28 ダンジョン実習の改善
「美紀ちゃん、これどうぞですわ」
「短剣?」
「わたしと撫子ちゃんが作った」
「この前のレベル25の魔核をわたくしが加工魔法で加工して、海里ちゃんが鍛冶魔法で作った物ですわ」
「美紀ちゃん、武器持ってない。持っていた方がいい」
「ダンジョンで持ってないとバカが襲ってくるのですわ。レベル上げやマジックバッグを借してくれたお礼でもあるの」
「心配してくれたんだ。ありがとね。大切に使うよ」
女子寮の1階の談話室に、座学の宿題のために集まったら、撫子ちゃんと海里ちゃんが短剣をプレゼントしてくれたよ。
「みぃー」『良かったの。やっと美紀ちゃんが武器を装備するの』
『わたしは魔法で攻撃しているからね』
「みぃー」『魔法使いも杖を装備ちてるの。ラノベでも武器を持ってない探索者はいにゃいの』
『ほら武闘家、拳闘士とか』
「みぃー」『いたの。盲点だったの』
「むーなのー、むーなのー」
『ジョーちゃんがご機嫌斜めになったね。短剣を見てダンジョン実習を思い出しちゃったかな』
「みぃー」『あれはわたちも嫌だったの』
『わたしも嫌だったよ。テレビも見れないし、眠る場所もトイレもすごく大変だし、メグちゃんやジョーちゃんとも遊べないし。10日間もずっと』
「そうなのーあそべないのー」
「みぃー」『やっぱり夜はおウチがいいの』
「おウチがいいのー」
『ダンジョン実習は高校の授業だからね……ちょっと待ってね。レギオンの転移秘宝って撫子ちゃんや海里ちゃんといっしょに転移できる?』
「みぃー」『わたちたちはいっちょに転移できるけど、人間はできにゃいの。ひとりちか転移保護できにゃいそうにゃの』
『そっかー……だったら2人をアイテムボックスに入れて転移できる?』
「みぃー」『できるの。アドバイスさんも2人にモノリスの転移登録やレギオンの転移秘宝を使っているところを見られにゃければいいそうにゃの。あの2人は生産魔法だち、心の中も問題にゃいそうにゃの。伝達禁止の魔法契約書を使えば、わたちとジョーちゃんがアバターを見せても大丈夫だそうにゃの』
『心の中……。メグちゃん、ありがとね。アドバイスさんにもお礼を言っておいて』
「みぃー」『ジョーちゃん、次のダンジョン実習はお昼だけにゃの。夜はいつも通りおウチにゃの。良かったの』
「おウチなのー。よかったのー」
『まだ決まってないよー。2人がOKしたらね』
「だめなのー。むーなのー」
『ジョーちゃん、大丈夫だよ。わたしの一番大切なのはジョーちゃんとメグちゃんだからね。ダメだったら他の方法を考えるからね』
「わたちもみきちゃーたいせつなのー」
わたしの大人な頭脳が、シミュレーションを繰り返して、完璧な撫子ちゃんと海里ちゃんの説得方法を編み出したよ。作戦名は[鉄雄にいが言っている作戦]。撫子ちゃんが信頼しているっぽい鉄雄にいの名前を前面に出した作戦だ。いくよーやるよー。
◇
「次のダンジョン実習は、島屋ダンジョンにしてみない」
「あそこは魔のダンジョンですわよ。入口ホールから出たら大変なことになるそうですわ。入って1時間もしないうちに逃げ出してくるか、帰ってこないそうですわ。軍も避けてるそうですわ」
魔のダンジョン……。初めて聞いたよ。いけない説得説得。
「大丈夫、大丈夫。わたしも何回も行ってるし」
「そうなんですの。わかりましたわ」
「わかった。島屋ダンジョン行く」
あれ?? もう終わり? 鉄雄にいの名前の出番がなかったよ。まあいいか。次は魔法契約の話だ。こっちが本命だからね。
