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ちび白猫と小さな赤ちゃんと現代ダンジョンへ  作者: 南瓜と北狐


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102/114

102 カボチャ

 人類の最高の発明は部屋だね。部屋の中に入るだけで背中のゾワゾワが減ったよ。このまま部屋から出たくない気がしてきたくらいだ。

 わたしは意を決して頼もしい救世主セイラさんにお願いしてみることにした。


『セイラさん、お願いがあります』

「お伺いいたします」

『式典会場のカボチャを蹴散らしてきてもらいたいのですが』

「カボチャを蹴散らすのでございますか?」

『そうです。カボチャを蹴散らしてほしいんです』

「……カボチャでございますか?」

『そうです。カボチャです』


 救世主セイラさんは戸惑っている感じだ。念話だけど、言葉がうまく伝わってないみたいだね。こんなところに言語の壁が。異国の人とのコミュニケーションの難しさを感じるよ。


『さっきこの建物の前で、ボヨンボヨン跳ねてきたカボチャ5個をセイラさんが蹴散らしてくださいましたよね。あれを式典会場でもお願いしたいなって』

「そういう意味でしたか。承知しました。式典には子供も出席しますし、テレビ局の中継も入りますから、片づけておいた方が良いですね」

『カボチャは多いんですか?』

「今日みたいな肌寒い日は、湖から出てくるものは少ないはずなのですが。見習いの子にも手伝わせて、式典会場をきれいにしておきますから、安心してください」

『ありがとうございます。セイラさん、これを使ってください。対カボチャ用の武器です』


 わたしは対カボチャ兵器として作りあげていたオリハルコンメイスを救世主セイラさんにたくしたよ。オリハルコンメイスには、物理攻撃力50%増、物理防御力50%増、魔法攻撃力50%増、魔法防御力50%増、体力回復50%増、魔力回復50%増、状態異常耐性50%増、防御貫通をつけている。

 カボチャは狡猾だからね。救世主セイラさんといえども油断をしたら危険だよ。


「これは……」

『そのメイスであればセイラさんの腕にも不足はないと思います。存分にカボチャをたたきつぶしてください』

「はあ……ではお借りします」

『いえ、差しあげますから、わたしのぶんまでカボチャをグシャっとお願いします』


 遠慮深い救世主セイラさんはさっそく取りかかってくれるそうな。これで式典も安心だね。


 部屋で少し落ちついて頭がまわるようになったからか、さっきのエリエル殿下との会話の違和感を思い出したよ。

 飛行機械の中で聞いたモリアーティさんの話では、女王陛下の体調がすぐれないと言っていたから、おめでたかなと思ったけど、エリエル殿下の話では現実空間で散歩もできないみたいだったね。女王陛下であれば万能薬も手に入ると思うけど、体調が悪いままというのはどういうことなんだろうね。モリアーティさんに聞いてみた方がいいかな?


 ◇


 お手洗いに行って鏡を見ると、わたしの金髪頭に桜色の花が2本、ぴょこんと生えていた。


『これも認識変換魔法の副作用かな? きれいな花だけど、大人のわたしには似合ってない気がするよ』


 華麗な大人のわたしは花の茎をつまんで、はずしてみた。


『本物の花? 花飾り? どうやってくっついてた、これ?』


 くっついていたところをしげしげと見ても、普通の切り花みたいに見えるね。花飾りを鼻につけてみたら、くっついたよ。


『額に2本つけると……なんかかっこいいかも』

『ほっぺに1本ずつつけると……ダメだ、子供っぽく見えちゃうよ』


 わたしは鏡から目をそらして、謎の花飾り2本をアイテムボックスにそっとしまった。アイテムボックスのリストには[幼ドラシル]と表示されたよ。幼……やっぱりつけたら幼く見えてしまう花飾りだったみたいだ。


 ◇


 部屋の扉がノックされたから応答を返すと、モリアーティさんが入ってきた。


「田中さん、回復したようじゃな。安心したのじゃ」

『心配をおかけしました。どうもカボチャが近くにいるとダメみたいで』

「カボチャ……アレルギーかのう」

『セイラさんが式典会場のカボチャを片づけてくれているので安心です』

「それは良かったのじゃ」

『そろそろ会場に出ていた方がいいですか?』

「主賓の田中さんには姫さまといっしょに入場してもらうのじゃ。だからまだ時間はあるのじゃ。わしは田中さんの体調が回復したか確認にきたのじゃ」

『それはお手数をおかけしました。わたしの体調とは関係ないんですが、モリアーティさんに聞きたいことがあったんです』

「なにかのう?」

『エリエル殿下と話していて感じたんですが、女王陛下は歩けないくらい体調がお悪いんでしょうか?』

「その通りじゃ。女王陛下は2年前にお倒れになったあと、身体が動かせなくなってしまわれてのう」


 わたしは院長先生が吐血した時のことを思い出したよ。


『万能薬は服用されなかったんですか?』

「万能薬は月に1本服用しておるのじゃ。ただ万能薬の効果が薄い粘菌性の病でのう。症状の進行をおさえることしかできておらぬのじゃ」

『万能薬でもダメなんですね……』

「医師が治療法を探しておるが見つからなくてのう。1500年前に聖女の奇跡の舞で完治したという記録はあったのじゃがのう。今のクローエ世界には聖女がいなくてのう。地球で病気治癒舞というものがあると聞いて調べたのじゃが、出血大サービス期間というものをすぎておってダメだったのじゃ」


 わたしは、「シクシクなのです。ピェーンなのです」とウソ泣きをしていたイーちゃんを思い出したよ。ドラマ[聖女じょードラゴン]の病気治癒舞で集めた魔力を使っても、副触手に返り討ちにされてお仕事を増やされていたね。


「征服派は女王陛下の病状を報道機関に流しておってのう。あやつらが力をつける一因にもなっておるのじゃ。もし女王陛下がみまかれたら、弟公爵が王位につくからのう」

『エリエル殿下が王位を継がれるんじゃないんですか?』

「エリエル殿下はまだ成人しておらぬでのう。今の王位継承権の1位は弟公爵なのじゃ。弟公爵が王になると地球征服を始めるのは確実でのう。そうすると地球から魔王がきて聖樹国は壊滅じゃ」

「先々代の国王陛下や王妃殿下、先代の国王陛下、兄王子たち、女王陛下の夫君。みな、この5年で次々に亡くなってしまってのう。弟公爵を止められる者がいないのじゃ。弟公爵が怪しいのはわかっておるのじゃがのう。トカゲの尻尾切りで、弟公爵の尻尾がつかめぬのじゃ」


 メグちゃんの読むラノベの話みたいなことになってるね。


「すまぬのう年寄りの愚痴みたいなことを言ってしもうて。ただのう弟公爵は頭が悪くてのう。なにかの拍子に、田中さんの方に刺客を差しむけんとも限らないのじゃ。身辺に異常を感じたら、すぐにわしに連絡してくだされ。護衛をつけるからのう」


 弟公爵、頭が悪いんだ……。

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