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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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29 一時撤退

「美紀ねえ、わたしのスキル、加工魔法だったの。軍学校に行けない。どうしよう」


 養護院のひとつ下の夏鈴ちゃんが不安そうにたずねてきたよ。今年のスキルガチャで、三つ子が良攻撃魔法に、夏鈴ちゃんは加工魔法になったんだって。

 夏鈴ちゃんは、去年悩んでいたわたしだ。


「夏鈴ちゃん、心配しなくていいよ。加工魔法スキルは企業にひっぱりダコの良生産魔法スキルだからね。高校に行くなら、奨学金を出してくれる企業もあるの。自分で何か作って売ったお金で高校に通ってもいい。レベルを上げて探索者高校に行ってもいい。就職するなら院長先生が紹介してくれるんだって。それがダメでもわたしが養ってあげるよ。これでもいっぱい稼いでいるからね」

「ありがとう。美紀ねえ」


 夏鈴ちゃんは、泣き出してしまったよ。


「かりんちゃー、ないてるのー」

「みぃー」『安心ちてにゃいちゃったの』

「あんしんなのー?」

「みぃー」『ほっとちたの』


「加工魔法の練習にはこれを使ってみて」


 泣き止んで目が真っ赤で鼻水ズルズルの夏鈴ちゃんに、持っていたレベル60台の魔核を100個渡したよ。


「こんなに……美紀ねえは何かほしい物ある?」

「そうだね。バッグかな。バッグだったら高く買い取るよ」

「加工魔法の練習だからいらないよ」

「わたしには秘策があるの。上手くいくかわからないから、まだ言えないけどね。だから受け取って進学に使ってね」

「どんなバッグがいい?」

「そうだねー。どこかのブランドバッグのデザインをいろいろ適当に真似てじゃなくてリスペクトして高級そうなバッグにしてみて」

「わかった。デザインをパクれば、じゃなかったコピーすればいいんだね」

「リスペクトだよ。リスペクト。デザインはいろいろ混ぜてね。魔鉄やミスリルを使うならわたしに言ってね」


 ◇


『とおー』

「とおーなのー」


 わたしたちは島屋ダンジョンの南側の塀を華麗に飛び越えたよ。改札機は華麗にスルーだ。メグちゃんのあきれ顔がちょっと解せないけど。



「こんにちはー。買い取りお願いしまーす」

「お前、ランク6に上がったぞ」

「おー、ランク6探索者。とうとうわたしも中堅探索者に」

「中堅探索者でも上の方だ。そろそろ抑えておかないとバカに目をつけられるぞ」

「わかりましたー」

「お前、これを売るのか? またランク上がるぞ」

「まずいですか」

「これ1回くらいならランクを上げないようにできるがどうする?」

「お願いしまーす」



『おウチに帰るよー。メグちゃんもいっしょにやろうよ』

「みぃー」『美紀ちゃんがそこまで言うならちかたにゃいの。わたちもやるの』

『とおー』

「とおーなのー」

「みぃー」『とおーにゃのー』


 ◇


 ダンジョン実習で空いた午後を使って、39階層でシェードの魔核を集めたり、階層攻略を進めたよ。

 わたしには撫子ちゃんと海里ちゃんを、島屋ダンジョンに連れてきた責任があるからね。このままだとレベルが追いつかれそーとかじゃないよ、本当だよ。


 41階層 レベル59 シャドウキラービー

 42階層 レベル61 シャドウスパイダー

 43階層 レベル63 シャドウウルフ

 44階層 レベル65 シャドウタイガー

 45階層 レベル67 シャドウホブゴブリン

 46階層 レベル69 シャドウオーク

 47階層 レベル71 シャドウバイパー

 48階層 レベル73 シャドウスセンチビート

 49階層 レベル75 シャドウスコーピオン

 50階層 レベル83 シャドウワイト[ゲートキーパー]

 51階層 レベル78 シャドウブラッディベア

 52階層 レベル81 シャドウオーガ

 53階層 レベル83 シャドウクラブ

 54階層 レベル84 シャドウトレント

 55階層 レベル87 シャドウガーゴイル



 41階層からは黒い太陽、青い空、白い雲、そして鬱蒼とした暗い森だった。見通しが悪いから大変だったよ。森だから歩きにくいし。

 51階層からは沼地だった。足がズブズブ埋まって歩くのがもっと大変になったよ。


 ◇


 わたしが55階層の入口ホールを出て、沼地をズブズブもたもた歩いている時に、シャドウガーゴイルが4体飛来してきたんだ。


 〈シャドウガーゴイルの頭、攻撃〉✕4


 魔力たっぷりライトアロー攻撃が当たったのに4体とも倒せなくてね。ガーゴイル4体はブレス攻撃しながら、急速接近してきたんだ。

 2体分のブレスは「うひゃあ」とよけられたけど、ちょっとの時間差で放たれた残り2体のブレスは直撃コース。それをジョーちゃんが障壁魔法で防いでくれてセーフ。

 ライトアローをもう一度当てて4体は倒せたけど、戦闘に気づいた周りのシャドウガーゴイルが飛んで集まってきて、さあ大変。

 ライトアローを連射モードに切り替えて倒していたけど、シャドウガーゴイルは1発被弾した瞬間にブレスを撃ってくるから、どうしてもブレスをよけたりと防御の手間が増えて、少しずつ不利に。戦いはやっぱり数だね。


『メグちゃん、ジョーちゃん、一時撤退するよ』

「てったいなのー」

「みぃー」『まだきてるの』


 盛大にファイヤーボールを爆発させて、目くらましをしながら入口ホールに逃げてきたよ。


 わたしのモットー[一撃瞬殺]ができなかったから、戦力強化が急務だね。

 ライトアローは初級攻撃魔法で、魔力を過剰注入してもこれ以上攻撃力が上がらないから、やっぱり中級攻撃魔法が必要だよ。

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