「それでね。島屋ダンジョンに行く時は、島屋ダンジョンの中で見聞きした内容を、他の人に伝達しないという魔法契約を結んでほしいんだよ」
「わかりましたわ」
「わかった」
「えーと、いいの? 魔法契約だよ。行動が縛られてできないやつだよ」
「いいですわ。美紀ちゃんの言うことですわ」
「いい。信じてる」
2人は何でもないように宿題を写し続けているよ。
なんだか拍子抜けしちゃったよ。鉄雄にい、出番がなかったね。
でも2人とも騙されやすそうな気がしてきたよ。心配になってきたから、わたしが院長先生に教わったことや、スキンヘッドおじさんに聞いたことを伝えておこう。かわいい女の子を喰い物にする大人がいそうだからね。
◇
撫子ちゃんが魔法契約書にサインをすると赤い魔法陣が浮かび上がって、契約書が赤い光に変わった。光はわたしと撫子ちゃんの頭に吸い込まれていった。
初めて見たけど、なんだかきれいだね。
海里ちゃんも同じようにサインをしてくれた。
「2人ともちょっと目をつむってみて」
「つむりましたわ」
「つむった」
周りを再確認して2人をアイテムボックスに収納したよ。あとはいつものように自分の部屋からダンジョンに転移だね。
◇
「もういいよ。目をあけてみて」
「?……ダンジョンですのーー!」
「みぃー」『海里ちゃんのいつもの眠たげな目が丸くにゃってるの』
「まんまるなのー。ぱちくりちてるのー」
『メグちゃん、ジョーちゃん、もうすぐ出番だから準備しておいてね』
「じゅんびおーけーなのー」
「みぃー」『いつでもいいの』
「ここは島屋ダンジョンの31階層だよ」
「31階層……」
「この階層の魔物はシャドウアルミラージ。通称黒ウサギ。レベル41」
「レベル41……」
「黒ウサギは松高ダンジョンの白ウサギと違って、連携して陽動を仕掛けてきたりするから気をつけて。一番厄介なのは影に潜っていて、影から飛び出してくること。対処が難しいから、助っ人を呼んでいます」
『メグちゃん、ジョーちゃん出番だよ』
「助っ人のメグちゃん、ジョーちゃん、かもーーん」
「みゃーー」『刮目してみるの。必殺影うつちみの術にゃのーーー!』
「だーー」
いつものジョーちゃんがタカのポーズ、メグちゃんの太の字ポーズが炸裂だ。後ろが爆発、煙がモクモクだ。わたしもいつも通りパチパチ拍手だ。2人ともがんばれーー。
「なんですの。急に爆発が、煙ですわ」
「小さな赤ちゃんと赤ちゃん猫」
「みぃー」『わたちはメグにゃの。情報担当と魔石や魔核を拾う担当にゃの。よろしくにゃの』
「頭の中に声が聞こえますわ」
「みぃー」『念話にゃの。これでみんなとはにゃすの』
『わたしもダンジョンの中では、こうやって念話で話すからね』
次はジョーちゃんの番だけど、わたしの後ろに隠れてモジモジしてるよ。ちょっと顔を出したね。
『この子がジョーちゃん、今はちょっと人見知りしているけど、みんなを守るために障壁を張ったり、魔石を拾うお手伝いをしてくれるんだよ』
「浮いてますわー、小さいですわー、かわいいですわー」
「びっくり」
撫子ちゃんと海里ちゃんに装備をつけてもらって、入口ホール周りで少し様子見。大丈夫みたいだったから草原のところで積極的に黒ウサギ狩りをして、午前中で終わり。2人がレベル40になるまではこれで行くつもり。
「レベルが25になった」
「3時間でレベルが7も上がりましたわー!」
魔石と魔核は、わたしとメグちゃん、ジョーちゃん、撫子ちゃん、海里ちゃんで5等分して、1人40万円になったよ。
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