19 マネキン
養護院用の魔石をとりに島屋ダンジョンにきたよ。集めまくるよー。
23階層シルバーウルフゾンビ 633個
24階層マンイーターゾンビ 651個
25階層オチューゾンビ 697個
23〜25階層を順調にクリアしたわたしたちの前には思いもよらない光景が広がっていたよ。26階層は通路の壁がなくなって下は水が溜まっていて、足場も見あたらない。右奥の壁のあたりにモノリスが浮かんでいるのが見えるね。メグちゃん分析によると、そこまでの距離は500mくらいだって。水の中には、わたしの足の太さくらいの紫色のトコロテンがうごめいている。
『調査隊がここで調査をやめた理由がよくわかったよ。水の中のやつがローパーゾンビだね』
「みぃー」『水の中にいっぱいいるの』
『せっかくだから攻略してみたいけど、これじゃあ無理かなー』
「みきちゃーこうりゃくちたいのー?」
『アドバイスさん情報で、39階層にシェードがいるって話しだからね。シェードの核を自分でとれれば、買わなくて済むし』
「おてつだいしゅりゅのー」
わたしたちの前に超合金ヴァルキュリアが出てきて、高さ2mほどに大きくなった。そのままロボット形態からガションガションと飛行機形態に変わったよ。そっかー、小さくできるだけじゃなく大きくもできるんだね。そう言えば情報板も拡大できたよ。
「みぃー」『かっこいいの』
『たしかにかっこいいけど、ちょっとびっくしたよー』
「みきちゃー、のるのー、とぶのー」
『えっ? これって乗れるの?』
「のれるー」
『じゃあ乗せてもらうね。ジョーちゃん、よろしくね』
わたしは恐る恐るヴァルキュリア飛行形態にまたがってみた。
「とぶのー」
「うひゃーー」
ヴァルキュリアがすごいスピードで前に飛んで、落ちそうなったから翼のところをつかんで耐える。前からの風もすごい。あっという間に入口ホールの開口部から飛び出したヴァルキュリア飛行形態は、モノリスまで一直線に飛んだよ。
3秒ほどでモノリスの前まで飛んできたみたい。急減速したヴァルキュリア飛行形態の機首部分がモノリスの赤い四角マークにチョンと触れて27階層に転移したそうな。
わたしは落ちないように必死で「うひゃーー」って叫んでいるうちに27階層にきていたよ。
27階層のモノリスに転移登録したら、ジョーちゃんにヴァルキュリア飛行形態に乗せてもらって28階層に移動したよ。
27階層も26階層と同じ水ステージだったからね。水面からはサハギンが100体ほど顔を出して、死んだ魚のような目でジッとこちらを見ていたけど。
28階層はケルピーゾンビ。29階層は大きなカニのゾンビ。両方とも水ステージ。そのまま30階層へ飛んでいったよ。
◇
『ジョーちゃん、またまたありがとう。おかげで30階層までこれたよ。わたしだけだったらあきらめていたよ』
「おてつだいできたのー」
『本当にありがとね。ヴァルキュリアに乗って空を飛べるのもびっくりしたよ』
「そとであそんでたのー」
『そっかー。外でヴァルキュリアに乗って遊んでたんだー』
30階層の入口ホールには例によって大きな扉がついている。
『ゲートキーパーだね。調査隊もきてないから、何がいるかわからないね』
「みぃー」『ちょっとのぞいてみるの』
わたしたちはゲートキーパー部屋の白い扉を少し開けて、そっと中をのぞいてみたよ。
30mほど離れたところに白いマネキンのような物がこちらを向いて立っていた。額には大きな紅い宝石がついている。両眼も紅い宝石でできているみたいだ。鼻や口、耳、髪もない。
額と両眼が紅く光って、マネキンの影が広がった。影から次々に魔物があらわれてくる。シルバーウルフゾンビ、オークゾンビ、大きなカニのゾンビ。ケルピーゾンビは出てきたけど転んだ。魚の尻尾で立つのは無理があったみたい。1〜29階層にいた魔物たちだね。
魔物たちが扉手前まで迫ってきたよ。わたしはあわてて扉を閉めて、いつでも逃げられるようにモノリスの前に避難した。
『あのマネキン、なんだろうね?』
「まねきんー」
「みぃー」『わからないの。ないちょだそうにゃの』
『アドバイスさん、内緒なんだ……』
扉がガタガタいってるね。
『あのいかにも怪しそうな紅い宝石が、マネキンの弱点のような気がするんだよね。光ったら魔物がたくさん出てきたし』
