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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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111/114

111 龍玉

「エンシェントドラゴンの魔核7個を1個に合成するのですわ」

『合成したものに星形魔法陣を刻んだら、龍玉になるんだよ。メグちゃんの話によると、龍玉ごとに刻む星形魔法陣の数を変えるのが、とっても大切なんだって』

「ずっとメグちゃんにもジョーちゃんにも会えてないのですわ」

『撫子ちゃんは休日出勤が多いから、少しは休んだ方がいいよ』

「みんなで交代で休んでいたら、同期の人たちが辞めて休めなくなったのですわ。異世界工場グループや他の部署から人がきてくれて、今は休めるようになっているのですわ」

『20人も辞めちゃったからねー。仕事がいそがしかったから辞めたのかな?』

「6月のボーナスのあとと、夏休みのあとに辞めたのですわ」

『MMJってボーナスいいよね』

「新入社員に夏のボーナス100万円は多いと思いますわ。冬のボーナスなんか500万円ですわ。来年からはもっと増えるのですわ」

『やっぱりボーナスが少ないから辞めたとかじゃないよね』

「そのはずですわ」


 そんなことを撫子ちゃんと話しながら、龍玉7個を作ったよ。


「結構魔力を使ったのですわ」

『魔力ポーション使う?』

「これくらいなら大丈夫ですわ」

『普通は儀式魔法を使って、魔核を合成するんだって』

「魔力の少ない人には難しそうだから、納得ですわ」


 夏鈴ちゃんが14個作ってくれた時は、魔力ポーションをがぶ飲みしながら、やってくれたんだよね。夏鈴ちゃんには悪いことをしちゃったよ。

 夏鈴ちゃんは松高大学を卒業したら、加工魔法のお店を始めるって言ってたね。

 みんな就職するから就職しないとダメだって思いこんでいたけど、わたしも夏鈴ちゃんみたいにお店をやるのもいいかも。


『龍玉の設置は失敗すると、エンシェントドラゴンが具象化するみたいだから気をつけてね』

「設置の時はわたしも立ち会うのですわ。でもエンシェントドラゴンを見てみたい気もするのですわ」

『エンシェントドラゴンだったら、ドラゴンネストダンジョンの山脈を越えたところにいるから、休みの日にでも見に行ってみる?』

「お願いするのですわ。メグちゃんやジョーちゃんにも会いたいのですわ」



 龍玉紛失事件のあと、鈴木財閥くんは無断欠勤が続いて連絡がとれなかったから、マンションを訪ねるともぬけのカラだったそうな。そのあと弁護士をとおして退職の連絡がきたんだけどね。

 弁護士をとおして鈴木財閥くんに龍玉のことを聞こうとしたけど、アメリカに引っ越しちゃったんだとさ。

 わかりやすい行動だよね。ちょっとくらい隠せばいいのに。


 ◇


 養護院の幼児部屋のちびっこたちに、大人の威厳を存分に見せつけたわたしは、マリア先生の監視の目を逃れて厨房に潜んでいたよ。子供たちの好きな言葉が[わいろにょろりん]に進化していたのは、わたしのせいじゃないんだけどね、たぶん。


「美紀ちゃん、そんなところでなにしてんのー?」

「清美ちゃん、こんにちはー」


 清美ちゃんの声にわたしが立ち上がって振り向くと、清美ちゃんがわたしの顔を見てぷっと吹き出したよ。


「なにそのヒゲ?」


 今にも笑い出しそうだ。もうひと押しだね。わたしはツケヒゲの両端をつまんで、ビヨンと伸ばしてみた。への字口にするのも忘れずにね。ジョーちゃんがたまにする白目の変顔も追加だ。たたみこむよ。

 清美ちゃんがぶっと吹き出し笑いを始めた。勝ったね。わたしは大人の威厳アイテム、ツケヒゲをはずしてアイテムボックスにしまったよ。


「ヒゲはちびっこたちに、ちょっと見せてたんだよ。清美ちゃんの方はどう? 落ちついた?」

「まだ、モノリス、光柱、事件で、落ち、ついて、、ない、なー」


 清美ちゃんがケホケホと咳きこみながら答えてくれた。ちょっと時間をおいた方が良さそうだね。



「このクリームニョロリン、見た目も名前も変やけど、おいしいなー」

「王室御用達のお菓子で、エルフの国ですごく人気があるんだって。いっしょに式典に参加したエリエル殿下がくれたんだよ。あのちびっこ王女の」

「エルフの国のちびっこ王女って、あの聖女さまとか守護者さまとか言われてるすごい子やろー?」

「小さいのに一生懸命がんばっている優しい子だったよ」

「いい子なんやなー。異世界の方はどんな感じやったー?」

「異世界……。宿敵たちの陰謀がうずまくおそろしい世界だったよ。どこにでも宿敵がいてね。道には宿敵がゴロゴロボヨンボヨンしていたし、湖なんて見わたすかぎりプカプカうごめいていたんだよ」

「透明スライムかー。美紀ちゃん、苦手やもんなー」

「清美ちゃん、宿敵には油断大敵だよ。宿敵との戦いでは油断したやつから死ぬんだよ」

「美紀ちゃん、昔から言っとるなー。透明スライムを抜いたらどんな感じやったー?」

「そうだねー。半日くらいしか行ってないし、向こうはみんなお祭り騒ぎだったから、よくわからなかったけど、街並みや洗濯物なんかを見ると、こっちと同じようにみんな一生懸命がんばって生活している感じかなー」

「そっかー。こっちと同じかー。異世界、本当にどうしようかなー」

「もしかして、またレーダス黒王子関係?」

「レーダス黒王子の従者が昨日またきてなー。一度でいいから獣王国にきてくれってなー。どっちみちモノリス光柱事件でバタバタしとるから、行けんけどなー。それで美紀ちゃんに聞きたいことがあったんやわー」

「なに?」

「臨時政府から島屋ダンジョンの資料がほしいって話がきたんやけどなー。ウチらまだ4階層までしか行けてなくてなー。美紀ちゃんに聞いた30階層までの話をレポートにまとめて臨時政府に送りたいんやわー」

「そんなことならいくらでも使ってくれていいよ。わたしのことは秘密にしておいてほしいけど」

「ありがとなー。美紀ちゃんの名前は出さんようにするわー」

「陸軍で4階層まで行ったんだね。大変じゃなかった?」

「大変やったわー。100人で長槍と大盾を持ってファランクスを組んでなー。通路いっぱいに拡がって大盾で前後をガチガチに固めたわー」

「100人かー。やっぱり戦いは数だよね」

「魔物の数の方が多いけどなー。島屋ダンジョン、やっぱりおかしいわー」

「わたしもそう思うよ」


 清美ちゃんはモノリス光柱事件で、まだいそがしいそうで午後から休日出勤だそうな。偉くなると大変だね。

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