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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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2 養護院

「九州奪還作戦であるが、我が帝国陸軍の精兵たちの活躍により、大分で橋頭堡を築くことに成功した。今後も魔物の殲滅を続け、前線基地の構築を進める。陸軍司令部は各地から戦力を集め……」


 翌日の土曜日、わたしたちは養護院の畑でトマトを植えているところだ。おいしく育てよ君たち。隣の松高基地のスピーカーからは、偉い人の訓示がBGM代わりに流れているね。

 ちび子猫メグちゃんと小さな赤ちゃんは、晩ご飯で起こされた時にはいなくなっていたよ。

 養護院のちびっこたちはわーきゃー楽しそうだけど、ベテランなわたしたち中学生組は、ちびっこたちの面倒を見ながら華麗に作業を進めていく。


「みんなこっちから順番に植えていってね。夏にはおいしいトマトが実るからね」

「ぼくトマトきらいー」

「わたしはすきー」

「いたっ」

「美紀ねえ、どじー」

「みきねえちゃ、だいじょうぶ? あしもとをちゃんとみないとダメよ」

「荷物が大きくて、ちょっと見えなかっただけだから」

「美紀ねえちゃん、小さいから」

「小さくないよ。ちょっと発育が遅れているだけ」

「ぼくがもってあげるー」

「わたしもー」

「ありがとう。みんなで持っていこうか」


 わたしはちびっこたちと協力して手際よく華麗に今日の作業を終わらせたよ。

 養護院に戻ったら、下の子たちが遊ぶのに、つきあってあげる。しかたなくね。やったーー、今日はボードゲームだ。


「みきねえちゃ、どべー」

「みきねえちゃの負け」

「次こそわたしが勝つから」


 思わず熱中してしまったよ。ボードゲームの次はテレビだ。

 テレビは遊び部屋に2台、食堂に2台、談話室に2台の合計6台。それぞれ4、5歳用テレビ、6、7歳用テレビ、……14、15歳用テレビと年齢別にわかれている。

 チャンネル争いのじゃんけんは負け越し中だ。わたしはアニメが見たいけど、清美ちゃんたちはドラマやバラエティ番組を見たがる。今日も小さな子たちのところにお邪魔してアニメを見させてもらおう。


 とんでもないことになった。今日のテレビは軍事特番だらけだ。何があった帝国軍。テレ西以外のチャンネルは中継や報道特番をずっとやっている。そのシワよせはわたしにきたよ。


「みきねえちゃ、くーらーむーん、みせてー」

「ごめんね。わたしも見たいけどね。魔道甲冑リーグ中継みたいなものだからね」

「もぉ〜。むーんにかわっておしおきよ。すた〜めておしゃわ〜」

「いたいよ、久美ちゃん」

 テレビ局め! わたしにかわってお仕置きされろ!

「みきねえちゃ、迷探偵コナキにチャンネルかえて〜」

「ごめんね。わたしも見たいけどね。魔道甲冑リーグ中継みたいなものだからね」

「わ〜ん、みきねえちゃがいじわるする〜」

「蓮くん、いじわるじゃないからね。全部テレビ局が悪いんだよ」

「わ〜ん」

 テレビ局め!


 お風呂は時間が決まっている。ちびっこたちの面倒を見ないといけないから、のんびりできないよ。


「みきねえちゃ、みみのうしろもあらうのよ」

「みきねえちゃ、おそい〜」

「おそいとまたのぞきまたかひろがきちゃうの」

「美紀ねえちゃん、かたまでつかって〜100かぞえて〜」


 この養護院には4歳から15歳の子供が60人ほどいる。養護院の子供の半分ほどは、ダンジョン関係で、身寄りをなくした子たちだ。親戚があとで現れて引き取られていく子もいる。


 ◇


 消灯時間を過ぎた養護院はさっきまでの喧騒が嘘のように静まり返っている。わたしは学習室で勉強のフリをして読書中だ。マンガがちょうどいいところだったから、しかたなかったんだ。

 今夜の学習室はわたし1人だけ。スキルを憶えたことだし、ここはあれをやるしかないね。小学生男子に大人気のトラコンポールごっこ。誰でも一度はやったことのあるはずのあれだ。今度こそいけるはず。

 両手を合わせて後ろから前にグッと突き出す。この時の腰のヒネリが重要だよ。ここでカッコよさが決まるからね。


「カメカメ歯ーーー」ポムん♪


 手がぼんやり光ったよ。カッコいいね。どうやって光った、わたしの手?

 そんなことは後回しだ。なぜかハムスターサイズのちび子猫メグちゃんと小さな赤ちゃんも出てきたよ。わたしはマンガをそっとノートの下に隠しながら、カメカメ歯ごっこがバレてないことを祈った。もう大人な中学生女子にあるまじき姿だからね。


「こんばんは、メグちゃんと赤ちゃん」

「だぁー」


 つぶらな黒い瞳の赤ちゃんがわたしの肩の上に飛んできた。耳に吸いついてチューチューしている。わたしはご飯じゃないよ。


「みぃー」『こんばんはにゃの。急に話ちかけたら美紀ちゃんが困ると思ったの。だからひとりににゃるのを待ってたの。ラノベで勉強ちたの。転生者のたしなみにゃの』

「空を飛んで話す子猫なんて、みんなが見たら、大騒ぎになっちゃうねー。気にしてくれたんだ。ありがとね。小さいのにえらいねー」

「みぃー」『ふっふっふーにゃの。あの赤ちゃんもわたちも、にゃぜかまわりの人には見えてにゃいの。声も聞こえてにゃいの。見えるのも聞こえるのも美紀ちゃんだけみたいにゃの。だからそれは安心にゃの』

