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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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105 クリームニョロリン

「たなかしゃーん。うごけなかったおかあしゃまがだきしめてくれたのじゃーー。ほっぺをしゅりしゅりしてくれたのじゃーー」


 桜色の目をちょっと赤くしたエリエル殿下が、トテトテとかけよってきた。転びそうになったところを後ろから追いかけていたエルフ侍女レイナさんがキャッチ。ナイスセーブだね。


『エリエル殿下ー。あわてなくていいですよー』

「あわててないのじゃー。うれしいだけなのじゃー」


 そのままリリースされたエリエル殿下はトテトテと走り出して、また転びそうになってレイナさんにキャッチされた。そして、またリリースだ。

 エリエル殿下はキャッチされた時にキャッキャと笑っているし、レイナさんもなんだか楽しそう。遊んでるのかな?

 キャッチアンドリリースを繰り返しながらガゼボにたどり着いたエリエル殿下は、ちょっと息をきらしていたよ。


「おかあしゃまがうごけるようになったのじゃ。おいしゃしゃまにみてもらうのじゃ」

『良かったですねー。お医者さまにしっかり診てもらうといいですよ』

「たなかしゃんのおかげなのじゃ。ありがとうなのじゃ」

『わたしじゃなく、エリエル殿下が、がんばって病気治癒舞を練習したからですよ』

「そうかやー?」

『そうですよ。まちがいないです』


 わたしは力強く断言してみたよ。実際にわたしはエリエル殿下に病気治癒舞を教えただけからね。


「でもなのじゃ。たなかしゃんがおしえてくれたからなのじゃ。なにかおれいをしたいのじゃ」

『お礼ですか?』


 わたしはみんなのお土産を買ってないのを思い出したよ。


『でしたらクリームニョロリンというお菓子をお願いしていいですか? 家族にお土産で頼まれているんです』

「クリームニョロリンかやー。わたしのいちばんしゅきなおかしなのじゃ。クロクリームニョロリンとシロクリームニョロリン、アカクリームニョロリン、ミドリクリームニョロリン、どれがいいかえ? わたしのおすすめはクロクリームニョロリンなのじゃ」

『じゃあクロクリームニョロリンでお願いします』

「よかったのじゃ。クロクリームニョロリンならわたしのへそくりおやつがたくさんあるのじゃ」


 へそくりおやつ? ジョーちゃんがよく言う言葉だね。異世界にもこの言葉があったんだ。

 エリエル殿下は小さな手から、ミスリルの指輪をはずしてエルフ侍女レイナさんを見上げたよ。レイナさんはエリエル殿下に小さくうなづきを返している。

 そしてガゼボの周りにたくさんのぬいぐるみ、箱、服他が出てきたよ。荷物の山だ。


「このゆびわは、じかんていしのマジックバッグみたいにつかえるふしぎなゆびわなのじゃ。これにクロクリームニョロリンがたくさんはいっているのじゃ。これをたなかしゃんのおみやげにしゅるといいのじゃ」


 エリエル殿下がわたしの手にポンとミスリル指輪を乗せてくれたよ。なんだか由緒がありそうな細かい装飾が入った指輪だね。


『この指輪はエリエル殿下が普段使いしているものですよね。困るんじゃないんですか?』


 わたしはガゼボを囲むぬいぐるみ他の荷物の山を見て言ってみたよ。


「わたしにはマジックバッグもあるからだいじょうぶなのじゃ」

「田中さま、姫さまのお気持ちです。お受けとりください」

『そうですか……。ではありがたくいただきます』

「よかったのじゃー」

『エリエル殿下、ありがとうございました。それでですね。エリエル殿下にこの指輪を献上いたします』

「金色の指輪なのじゃー」


 わたしはエルフ侍女エレナさんにオリハルコンの指輪を渡してみたよ。このオリハルコンの指輪は、最近変な話が増えてきた清美ちゃんに渡そうと作っておいたものだよ。機能はこれ。


 ○オリハルコンの指輪

   アイテムボックス(時間停止、個人認証、鑑定阻害)、サイズ調整、精神攻撃無効、

    物理防御50%増、魔法防御50%増、魔力回復50%増、障壁魔法、鑑定阻害


 弟公爵は頭が悪いらしいから、エリエル殿下が少しでも身を守れた方がいいよね。

 最終的にエリエル殿下の指におさまったオリハルコン指輪に、ぬいぐるみ他の荷物がおさまったのを見届けて、わたしはエリエル殿下のところを辞去したよ。

 城館からの帰り道は、エルフ侍女2号な救世主セイラさんが小さな飛行機械で送ってくれたから助かったよ。街にはカボチャがゴロゴロ転がっていたからね。


 ◇


 クローエアリエル聖樹国から日本に戻ってくると、モノリスが工事現場みたいに赤い三角のカラーコーンと黄色と黒色のシマシマの棒で囲まれていたよ。なんだろうね。

 そして警察官が2人もいたよ。税関をスルーした憶えがないこともないわたしが素知らぬ顔で現場を離れようとシマシマ棒を飛び越えた時だった。


「失礼します。クローエアリエル聖樹国から帰国された方ですか?」

「はい、そうです」


 わたしは逃走経路を考えながら、警察の人の質問に答えたよ。認識変換魔法の方がいいかな。


「あちらで出入国の手続きをお願いします」


 そう言われて周りを見ると、大宮ダンジョンの囲いの中にあった出入国管理のプレハブがなくなっていて、代わりにテーブルとパイプ椅子が置かれていたよ。テーブルに座っているのはエルフの人だ。テーブルの横には10人ほどの行列ができている。

 ダンジョンの周りのビルもなくなっていて、代わりに見慣れた山が見えるよ。ここって島屋ダンジョンじゃないか。

 島屋ダンジョンの改札機のところには、これまた警察官が2人立っているね。その向こうにはテレビカメラと人だかりの山だ。島屋ダンジョンにこんな人がいるの初めて見たよ。おまけに空にはヘリコプターがバタバタと飛んでいる。あれは報道ヘリかな。


「クローエアリエル聖樹国と日本をつなぐモノリスが、大宮ダンジョンから松高市の島屋ダンジョンに変わってしまったんです」

「はあ……わかりました」


 わたしは逮捕されない安心感と異世界から帰国した安心感と事態のよくわからなさに、少しぼーっとしながら、出入国手続きを済ませたよ。

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