23 自己紹介
「美紀ちゃんと同じクラスで良かったですわ」
「わたしも撫子ちゃんと同じクラスで良かったよ。同じ中学からここに入った人が、10人くらいいるけど、みんな違うクラスで、Hクラスはわたしだけだったからね」
「みぃー」『さいちんトレンドファッション軍団が8人も同じクラスにゃの』
「みてくるのー」
『最新トレンドファッション軍団は寮にいなかったけど、クラスには結構いるねー』
「みぃー」『食堂でにゃん人か見たの。たぶん先輩にゃの』
つつがなく入学式も終わって、クラスのホームルームだね。ジョーちゃんが金髪の女子生徒のところに見学にいったよ。同じ金髪だから興味があるのかな。
Hクラスの担任は60歳に近そうな白髪混じりのやせた男性、川崎先生だ。川崎先生が年間スケジュールとカリキュラムを配ってくれた。年間スケジュールは前期、後期制。ふむふむ。試験は中間試験2回、期末試験2回の計4回。ほうほう。
イベントは4月のダンジョンレクリエーション、7月のクラス対抗戦、9月の学校対抗戦代表選抜大会。10月学校対抗戦県大会。学校対抗戦って何さ?
カリキュラムは4月座学。5月の連休明け1〜2週目ダンジョン、3〜4週目座学、5〜6週目ダンジョンと交互に繰り返す方式だそうな。単位の都合で座学が増えたり、イベントや定期試験で日程が調整されるんだって。
「みぃー」『2週間丸ごとダンジョン実習にゃの。泊まりがけのスケジュールにゃの。テレビが見れにゃいの』
『ダンジョンの中、テレビ映らないからねー。わたしも日帰りダンジョンの方がいいよ』
「あにめーみれないのー?」
『テレビとビデオを買ってダンジョンで見るという方法もあるよ。レンタルビデオで昔の作品も見れるみたい』
「びでお、みるのー」
「みぃー」『レンタルビデオにゃの。ダビングするの』
「探索者高校のダンジョン実習では、講師や先生たちはついていきません。先生たちは相談にのるか、注意するだけです。何をするか自分たちで計画して、自分たちで決断して、自分たちの責任で実行してください。それが探索者です」
「ダンジョン実習で行くダンジョンの階層と予定期間、計画を用紙に書いて出してください」
「4月末までにクラスの中で自分たちで3人から4人のパーティを決めて、この用紙に書いて先生に提出してください。パーティメンバーを変えた時もです」
「自己紹介の時には、誰といっしょにダンジョンに潜るかを考えながら聞いてください。自分のアピールも忘れずにすること」
自己紹介が始まったよ。これがわたしの高校デビューの第一歩だ。いくよーやるよー。
「俺は金城次郎。武器は剣だ。学校対抗戦に出て勝つためにここに来た。お前らも協力しろ」「金城くんはレベル31。スキルは剣術です」
川崎先生が入試の時に測定したレベルとスキルを読み上げているね。
川崎先生がパチパチと拍手をすると、みんなも拍手をしている。わたしも拍手に参加だ。
金髪の金城くんはギラギラした目で教室を見まわして座った。近づいてはいけない気がするよ。遠くから見守ろう。
「赤間二郎だ。武器は槍だ。学校対抗戦で勝つのは俺だ。お前らは俺の指示通りに動け」「赤間くんはレベル30。スキルは槍術です」
「俺は青山優太だ。武器は両手剣だ。特技は上段斬り。学校対抗戦で軍学校のあいつらに思いしらせてやる。貴様たちは俺の命令に従え」「青山くんはレベル29。スキルは剣術です」
赤髪の赤間くんや青髪の青山くんも学校対抗戦に執念を燃やしているね。ここは探索者高校だよね。探索者になるのが目的の高校だよね。
「黒田菜々子です。趣味はアウトドアです。武器はスタッフです。特技はヒールです。中学の特進では後衛でした。よろしくお願いします」「黒田さんのレベルは25、スキルは水魔法です」
「「おお〜」」
