、お祈りする、断食する、徹夜する、魔物を先に倒しておく、好きな子に告白する、神社でお祓いをする他、いろいろな噂があったんだよね。

 わたしの流派は徹夜お祈り派だったけど、消しゴム徹夜派に鞍替えすべきだったかも。断食派は絶対拒否だ。


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