「そっかー。ということは今もわたしが宙に向かって1人で話しているように見えてるんだ……それはまずいね。とってもまずいよ。危うく中二病な智也みたいになるところだったよ。ぎりぎりセーフだね」

「みぃー」『良かったの。美紀ちゃんは念話を憶えたらいいってアドバイスさんが言ってるの。そうすれば周りに人がいても、わたちたちと話せるの。簡単にゃの。今おちえるの』

「念話! かっこいいねー。お願いするよ」



『ありがとね。なんとかできたよ。魔力の線を相手に伸ばして、つむじのところから声を出す感じだね』

「みぃー」『できて良かったの。あとは練習あるのみにゃの。にゃれたらちぜんにできるようににゃるそうにゃの』

『メグちゃんにはいろいろ聞きたいことがあったの』

「みぃー」『何でも聞くの。わたちにはアドバイスさんがついてるの』

『この赤ちゃんの名前は?』

「みぃー」『名前はまだないの。美紀ちゃんが付けてあげればいいの』

『わたしが? いいのかな。この子は男の子? 女の子?』

「みぃー」『女の子にゃの。美紀ちゃんが好きみたいだから、きっと喜ぶの』


 赤ちゃんの名前、名前……この子は金髪黒目で前世は異星の聖女様。ステータスボードに変なことが書かれていたね。ギフトの[霊種人形幼生体 (情報板)]と[霊種猫形幼生体 (アウターネット)]。これも聞いておかないと……


『決めた! 赤ちゃんの名前はジョー。ジョーにするよ!』

「みぃー」『ジョージョーにゃの。奇妙な探検にゃの』

『ジョーだよ。若草物語の次女からとった由緒正しい名前。長女はメグちゃんで、妹だからジョーちゃん。じょうほういたのジョじゃないからね』

「みぃー」『わたちの妹にゃの。ジョーちゃんにゃの。わたちもお姉ちゃんににゃったの。お姉ちゃんとちてジョーちゃんの面倒をみるの』

「ジョーちゃんが、わたしの耳をずっとチューチューしてるけど、お腹空いてるのかな? わたし、お乳出ないよ」

「みぃー」『わたちとジョーちゃんのご飯は魔力と霊素って聞いたの。普通のご飯もお菓子も食べられにゃいの。アドバイスさんがそう言ってたの。魔力と霊素もおいちいけど、やっぱりまたグラタンを食べたいの。大好きだったの』

「だぁー」

『グラタンかー、わたしも一度だけ食べたことがあるけど、おいしかったー。もう一度食べてみたいねー』

「みぃー」『グラタンおいちいよねー』

「むぅー」


 なんだかジョーちゃんが荒ぶり始めたよ。わたしのほっぺたを頭でぐにぐにしている。どうしたんだろうね。グラタン食べたいの?

 ハムスターサイズの小さな小さな赤ちゃんを左手に乗せてあやしながら、右手の人差し指で背中をそっとなででみた。


『ジョーちゃん、どうしたの? ほ~らヨシヨシ』


 今度はきょとんとして、じっとわたしを見てるよ。つぶらな瞳がまんまるだ。にらめっこかな。ふにゃと笑った。かわいい。


「きゃーう、うきゃー」

「みぃー」『ジョーちゃんはもうご飯はいいみたいにゃの。そろそろ眠くなってきたみたいにゃの。寝る子は育つの。わたちも活動限界が近いの』

「だあー」

『生まれたばかりだったね。夜はまだ寒いからタオルで布団でも作る? ハンカチの方が肌ざわりがいいかな?』

「みぃー」『ジョーちゃんの情報板領域の中に入って寝るから大丈夫にゃの。ぬくぬくふわふわにゃの。アドバイスさんが美紀ちゃんにこれを渡せって言ってるの』


 ポムん♪という音がして、目の前に20センチ四方の半透明の黒い板が出てきたよ。ステータスボードの何も書かれていない物みたいな感じだね。


「みぃー」『これは情報板っていうの。ジョーちゃんの能力で作っているみたいにゃの。これに念話で聞けばアウターネットの情報を表示できるってアドバイスさんが言ってるの。他の人には見えないち、さわれにゃいそうにゃの』

「だーうー」

『ジョーちゃんの能力で情報板……アウターネット……』

「たー」

「みぃー」『使ってみるといいそうにゃの。おやすみにゃさいにゃの』

「あーうー」

『おやすみなさい』


 ポムん♪という音がして2人は見えなくなった。情報板?がわたしの目の前に浮いてるよ。


『……情報板って何なのさ?』


 [情報板

 情報板の触れた物体及び情報体の情報や情報板が受信した情報を任意に収集し蓄積する。情報を任意の形のエネルギー物質で出力する。エネルギー物質は情報板領域本体のエネルギーで構成する。意識体からの情報収集は意識体の了承が必要。意識体田中美紀と魔素情報体アリエルの癒着に因る意識体田中美紀の仮死状態時の惑星生命体クローエイミリルの干渉において副触手の尖部吸収で発生した魔力霊素集合がダンジョンスキルシステムの干渉を受け誕生した霊素体]


 黒い板に白い文字がびっしりと表示されたよ……ごめんなさい、日本語が難しすぎて何を書いてるかわからないです。日本語でお願いします。


『情報板はいいや。刻印魔法スキルって何かな?』


 [刻印魔法スキル

 物体情報体意識体エネルギー物質に任意の魔法陣魔法式を自身の魔力エネルギーを使用し刻印し任意の魔法効果を与えるスキル。ダンジョンスキルシステムコアが意識体田中美紀の肉体の脳部に書き込んだ刻印魔法情報の総称]


 ……刻印魔法スキル、君がわたしの脳に書き込まれたのはわかったよ……

 どうしようか、これ。いいや、もう寝よう。


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