「みぃー」『わたちもそう思うの』
「わたちもなのー」
『でもマネキンの紅い宝石を攻撃する前に、周りの魔物をなんとかしないとね。あれが全部一度にくると囲まれちゃってダメだからね』
わたしは1階層でゾンビに囲まれて死にかけたことを反省して、考えていた対抗手段がある。それを応用すればマネキンにも通用するかもしれない。メグちゃんとジョーちゃんもいてくれるから、試してみようかな。2人に作戦を説明してみたよ。
「みぃー」『やってみるの。ダメなら逃げればいいの』
「やってみるのー」
メグちゃんとジョーちゃんの賛同を得たわたしは、ガタガタしている扉の前まで行って、情報板を展開。扉を開けたら時間との勝負だよ。
『メグちゃん、ジョーちゃん、いくよー』
「みぃー」『突貫にゃのー』
「ちょうへきなのー。まもるのー」
扉を思いきり押し開ける。
〈魔物、前方半径8m全て収納〉
メグちゃんがわたしの前に10m上からの俯瞰映像と後方映像を表示してくれている。その映像を使って、アイテムボックスの収納範囲半径8mにいる魔物を全て収納。そのまま前に走って収納を繰り返したよ。周りからは魔法や触手、石、矢、剣、槍なんかが飛んできてるけど、ジョーちゃんが障壁魔法陣を使って防いでくれているよ。
〈魔物、半径8m全て収納〉〈魔物、半径8m全て収納〉
マネキンが見えた。額と両眼を紅く光らせて、わたしの周りに魔物を出してくるけど、わたしの収納するスピードの方が早い。マネキンに8mの距離まで辿りついた。
〈マネキン、収納〉
マネキンの抵抗で収納できなかったのが、アイテムボックスのミスリルブレスレットから伝わってきたよ、残念。
『みんな、マネキンの収納失敗。プランBだよ』
「みぃー」『了解にゃのー』
「ぷらんびーなのー」
〈魔物、半径8m全て収納〉〈魔物、半径8m全て収納〉
わたしはマネキンが生み出し続ける魔物を収納し続ける。収納しながら、ライトアロー魔法陣の情報板を、マネキンの額の紅い宝石の前に進ませたよ。マネキンは情報板が見えてないね。
情報板とマネキンとの距離1m、予定位置についたね。マネキンは魔物を生み出し続けている。
『ライトアロー全力斉射! ファイエル!』
こんな時だけど、一度やってみたかったんだよね。銀星英雄伝説の真似。ドイツ語がいい響きだよ。
マネキンの顔のすぐ前で発射された魔力たっぷりライトアローは、マネキンの紅い半透明の障壁みたい物で防がれてしまったよ。
マネキンはライトアローを気にせず、そのまま魔物を生み出し続けている。わたしはそれを収納し続けている。
〈マネキンの額にライトアローを全力連射〉
魔力たっぷりライトアローの連射を続ける。ライトアローの白い光が当たっている部分の障壁が紅い光を飛び散らせながら少しずつ削れていく。
紅い半透明の障壁が半分ほど削れたように見える。マネキンに余裕が無くなったのか、額と両眼の宝石は紅く輝いているけど、魔物が生み出されなくなった。わたしは魔物の収納作業が減って、余裕ができたよ。
ライトアローの連射で、ライトアロー魔法陣の情報板とマネキンの障壁が白く太い光の線で結ばれたように見えている。宇宙戦艦トマトの魔道砲発射みたいだ。カッコいい。
マネキンはなぜか動かなくなってしまった。マネキンの赤い障壁が4分の1ほどになったところで、マネキンが額の前に両手をかざした。半透明の紅い障壁の光が強くなった。
紅い障壁を削れなくなったけど、ライトアローの連射を続ける。他にいい手を思いつかないからね。しばらく経った頃、突然マネキンの障壁が崩れた。
マネキンの額にライトアローが当たったけど、額の紅い宝石の表面で何かと拮抗している。数秒後にライトアローがマネキンの頭を貫通。ライトアローは後ろに抜けて、地面を削っていった。
マネキンは光になって消えた。転んでいたケルピーなんかの周りの魔物もいっしょに消えたね。
わたしはマネキンが消えた跡に残っていた魔石と魔核、紅い宝石みたいな物を急いで収納したよ。魔石や魔核を残しておいて復活でもされたら嫌だからね。アニメでそういうのを見たことがあるし。
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