歓声と拍手が巻き起こる。みんなの目つきが変わった、特に男子。黒髪、背中までのストレートで可愛い系だね。金城くんと赤間くん、青山くんのギラギラした視線が菜々子ちゃんに突き刺さっているよ。
「村上海里。趣味昼寝。武器ハンマー。特技どこでも眠れる」「村上さんのレベルは15、スキルは鍛冶魔法です」
寮の食堂で見た子だね。髪はショート。ちょっと眠たげな表情だ。
やっぱり生産魔法スキルもちは人気がないみたい。拍手の違いでよくわかるね。
「三条撫子ですわ。出身は愛媛県の西条市ですの。趣味は植物栽培。武器はメイス。特技は料理ですわ。みなさん、よろしくお願いしますわ」「三条さんはレベル15。スキルは加工魔法です」
撫子ちゃんは美人さんなのに、男子の反応が鈍いね。わたしが代わりに大きく拍手だ。
「田中美紀です。趣味はアニメ鑑賞です。武器は使っていません。特技は料理です。よろしくお願いします」「田中さんはレベル14。スキルは刻印魔法です」
やっぱりわたしの自己紹介の反応はニブニブだ。撫子ちゃんはパチパチパチとがんばって拍手をしてくれたよ。高校デビューはもうあきらめたよ。短い夢だったね。
クラス委員は誰も立候補しなかったから、川崎先生が指名した人に決まったよ。
ホームルームが終わると男子が菜々子ちゃんのところに殺到していた。パーティの勧誘合戦だ。すごいね。
わたしはそのまま撫子ちゃんやメグちゃん、ジョーちゃんと寮に帰ったよ。
◇
「金髪くんたちが学校対抗戦にこだわってて、俺の命令を聞けって言ってたから、びっくりしたよ。わたし学校対抗戦のことをよく知らないんだけど、撫子ちゃんは知ってる?」
「テレビで魔道甲冑リーグの中継をやってますわよね」
「魔道甲冑で魔法を撃ちあったりして、相手の陣地の旗を奪うか壊すやつだよね」
魔道甲冑リーグのテレビ中継でアニメがなくなって、ちびっこたちに何十回泣かれたり、八つ当たりされたか。魔道甲冑リーグめ!
「学校対抗戦はその高校版ですわ。魔道甲冑を使わない競技なの。学校代表の21人のチームが、1つのボールを奪い合って相手チームのゴールに入れたり、相手チームのゴールラインの10本の旗を魔法で倒したりして、得点を競うのですわ」
「魔法も使うんだったら危なそうだね。クラスの子が選手が亡くなることもあるって話してたよ」
「昔の話ですわ。今は人への攻撃魔法が、禁止されているから安全ですの。直接攻撃もボールを持った相手へのタックルだけですわ」
「全国の軍学校50校、探索者高校300校の頂点を決めるんだとか」
「そうですわ。優秀な選手には陸軍大学校の入学権が与えられるらしいですわ」
「なかなかの特典だね。わたしは生産魔法だから出れないけど」
「わたくしもですわ」
◇
「撫子ちゃん、部活見学に行ってみない? わたし中学の時に部活してなかったんだよ。高校生になったから何かやろうと思って」
「ここの部活は学校対抗戦部だけですわ。見に行くだけ行ってみるのですわ」
わたしは学校対抗戦部という名前に、ある金髪赤髪青髪が思い浮かんだけど、高校といったら部活だよねということで、部室棟に行ってみた。
「みぃー」『絶対いるの。ラノベを10冊、賭けるの』
「いりゅのー、かけるのー」
『わたしもいる気がするから賭けにならないねー』
部活棟に入るまでもなかったよ。部活棟の周りにヤンキー座りで取り巻きたちとたむろしている金髪赤髪青髪がいた。他のクラスもいるね。かわいそうな通行人をにらみあげて威嚇しているよ。
「金髪、赤髪、青髪、紫髪、緑髪で分かれていますわ」
「髪の色で派閥ができているのかも」
「美紀ちゃん、見学はあきらめた方がいいですわ」
「あれを見た瞬間、あきらめたよ。帰ろうか?」
「帰りますわ」
わたしと撫子ちゃんは、そのまま踵を返したよ。ジョーちゃん、もう帰るよー。そっちに行ったらダメだよー。
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